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第九十八話 そこが一番見たいのに!

「って、お~い!どうした!この続きはどうしたんだ!ダークネスとライトネス、闇と光の兄弟対決の行方はどうしたんだ!」

 兄弟の戦いの続きの映像がない。そのことに怒り焦れる一世のけたたましい声が勇の部屋に響く。


「そうだそうだ!続きの巻はどうしたんだ!どっちが勝ったのか気になるぞ」

 続きが気になるのでみっちゃんもやんやんとうるさく騒ぐ。面白がって一世に加担する悪ノリにも見えるが、いくらかは本気で見たがっていると勇は判断した。


「ていうかみっちゃん、いつからいたんだ?」

「あれあれ?このふか~い仲の幼馴染の接近に気づかないなんて、勇くんってば弛んでるぞ。それでも勇者か」

「いや勇者じゃないっての」

 みっちゃんはいつの間にか異世界ビデオ試聴会に参加していた。今日は窓からでなく、下から回ってドアからこっそり侵入した。このように乙女の侵入経路は日毎気分で変わるのだ。


 一世はゴライアスが持ってきた復数のDVDの中から続きの巻を探す。だが見つからない。


「ははっ、続きは無いんだよ。今日はここまでだね」

「なんと!なぜ気になるところでカットなんだ。ええ?何でだゴライアス氏よ」

「まぁ軽く宣伝のVTRだからね。暑苦しい兄弟バトルを見せる目的はないの。それにただでさえ異世界の映像だし、そこで魔法をバンバン打ち合っての派手派手バトルなんか見せた日には、勇の持病でもある異世界イヤイヤが出るだろ?」

「おい勇よぉ、お前いい加減に食わず嫌いは……いや、しっかり作品にも触れて食った後なのだろうが、とにかく食ってからも嫌いを直してくれよ。異世界大好き人間の俺が楽しめないだろ?」

 多くの人がそうなように、一世もまた最優先事項に己の快楽を上げる。なので異世界ファンタジーを楽しく肯定しない友人を責めるのだった。


「うるさいなお前は。家でアニメ見てろよ」

「お前今の見たろ。所詮アニメはアニメ。それに昨今ではやっつけ仕事でヘタったアニメーションを作る連中も全然少なくない。つまりしょぼい。そこへ来てさっきの見ただろ?マジもんは迫力がダンチだよ。棒人間か肉付きたっぷりのマジ人間かってくらい見せ方に違いがあるのはお前でも分かるだろ?」

「お前……好きなアニメでも批判する時はマジで容赦ないよな。まぁマジな話なんだろうけど」

 一世は、昨今の忙しいアニメ業界では避けて通れない現象を嘆き、先程の兄弟対決の迫力に感動するのだった。


「まぁでも、僕はカメラを回して全部丸っとこの目で見て脳に記憶している。事の全貌を話そう」

 それからゴライアスは、その後兄弟がどうなったのか滔々と語るのだった。


 力の限り激しくぶつかり合う兄弟。しかし、光と闇とは真逆の要素であり、どちらかがどちらかを打ち消すということは無理な結果に行き着いた。二つは交わり合うことはしない。白と黒は近づけども反発しあうばかりだった。そんなのだから、どちらかが押し勝つことはない。

 己の尻尾が気になってその場で回り続ける犬を例に上げよう。あのような感じで、犬は尻尾を噛むため尻尾に近づこうとする。それを行えば体も動くので尻尾が逃げる。追えば追うだけ、追われる対象は逃げる。だから一生二つが一つになることはない。これと同じことが光と闇、二つの魔法にも当てはまる。

 黒と白の力は、その場でぐるぐる周るばかりで打つかり合うことをしないまま終わっていった。二人が魔法を放ち続けても、放った攻撃は相手を避ける。繰り返す内に二人とも魔力が尽きて戦えなくなった。

 魔法を使っていては兄弟対決に勝敗が見えない。この兄弟が本当に雌雄を決するなら、それは魔力など皆無の肉弾戦による決闘しかなかった。それに気づいたところで時既に遅し。もう二人は立ち上がって拳を握る元気も無かったのだ。

 そうして二人が疲弊し切ったその時、両軍に戦闘休止の報せが届くのだった。

 ダークネスは魔王からの連絡でそれを知る。ライトネスはバンサクから入った通信でそれを知る。

 そして二人は想うのだった。


「トホホ、だったらもう少し早く言っておくれよ、と……そんな感じで兄弟対決はあっけなく幕切れさ」

 ゴライアスの説明が終わった。


「なんじゃそりゃ」というのが勇のコメントだった。

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