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第七十六話 夜が深める二人の仲

「わぁ~勇も結華もちっさい!可愛い~」

 セピアは結華の部屋にあったアルバムを勝手に見て楽しんでいた。


「この時は可愛い可愛いおチビさんで悪態をつくこともなかったのね。今となっては兄妹揃ってなかなか口が悪くなったよね」

「うっさい。あんたは諸々の素行が野蛮だと想うよ」

「みっちゃんも写ってる写ってる。やだやだ、こんなチビの時から勇の傍にひっついていたのね。それから一世もいるいる~馬鹿面ねえ~。中学時代からは権之内もいるじゃない」

「セピア、すっごく楽しんでるね」

「みっちゃんも見なよ。あなたにとっても美しき想い出でしょ」


 ここでセピアは秘蔵ショットを発見する。

「わぁ!いやだコレ!勇、めっちゃチンチン写ってんじゃん。皆見てよコレ」

 セピアが見つけた写真には、下半身に黒色が全く見られない時分の幼き勇が写っていた。自宅の風呂場にて撮影されたもので、母まなみによるベストショットだった。


「こっこれは……可愛い……」と妹は兄を評価するのだった。

「あーはっは。まぁまぁ可愛いものをぶら下げて。ぷぷぷ、勇ったらチンチンまで超キュートね」

「あんたねぇ。仮にも女神なんだからチンチンチンチン連呼するんじゃないわよ」

「はっは!そんなあなただってチンチン言いまくりじゃないの」

「お前なぁ、ああ言えばこう言う面倒くさいヤツだなぁ。世に聞く女神がこんなに品の無いもんだって知った女神崇拝者はさぞショックを受けることだろうね」


 みっちゃんは勇のヌード写真をじっと見ていた。


「……あの日キュートだったここも、今ではどうなっていることやら……」

「みっちゃんちょっと、今を想像するは止してよ。あんた幼馴染の成長をその視点から考えるってのは色々アレだよ」

「ふふっ、そうして男は成長していくのさ……」セピアは遠くを見つめて言う。

「バカで何も知らんくせに、なんでも知ってる感じで喋んないでくれる?」

「まったく結華は口の悪いガキね。この時みたく可愛いさを振りまいても良いんじゃない?」

「そんなことないない。結華ちゃんは今でも十分可愛いよね」そう言うとみっちゃんは結華に抱きつく。

「ちょっと止めなって。もうそういうノリでやって行く歳じゃないっての」

「何言ってんだよ。まだ若いんだろう!」

 みっちゃんは結華の丸い頭を撫でるのであった。


 女子達の会話の大部分は勇の部屋にも聴こえていた。

 自分の下半身の成長をネタにされたことについて、勇は恥ずかしくなった。


 それから数時間が経過した。

 隣の部屋が静かになった。


「……寝たっぽいな。騒がしい夜だったな」


 勇もそろそろ寝る支度をしようと想った。階下でトイレを済ませると、階段を上ってベッドを目指す。そこで廊下に立つみっちゃんと遭遇した。


「みっちゃん、どうした?」

 みっちゃんは廊下の窓から夜空を見ていたが、勇の声を聴いて振り返る。


「う~ん。皆が寝てしまった。私はまだちょっと眠りには遠い状態だ。そこで勇くんはどうしているのだろうと想って部屋を出たは良いが、陽も沈みきった時期に乙女が男子の部屋を訪ねるのはどうだろうか。もしかするとそれは、大和撫子として今日までやってきた自分の評価を落とす行いではなかろうか。と自問自答している最中、君が帰って来て私に声をかけた」

 みっちゃんは話し終えると同時に勇を指さした。

「そんなしょうもないこと考えて夜空見てたのかよ。てかなんだ大和撫子って」

「しょうもないとはなんだよ!乙女の葛藤を分かれよ!男子力不足だぞ!」

 みっちゃんは妙なテンションで言いながら勇の脇腹を小突く。


「まぁ良いんじゃないのか。別に俺を訪ねてきたって」

「うん。それで良いって想ったからここで待ってたんだ」

「……随分楽しそうだったな、三人で」

「うん。勇くんのチンチンがめっちゃ写った写真で盛り上がったよ」

「お前ら声がデカイから全部聞こえてるんだよ。その上であえて不問にしてたのに、みっちゃんがそれ言うなよ」

「なんだよなんだよ。あのくらいの時期なら風呂でもプールでも一緒に入りまくった仲だろ?」みっちゃんはニヤけて言う。


「今日はさ。同じお風呂に入ったよね」

「ああ、まぁ俺んちの風呂だし」

「どう?魅力的に成長した幼馴染で出汁を取った湯に浸かるってのは?なんか特別な感じした?」

「バカかお前は!どんな角度から冗談を言ってんだ!ノーコメントだ」

「はっはは!」

 みっちゃんは自分で言った内容に自分でウケルのだった。


「……実は入ってない。シャワーだけ」

「なんでだよ。ちゃんと浸かれよ。肩まで浸かって100秒。って二人で入った時には数えてたよね」

「ああもう、風呂の話は止めよう」

 

 勇は昔を思い出す。そして今目の前にいる彼女を見る。時間の流れによる明らかな成長が分かることで、なんだか恥ずかしくなるのだった。


「勇くんはやっぱりいいね」

「えっ何が?」

「諸々含めて」

「急に何を言い出すんだ」

「いや、いつも想ってるよ」

「でも……言ったのは急じゃないか?」

「はっは、なんだその話の膨らませ方。やっぱり勇くんのそんな所がいいね」


 この雰囲気は普段にはない特殊なものだ。特殊ゆえ、普段は言えないことが言える気がする。勇は少し踏み込んで見る。


「……10年間」

「は?」

「10年間、幼馴染を想い続けてきた女子の話」

「うん。あ、聴いてたの?」

「うるさいから聴こえた」

「で、それがそどした?」

 

 勇はみっちゃんの顔をしっかり見て言ってみる。


「10年間の想いが成就したら、その時その子はどんな気分なんだろうか?」


 みっちゃんはその問いにまずは笑顔で返す。次いで言葉でも答えが返ってくる。


「すんごい幸せだよ!」


 勇は目を大きく開いて彼女の笑顔を見ていた。見惚れていた。


「じゃあ、そろそろ寝るとするか。ありがとうね話し相手になってくれて」

「うん、いいよ」

「じゃあおやすみ」

「おやすみ」


 みっちゃんは結華の部屋に帰っていく。

 扉を開けて一歩踏み出すと何かが頭に当たる。


「邪魔くさいなぁコレ」

 邪魔くさいそれをみっちゃんは手で払う。それは女神セピアだった。


「寝ると浮くのかよこの女神は」

 女神族の中には、睡眠に入ると無意識に浮いてしまう者もいるのだ。

  

 みっちゃんは布団に入った。


「あのさ」

 ベッドの中から結華の声がする。


「ごめん。起こしちゃった?」

「お兄ちゃんはさ、ちょっと口が悪いけど、とっても優しいんだ。まだそんな描写が足りないって想うかもだけど、昔から私にも他のやつにも優しいんだ。だから良い男だ」

「知ってるよ」

「だからさ、あんたはそんな優しいお兄ちゃんに見捨てられないようせいぜい頑張りなよ」

「頑張るよ」

「そんだけ、おやすみ」

「おやすみ……妹よ」

「誰があんたの妹だって?」


 その日、乙女達は遊び疲れたこともあってぐっすり眠れたが、反対に勇はどうしてかなかなか眠れなかった。

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