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第八十五話 ちょこっとカオス劇場『サンデレオ~ガラスの靴を履くのは女子だって誰が決めた?~』その 4

【第五幕】


 場所:魔法の世界 バトルドーム



格闘戦士1「なんだなんだ?こんなスカート履いたお姉ちゃんが、このムキムキマッチョお兄さんに敵うとでもお思いか?」


お姫様「わざわざ負けてやるつもりでとこんな野獣の巣窟に来るバカがいるとお思いか?」


格闘戦士1「質問を質問で返す。これはレディのマナーがなっていないぜ。よし、この俺が躾をしてやろぐぼえぇぇぇ!!」


名レフェリー「おお!女ファイターの蹴りが炸裂。自分よりも遥かにデカい巨漢を一発KOだぁ!」


モブの群れ「うぉぉぉぉ!!!」


名レフェリー「お聞きくださいこの大歓声!優勝候補の格闘戦士が初戦で崩れたぁ!さぁ今回の世界一武闘会は何が起こるか分からない。下馬評なんかまるで当てにならない新世界へご招待だぁ!」


モブの群れ「うぉぉぉぉ!!!」


サンデレオ「ややっ、言われるがままに来てみれば、このドームは格闘技を行う会場だったのか。野蛮だなぁ。僕のように両手で繊細な作業を行って食い繋ぐ職人からすると、人様を殴って蹴ってなんてありえない行為だ。この職人の手こそが唯一にして最大の資本ってね」


モブの群れ「うぉぉぉぉ!!!」


サンデレオ「うわぁ!鳴り止まぬモブの歓声。ほほぅ、その歓声が向く先はあの女性か。野獣を放し飼い状態にしたこんな危ない所に、可憐な乙女が単身乗り込んで拳を握るその真意とは何なのか。ふむ、これには深いドラマがありそうだ。とても気になるじゃないか。よし、彼女に会いに行こう!」



 サンデレオは考えをすぐさま行動に移すことに苦労しない活発な男でした。

 彼は客席を離れると選手控え室に潜り込んで美しき格闘家に接触するのでした。



【第六幕】

 

 場所:魔法の世界 バトルドーム選手控室



サンデレオ「見つけたぜ彼女!」


お姫様「なんだお前?」


サンデレオ「僕は絨毯職人……の見習いを卒業間近に控えた……そう、職人の卵だ!」


お姫様「ほぅ、そんな絨毯職人の卵が、この私に一体何の権限を持ってして話しかけようというのか?」


サンデレオ「はぁ、権限だって?さぁ?ただ僕には君に声を届けるためのこの大きな口があり、君は君でそれをしっかり聞き取れるチャーミングな耳を持っているじゃないか。これで僕らが会話する理由には足るだろう?」


お姫様「なんだ?最近の職人はそんなとんちめいた話も学ぶのか?」


サンデレオ「さあね?世界には山ほどたくさんの職人がいるのだろうけど、僕は我が家の職人しか知らないから」 


お姫様「おかしなヤツだなぁ。一体何だというのだ?」


サンデレオ「待ってよ、君の問いも分かるが、先にこれを解決させてくれ。君はそんなにチャーミングな見た目なのに、それにそぐわない豪傑のような物言いをするじゃないか。それは何でだい?」


お姫様「最大限譲歩してこんな服を着てお姫様をしているのだ。口の利き方までお姫様で行けだなんてサービスを求めすぎというものだ」


サンデレオ「なんだそれ?それは君の言葉か、それともその向こうにいる別の誰かの言葉か……?」


お姫様「それは言わないルールだぞ。ここは魔法の世界の物語が展開する、そんな場なのだから」


サンデレオ「ああ、そうだったね」


お姫様「で、お前は一体何が言いたい?何がしたい?」


サンデレオ「ぉぉ!待って待って!ていうか君はお姫様なのかい?」


お姫様「なんだお前、私が姫であることを知らんとは、さては潜りだな?」


サンデレオ「ご名答。潜りも潜りだよ。だって僕はたった今他所の世界から来たばかりなんだよ」


お姫様「魔女に連れられてか?」


サンデレオ「そうそう、魔女に絨毯を売って……そういやこっちに来てから魔女とはぐれてしまったなぁ」


お姫様「こんな絵に描いたような訳の分からない者を連れてくるとは、魔女ってのはろくでもない種族だな」


サンデレオ「お姫様って口が悪いんだなぁ。ファンタジー世界の夢がぶち壊しだぜ」


お姫様「うるさい。ここは上品なお嬢さんなんかが勝ち抜ける甘い世界じゃないんだよ」


サンデレオ「うん見たよ。さっきは野獣のような巨漢を倒してたね。あんなのとあと何回戦うんだい?」


お姫様「さあな。何人こようが、一人もいなくなるまで叩く」


サンデレオ「いやぁ~すごいなぁ。さっきは夢が壊れるなんて言っちゃったけど、魔法を使わず肉弾戦でパーティーを牽引するファンタジーヒロインも頼もしくて良い。まるで某Dから始まるクエスト第4弾に登場する人気のお姫様ヒロインみたいじゃないか。僕はバトルヒロインなら大いにウェルカムだからね」


お姫様「だからお前は何を言ってるのだ?会話が嚙み合わないヤツだな」


サンデレオ「そうだそうだ。僕が真に聞きたいことってのは、どうして君が戦いの舞台に立つのかってことだ。なぜそんな華奢な体で茨の道を行くのか、そこのところが是非知りたい。どうしても知りたい」


お姫様「断るとしつこそうだし、まぁ良いだろう。ここは魔法の国だが、私は魔法がまるで使えないんだ」


サンデレオ「ええ?そうなのかい?ホ〇ミとかもダメなの?」


お姫様「そのホ〇ミって魔法がどういう効果のものなのか知らないが、それも含めた全ての魔法が私に使えないのだ」


サンデレオ「それは気の毒に……なのか?」


お姫様「恐らくそうなるのだろう。私は後には国を統べる椅子に座ることになる。この世界では魔法能力の上下がイコールして人間関係の上下にも左右する。私は王族だが、魔法が使えない。魔法が使えない王族を真に慕ってついてくる国民が果たして何人いるか……だから私はやってやるのだ。魔法の力は無い、しかし屈強なる武力をこの身に宿していることには変わりないと証明するのだ。ここでな」


サンデレオ「そうか。君がすべすべと柔らかい乙女の拳を凶悪に握り固める悲しき理由がそれか。まったく、世の中の考えってのに翻弄されて、本来持つ素晴らしき人間性が損なわれいる。そんなことを思わないか?」


お姫様「おい、なんか真面目っぽいことを言いながらいやらしい手つきで私の手を触るでない!」


(姫、サンデレオの腹を殴打する)


サンデレオ「ぐごぉぉ!」


お姫様「ふん、それ以上痛い目を見たくなかったら、さっさと家に帰ってボロ雑巾でも縫っているんだな。ここは三流の仕立て屋が来るところではない」


(姫、次の試合のため控室を立ち去る)


サンデレオ「待て……僕は、絨毯職人の……金の……卵だぞぉ……」



 待ちに待ったファンタジー世界のヒロインは麗しきお姫様。しかしかなり荒い武闘派でした。日頃からキャッホーなギャルとの付き合に慣れるサンデレオも、まさかこのタイプのヒロインが飛び出すとは思わず苦戦するのでした。



サンデレオ「はぁ……痛いよぉ、痛いよ兄さん……」


 

 サンデレオは遠き世界にいる兄達に助けを求めて切ない声を発するのでした。

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