第九十五話 意外と繋がる世界
ペインター心の叫びが終わった後、映像は途切れた。現在テレビには、黒い画面に反射した勇、一世、ゴライアスの姿が見えるだけだった。
「おい勇、見たかよ、聞いたかよ。ペインターイソロクの悲痛な叫びを!そしてその中に見出した少しの希望を」
「うるさい。しっかり見たし聞いたよ」
ゴライアスはリモコンを片手に熱っぽく話すが、勇はウザかっている。
ペインターイソロクのドキュメント映像をDVDに焼いた物を持ち込んだゴライアスは、それを勇の自室のプレイヤーで再生したのだった。
勇は迷惑がったが、異世界大好きな一世はとても楽しんで見ていた。
「うぉ!いいじゃないか!挫折から見出した僅かな希望、それが大きな未来の光になっていく。ペインターは間違いなくサクセスストーリーの主役。牢獄で芽生える仲間との絆にも胸熱くなるものがある。そんで、捕まった仲間の口から聞くだけで姿は見えないけど、四天王の強さがしっかり分かったのも良きポイントだ。やはり魔王四天王って痺れるよな!」
「痺れないっての。お前はうるさいな。唾を飛ばして興奮するな」
一世は興奮するとボリュームを無視して勢い良く喋るので、口から出るそれの配慮が出来ない。
「ペインターが可愛そうだと思わないのか。なぁ勇、彼は冷たい牢獄に捕らえられ絶望を迎える直前で、勇者の存在に最後の希望を見出した。そして心からの救いを求めた。これを受け、まだ君は立ち上がらないと言うのか!」
「いやいや、コレって収録した物にペインターのモノローグがナレーションでちょいちょい入ってるから。てことは、この後こいつは助かってここを抜け、そんでどこかで声を撮ったんだろ」
「ふふっ、さすが勇。君はやはり聡明だな。そうだよ、これは後で編集している。ペインターイソロクも立ち会っている。現在彼はとても元気にしているよ」
「お前……やっぱりふざけてるのな。ていうか、前からペインターには、冒険者は向かないからポップコーン売り歩く仕事を続けるよう勧めたよな」
ゴライアスは、勇者に向けた異世界広報活動も担当している。だからこんなしょうもないドキュメントVTRも作るのだ。
「てことはさ、お前もこの牢獄にいてカメラを回してったことか?」
「御名答。ペインター密着取材週間だったからね」
「お前なぁ、取材対象がこんなことになってるんだから、お前こそ助けるべきだろ」
「分かってないなぁ勇は。僕やあのきまぐれ能天気女神などは天界人という普通の人間とは全く違う存在なんだ。確かに僕らには、天上から地上の面倒を管理する役割がある。てもね、親が子供の喧嘩にいちいち口を出すとか、神様がいちいち人間の諍いに手を出すってことがないように、僕らも直接的には何か働きかけることはタブーになっているんだよ。あくまで平和的解決に導く役は行えど、最終的には地上の人間達が自らの手で地上の面倒を解決しないといけないんだよ。だから、魔王がいるからって僕が出向いて倒したりしたらそれはルール違反なのさ」
「なんだ。そんな面倒な設定があったのか?」
「あったのさ。僕らも苦労するよ。現地の人間達でなんとかしてもらいところだが、見ての通り、彼らでは魔王軍に対抗するには難しい。そこでよその世界の地上の民である君が選ばれたってわけ。ささっ、僕らの苦労も分かったら、ぱぱっとあっちに行って事件を解決してくれよ」
「だから行かないって言ってるだろ。ペインターがどうなっても俺には関係ないんだ」
「そういえば、ダークネス向井先生の名前が出たな。彼は副業で俺達に芝居の稽古をつけたと言ってたが、まさか本業が四天王だったとはな。勇も先生の稽古を受けいてるのだから、勇者として向こうに行けば師弟対決になるではないか。おおっ!異世界の師弟対決なんてこれは燃えるものがあるぞ!」
「おい、お前は一人で盛り上がるな。ダークネス向井には何かあると想ったが、まさかこっちも魔王繋がりだったとは」
「まさかだよね~。彼を見つけて来たのは僕だけど、経験不問で出した求人だし、魔王軍にいようがいまいが採用には関係ないからね。そんで彼に手伝ってもらったんだ。複雑だよね。こっちでは勇者の生活を手伝い、向こうでは勇者の敵だ。まぁそれはセピアが呼んだ秘書も同じことか」
「ゴライアス、お前全部知ってたんだな。そんで黙ってたのか」
「まぁ、個人情報だからね。僕が雇った彼のデータをあちこちに言って周る訳にはいかないよ。今バレちゃったけど」
「おい勇、その秘書ってのは誰だ?俺は知らないぞ」
「もういいよ。ややこしいことになるから」
文化祭を成功させた功労者でもある2名の助っ人は、それぞれ魔王関係者だった。よく分からない糸であっちの世界とこっちの世界の人間関係が繋がっているものだと想う勇だった。
「あ、まだまだDVDの続きの巻があるから。そっちも見るよね?」
「見る見る~」
「いや見なくていいから、お前ら帰れ!」
3人は遠い世界に生きる人々の物語をしばらく楽しむことになるのだった。




