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第八十八話 食うこと、それが文化だ!青春だ!

「あ~はっは!勇くん可愛い!」

「もういいだろみっちゃん。それは遠い未来に楽しむ思い出にして、今はひとまず忘れておこう」

「だってほんのさっきのことだし。遠い未来に楽しめる思い出になることは間違いないけど、今でもまだまだホットな話題として楽しみたいよ」

 みっちゃんは、自分と勇が二人で写った写真データを見ている。勇はお姫様の格好をしていた。演劇終了後に舞台袖で撮影したものだった。それはみっちゃんのスマホに今後ずっと残ることになる。


「勇くんのスカート姿がまた見れるなんてね。希望を持って長生きするものだ」

「まだ高校生だろ?」

「はっは、そうだそうだ。ピチピチのJKさ」

 現在勇は制服に着替えてみっちゃんと文化祭を楽しんでいた。二人は休憩所にあるベンチに腰掛けている。


「なぁソレさぁ、女流作家Mの趣味というか性癖がかなり漏れ出た内容になってたよな」

「はっは~、クラスの総意だよ。皆勇くんのお姫様が見たいって……ぷぷっ、可愛いなぁ~。結華ちゃんもおばさんも見に来てて、大変満足といった反応だったよ」

「ああ~、やっぱり見に来てたのかぁ!家に帰ったら何を言われるか。ていうか、あの劇自体意味分かんないし。一世ワールド出すぎてて演じている間もずっと謎だったし」

「まぁまぁ、あんなので結構ウケが良かったみたいだよ。……勇くんが」

「お前なぁ、もうやめろよ!」

「はっはは~ごめんごめん」

 二人は談笑を続ける。


「ふむふむ、今日のも美味しい」

「美味しいなら良かったけど……何で今日も焼きそば?」

 二人は今日も文化祭の焼きそばを食べていた。


「昨日のも美味しかった。で、今日だって食べればやっぱり美味しい。それが焼きそばだよ」

「まぁ、好きだからいいけども」

「昨日のは私が焼いたから私の愛がたっぷりだ。今日のは、隣のクラスの誰かしらの愛がいくらか入ってるのだろう。それが大きな違い。で、どう?どっちが美味しい?」

「ここでみっちゃんの方って答えるのが出来る男としては正解なんだろうけど、何でもない男として言わせてもらうと、焼きそばだからどっちも同じく美味しい。大きな違いはないだろ?」

「うんうん。キラキラした思春期女子が、男子からそんなに色気のない回答をもらったらがっかりするだろうけど、勇くんはそれで良い。そんな正直なところが良いよね」

「そりゃどうも」

 誰が作っても焼きそばはある程度美味しいもの。それが勇の答えだった。


「その、良かったのか?せっかくの文化祭だけど、また焼きそば啜ってて」

「なんだよ~自分のエスコートに自信がないのかよ~?」

「いや、そうじゃないけども……約束、遅れちゃったし……ごめん」

「はいはい。今日のヒロインだもんね。カーテンコールが終わっても、勇くんのスケジュールはさっさと開放されないもんね。な~んか後輩女子達に囲まれて一緒に写真撮影なんかしちゃって……いいなぁモテモテ野郎は」

「よせや。好きであんな撮影会するわけないだろうが!」

「そうそう、望みもしないモテモテラッキーイベントが向こうからやって来るんだもんなぁ。天然でこんなギャルゲーやラノベ主人公みたいなことになっているあたり、やっぱり勇くんって勇者体質なんだね」

「やめろって、俺はそういうのは良いんだから」

「不特定多数でなく、心に決めた誰か一人だけに見てもらえば良いと?」

「……まぁ、誰でも彼でもにモテたいなんて思わないけど」

 しばらく二人黙って焼きそばを啜る。


「私は文化祭二日目の焼きそばを勇くんと一緒に食べれてよかったよ。マヨネーズ乗せも受け入れてもらったし」

「あのなぁ……普通、学校にまでマイマヨネーズ持ってくるか?」

 みっちゃんは自宅冷蔵庫から拝借したマヨネーズを持ち歩いていた。文化祭の焼きそばにはマヨネーズがかかっていないので、自分で持ってきて派手にかけたのだ。ついでに勇のにも。


「やっぱり焼きそばにはマヨネーズだよね!」

 みっちゃんは素敵な笑顔を見せて言う。


「ほら、飲めよ」

 勇はまだ未開封のペットボトルドリンクを差し出した。

「え、なんで?くれるの?」

「いい笑顔をして出た歯に青のりついてるぞ」

「勇くん、気遣いさんだなぁ~」と言ってみっちゃんは気遣いさんの背中をバンバン叩く。

「ぐへっ!おい、飲み込んでる時にやめろや!」

「はっっは~、勇くんの良い男なところが出たけど、そんな気遣い無用!青のりが歯につくのが怖くて焼きそば愛好家JKが出来るかっての!どんどんつけてやるもんね!あ、でもこれはもらっとくね。喉乾いたし」

 みっちゃんは豪快にドリンクをグビリとやる。


「ぷはぁ、じゃあ次はたこ焼きも行こうか!青のりでも紅生姜でもなんでも来いってね。あと綿あめも食べよう。今日はもうたくさん食べよう。だって食こそ文化なのだから」

「いいよ。俺もすごい腹が減ったんだ」

「ほらほら、行こう行こう!」

 みっちゃんはベンチに座る勇の手を引っ張って立たせる。


「みっちゃん、太るぞ」

「乙女にそんなこと言う奴にはグーパンだ!」

 勇の脇腹に愛しい打撃が入る。


 食ってばかりで色気に乏しい青春の一幕が穏やかに過ぎていくのだった。

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