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第八十七話 ちょこっとカオス劇場『サンデレオ~ガラスの靴を履くのは女子だって誰が決めた?~』終章

【第八幕】


 場所:魔法の国 バトルドーム選手控室


(サンデレオ、ベンチに横たわり、お姫様はその横に座っている)


お姫様「気がづいたか?」


サンデレオ「気がついたぞ!」


(サンデレオ、起き上がる)


サンデレオ「ここは魔法の国、そして今は格闘競技場の選手控室にある安っぽいベンチの上。僕はサンデレオ、そして麗しの君は誰?」


お姫様「おかしなヤツだな。とにかくしっかり元気ってことか?」


サンデレオ「ああ、どこも悪くない」


お姫様「その、お前が先程言ったことには、ちょっと分からない部分もあったが、まぁ私の理解力を持ってすれば概ね理解できた」


サンデレオ「そうかそうか、それは良かった」


お姫様「無理をさせたようだな」


サンデレオ「そりゃあもう、すごい無理さ。兄さん達が見れば絶対に止めただろう」


(サンデレオ、姫のそばに置かれた靴に気づく)


サンデレオ「やや!それは一体なんだい?不思議な靴だ……ガラスで出来ている。これではまるでカボチャの馬車で旅立つあのヒロインが履くようなものではないか」


お姫様「さぁ?それが何のことを言ってるのか知らないが、とりあえずコレは男向けだな」


サンデレオ「本当だ。ヒールではなく、これはランニングシューズだな。で、これは何だ?」


お姫様「お前を打ち負かして優勝した私への褒美の品だということだ」


サンデレオ「やや!君は優勝したのかい。それはおめでとう」


お姫様「ありがとう」


サンデレオ「やや!笑ったね!良い顔で笑うものだ。武闘派女子だってそりゃ悪くない。むしろ良いさ。しかし、厳めしい面は良くない。君はそうして笑っているが良かろう」


お姫様「私は、お前が言うような良き王族であり続けよう」


サンデレオ「ああ、そうして笑顔も振りまくといいさ」


お姫様「これはお前に授けよう。精神の迷い子だった私の道案内をしてくれたお前への褒美だ」


サンデレオ「ややっ!これは予想外のお土産!帰ったらオークションに出そう!」


お姫様「ははっ、好きにするが良い」


(鐘の音が聞こえる)


サンデレオ「おお、君の優勝を祝福するかのような鐘の音が聞こえるじゃないか。これは縁起が良い」


お姫様「何を言っている。これは昼の12時を告げる鐘だ。私が初戦敗退しようが優勝しようがきっと鳴る予定だったものだ」


サンデレオ「そうかそうか、まぁ何でも良い。まずは君の優勝に祝福を、そして僕らの素敵な出会いにも祝福を」


(サンデレオの体、徐々に浮く)


お姫様「おいサンデレオ、お前どうした?浮いているぞ?」


サンデレオ「ははっ、確かに僕は小中高とクラスで浮いているって同級生から言われたものだが、まさか本当に浮かびはしないさ。それよりもサンデレオって呼んでくれたね。名前を呼ばれるのって素敵で幸せなことだね」


お姫様「いやいや、本当に浮いてるって!下を見ろ!」


サンデレオ「まったくお姫様ってばお茶目だなぁ。まぁ一国をなんとかするっていう立場の人間ならユーモアのひとつくらいはないとってうわぁあああ!マジで浮いているじゃないか!」


(魔女、どこからともなく空中に登場)


魔女「時間だよ」


サンデレオ「はて?何の時間かな?」


魔女「お前知ってたじゃん。馬車に乗って旅立ったヒロインに与えられた門限は?」


サンデレオ「はっ!12時、確かに12時だ!」


魔女「それはお前の旅でも同じことが言える。どんな大魔女でも魔法を一生かけ続けるのは無理無理。スタミナが足りないっての」


サンデレオ「それじゃあお姫様とお別れかい?やっと攻略しかけてるのに?」


魔女「何言ってんのよ。相手は王族だよ。所詮三流の絨毯職人がどうこうできる相手じゃないって……まぁでも一流になれば、0だったのが万が一くらいのチャンスに膨らむかもね。まぁこれから精進しなよ」


サンデレオ「察してくれたことだろうと思う。僕は元の世界に帰らないと!僕は孤高の絨毯職人サンデレオ!君は?君の名前は!」


(お姫様、大きく口を動かすが聞こえない。光が広がり音がかき消される。)




【終幕】


 場所:サンデレオ自宅 サンデレオ自室



(サンデレオ、ベッドで寝ている。兄二人、起こしに来る)


インデレオ「おい!起きろサンデレオ!この寝坊助野郎め!」


ニンデレオ「何?もう食べれないだと?テンプレな寝言を言うでない。これからお前は自分で食うために働くんだぞ!」


サンデレオ「ああ、兄さん達じゃないか。なんだ、僕は戻ってきたのか……」


インデレオ「何?戻る?なるほど、夢の世界からのお戻りかい。旅の再開はまた陽が沈んでからにしな。これから工房で仕事だぜ」


サンデレオ「違うよ兄さん。僕は魔女と魔法の世界に旅立っただろう?」


ニンデレオ「おいおい、だからそれはお前が読んでいる二流ファンタジー小説のことを夢に見たって話だろう?魔女なんておいそれとこんな田舎に来るものか。何を言ってんだ」


サンデレオ「え?魔女は来たじゃないか。インデレオ兄さんは魔女に絨毯を見てもらえず、ニンデレオ兄さんは狸の悪趣味な絨毯を酷評されて……」


インデレオ「バカかお前は!可能性の塊のこのインデレオの作品を見ずに帰るバカがどこにいる?」


ニンデレオ「この僕が狸をモチーフにした悪趣味な絨毯など作るものか!」


インデレオ「寝言は寝てから言うのがルールだぞ。もういい、顔を洗ったら下に降りてこい」


(インデレオ、ニンデレオ、退場)


サンデレオ「なんてことだ。夢オチなのか。ファンタジーらしさはあるものの、その一方色々あった面倒を都合よく潰すという点から、オチを用意することへの怠慢にも取れるため僕が毛嫌いしているエンドが夢オチだ。僕の物語もそうなのか。ああ、ショック……」


(ひとしきり落ち込んだ後、サンデレオ、部屋の棚の上に置かれたガラスの靴に気づく)


サンデレオ「ややっ!これは!!ガラスの……お姫様がくれたガラスのランニングシューズ!こんなものがこの世にあるわけがない。では僕は行ったのか。確かに魔法の世界に行ったのか!ははっ、やったぞ!これで僕も憧れのファンタジーヒーロー!未来は明るい!」


(サンデレオ、ガラスの靴を履く)


サンデレオ「ガラスの靴を履くのがヒロインだって誰が決めた?ヒーローだって履くぜ!これを履いて、目指せ一流職人!はっはっはっっは!」


(サンデレオ、笑いながら退場)



 こうしてサンデレオは、ガラスのランニングシューズを履いて日々工房で腕を磨き、ここから遠くない未来、街一番の絨毯職人になるのでした。オークションに出すなどと言ったこともありましが、彼は生涯ガラスのランニングシューズを手放すことはありませんでした。

 ガラスの靴は女子だけのものではない。望めば誰もがその手に掴める栄冠なのです。探しましょう、あなただけのガラスの靴を。


(幕が下りる)


 これにて終劇。

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