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第八十三話 ちょこっとカオス劇場『サンデレオ~ガラスの靴を履くのは女子だって誰が決めた?~』その 2

【第二幕】


 場所:サンデレオ実家工房



魔女「丁度良かったよ。新築に越した姪っ子の家に絨毯を送ろうと考えていたんだ。お前達が作った中で一番イカした絨毯をもらおうじゃないか」


インデレオ「なに?お前のような者にも姪っ子があるのか?」


魔女「私の人となりは関係ないよ。親が自分以外の子を産んでいて、それがしっかりと家庭を作っていれば、どんな者にも姪っ子なり甥っ子なりがいて不思議ないのさ」


ニンデレオ「なるほど。なにやら哀愁漂う納得の説明だね」


サンデレオ「ちっと突っ込んだ質問をさせてもらうと、その新築に越したってのは、ひょっとして結婚によるものかい?」


魔女「客の家族のことをあれこれ詮索するものじゃないよ三流職人共。だが、答えておくとそれで正解!最近いい人と一緒になってこれまたいい家もゲットしたってね」


インデレオ「それはめでたい。ことによると人生最初の売り物は、希望に満ちた未来への贈り物になるかもしれないな。我が工房で出た絨毯を日々踏みながら、その客は幸せに年老いて行く。良いではないか」


サンデレオ「ははっ、インデレオ兄さんってば、どこまで行ってもロマンチストだよね」


インデレオ「ふっふ、この業界で職人をやるために必須の要素ってのが確かな才覚、根気、そしてお前の言うロマンチストってことだ。俺達にそれらが揃っているのかが今確かめられつつある。この魔女によってな!」


魔女「おいバカ長男、人を指さすんじゃないよ。まったく三流の癖に口の方だけは一人前のごとくべらべら良く動くこと」


ニンデレオ「おい魔女、訂正してもらおう。僕らは一流じゃないが三流ほど程度の低い者でもない。今のところはしっかり二流なんだ。そこのところ間違わないでくれ」


魔女「まったく、ああ言えばこう言わないと死んじゃうのかいお前たちは?お前達の今の価値なんてなんでもいいんだよ。私は一位じゃなきゃあとはただの人って考えなんだから」


サンデレオ「潔く割り切った悪くない考えではあるな。では、今こそ一流の名をもらい、お前の中でしっかり一人前の職人だと認識してもらおう」


魔女「無駄口叩いでないでさっさと作業に入んなよ。で、いつ頃完成するのさ?」


インデレオ「そうだな、今が11時だから、16時には完成かな」


魔女「何!そんなに早くできるのかい?絨毯ってのは完成まで幾日もかかるって聞くけど」


ニンデレオ「まぁそれは製法だとか気合の入れ方で差が出るよね。僕ら兄弟のように半日でお釣りが来るスピードで出来ることもあれば、少女の頃からゆっくり縫って完成した時には50歳前のおばさんになっているっていう場合もある。僕らはスピード、質、それに加えて己のオリジナリティをふんだんに反映した商品を生み出すことを売りにしている」


魔女「さすが一代で絨毯を不変にして不朽のコンテンツまで昇華させた伝説の職人の息子達。腕もスピードも確かということかい。オリジナリティってのが引っかかるけども……」


サンデレオ「まぁ百聞は一見に如かずってことで、実物を見てからその評価を確かなものにしてくれ。そんなわけで僕たちは、これからまず最初に母さんの作ったビーフストロガノフを美味しく頂き、その後コーヒーでも飲んでゆっくりしたところで、ゆ~くり絨毯を作り始めるから」


魔女「え?そこまでゆっくりして大丈夫なの?」


サンデレオ「大丈夫でない橋は渡らない。これが父さんが僕らに日々告げる格言の一つさ。日々聞いていてそれを守らないバカはいないさ。16時と言ったら16時には全て事が終わる」


魔女「急に頼もしいではないか」


サンデレオ「ふふっ、真にできる男ってのは、どれだけバカのふりをしても、やる時にはすっかり何でも出来てしまうものさ。そんなわけで、君は僕の紹介するギャルやギャル男達がキャッホーに騒いでいる愉快な飲み屋にでも行って楽しんできてくれ。魔女の世界には無いキャッホーな時間が送れるはずだぜ」


魔女「ふむ、話に聞くギャルとギャル男の世界か。ちょいと覗き見くらいは良いだろう。では、16時にまた来る」



 そうして魔女を送り出すと、三兄弟達はしっかりリラックスした上で絨毯作りに入った。

 魔女の世界では時間厳守は絶対とされている。魔法が達者でも時間にルーズな者は軽んじられる。そんな社会なのである。なので魔女は16時までの間しっかり楽しむと、きっちり時間を守って工房に帰ってきた。



魔女「おお!出来ている!あの後ビーフストロガノフとコーヒーをゆっくり楽しんだ職人の仕事とは思えぬスピード仕立て!」


ニンデレオ「ちっちっち、ちょっと違うな。コーヒーを切らしていたから紅茶になったのさ」


魔女「どうでもいいわ!さぁ、お前達の無駄話に付き合うと本当に頭が痛くなるから、さっさと品を確認して一番良いものをもらおう」


インデレオ「魔女よ!」


魔女「なんだマッチョな兄貴」


インデレオ「お前はきっとマッチョな長男好きなんだろうと思う。だがしかし!ここは職人が魂を込めて作った品を売る工房。俺の形質に関する趣味は捨て、純粋に品だけを見て決めてくれ。俺のを選ばなくても俺は何も恨み言を言いはしない」


魔女「どんな親がどう育てらこんなバカを言う子供が育つのだろう。私の趣味で言うとお前が一番無いから。よし、もう長男のはいいや。次男、三男、さっさと品を見せな」


ニンデレオ「ふふっ、兄さん。理知的な兄さんにしては語るに落ちるの失策だったね。セールストークだって職人が鍛えるべき武器であり技だ。だが、しつこいとそうしてミスを招くってね。では魔女のお客、まずは僕のを見てくれ」


魔女「ふむふむ。これは狸かい。狸が四つん這いになり、その上にまた狸が四つん這いで乗っかり、これはまるでかの国で見たピラミッドのような形状になっている」


ニンデレオ「ふふっ、それはエジプトだね。地理の勉強不足かい?」


魔女「知っとるわ。皆まで言うのもなんかアレと思って伏せたんだろうが」


ニンデレオ「で、感想は?」


魔女「ふむ、気色悪い」


ニンデレオ「なんだって!」


魔女「今は新婚夫婦、やがては熟年夫婦の二人に送るにしては景気が良いものか悪いものか謎。世界観が個人の価値観で言うと気色悪い。これは無いな。よし、三男、見せな」


サンデレオ「ふふっ、狸とは変化球なアイデアで攻めたね。僕は嫌いじゃないが、そういうのは一部の変人には受けるだろうけど、パンピー同士の若き夫婦には向かないよ。僕はもっとポップなこれさ」


魔女「これは!かの国の名を冠する幻の麺料理では?」


サンデレオ「うん中華そばだねそれは」


魔女「知っとるわい。あえて伏せていることを察しろ」


サンデレオ「で、どうだね?まず君は中華そばが好きかい?」


魔女「とても好き。香ばしいスープに沈む細き麺をすくうあの過程にまで愛しさを感じる……どういう意味を込めてこのような作品を作ったの?」


サンデレオ「中華そばは人生の縮図だ。メンマ、ネギ、チャーシュー、そこらへんがスタンダードだが、他にも店によって色んなものをが乗っかっている。そして麺の種類、スープの種類も店によってあれこれいじることが出来る。なのにどこでも一様にして中華ぞばとして売り出す。長きに渡る人間同士の生活、今回でいうと夫婦生活。それもそんなものじゃないかな。人間であること、同じなのはそれだけ。あとは生まれも育ちもなんでもかんでも違っている者同士が、家族として同じ家、同じ世界に暮らすようになる。この感じ、中華そばの概念と通ずるものがないか?そして長き麺のごとく、夫婦生活も末永く続いて欲しいってね。そんなメッセージを込めた僕のデビュー作、是非買って行ってくれ」


魔女「分からぬ!それっぽい良いことを言った気もするが、最終的にはよく分からぬ。ただ、並々ならぬ強い思い入れのもとで生まれた怪作ではあるのだろう。それに新婚夫婦はそろって中華そば好きなのだ。よし、じゃあこれに決めた」


サンデレオ「やったぁ!人生初作品の売り上げゲットだぜ!」


インデレオ「ふふっ、負けたが弟の晴れ舞台だ。嬉しさが上回ったな。てか俺の作品は見てもらってもないのだが」


ニンデレオ「さすが僕達が育てた虎の子のサンデレオ。今日はお前が主役だ。だが、明日の主役は兄さん達が頂くぜ」



 兄二人は弟の出世を心から喜ぶのでした。

 それも見て魔女はこう思うのです。



魔女「気色悪い兄弟だなあぁ!」

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