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第七十五話 女心を引き出すパジャマパーティー

 誰が勇の隣に座るかで乙女たちが揉めた結果、勇は庭に立っていることにした。乙女達三人は縁側に腰掛けてまだ女子トークを続けるのだった。


「やはり妹ならでは感じる兄の生活の微妙な変化ってのがあって、今回それが見事に当たったって訳よ」そういった妹はドヤる。

「お兄ちゃん大好きな妹なんて流行りじゃないわね、と言いたいところだけど、今時はそんな妹に需要があるみたいね。一世君がその手の漫画やアニメをよく見てるし」

「いやいや、でもいつの世だって結局男子の憧れは女神じゃない?」

「いや、それはないわ~」結華とみっちゃんは声を合わせて女神の意見を否定した。


「あのさぁお前ら、もう夕飯時だから、オレは一日の中でも夕飯時はしっかりゆっくり落ち着いた時間にしたいんだ。だから帰れや」

 夕方はなるべく機能をオフにしたい。若い割に省エネ思考なのが勇の生き方である。


「お兄ちゃん。お兄ちゃんはマユミみたいな女がタイプなのか!」

「何を言い出すんだこの妹は。それがなんだって言うんだ」

「そうだ!こんなスーツで決めたメガネの女が好きなのか!」

「みっちゃんまで……いや、まぁ嫌われる要素ではないし、まぁいいんじゃない?」

「なんだそのはぐらかしは!この際だから、俺はこんな地球の端っこにポツンと暮らしている田舎娘なんかよりもワールドワイドでキャッホーな女神様が好きなんだって言ってみせろ!」

「いや、お前のことは好きじゃねえ!早く天界に帰れ!」

「ああ、この感じ、ゾクゾクくるものがあるわ……」

 間髪入れずの鋭く荒い返しを受け、女神はゾクゾクするのだった。最近は勇からの強い返しに癖になる良さを見出しているようだ。


「こいつ、前からどうにも変態臭いって思ってたけど、この反応にそれが出ているわね」

 結華は女神に見る変態性に引くのだった。


「まぁいいわ。こうして乙女が三人集まり、良い男が一人いるわけだ。これも何かの縁ってことで、ここは一つ、ズバリあなたの女の好みを聞こうじゃない!いや、きっかけは何でも良いから私に教えて」

 セピアが謎の提案をするが、勇はこれを快く思わない。

 結華は興味津々で兄を見ている。みっちゃんは笑顔で答えを待つことにした。


「あのなぁお前ら、そんな恋バナならパジャマを着て夜中にやれ」

 こんな質問に真面目に取り合うことはない。というか嫌だと思った勇は、なんとか煙に巻くための方法を考えた。で、この内容を言えばここはやり過ごせると思ったので軽い気持ちで口にしたのだ。


「ああ、それっていわゆるパジャマパーティーね。いいわねソレ!じゃあ今日やろうか」

 女神の思考はフットワーク軽めなのでポンポン未来が決まる。

「いいじゃん。久しぶりに勇くんの家に泊まるかな」

「え、あんた達ここに泊まる気?ちょっとお兄ちゃん、追い返した方がいいよ」

「う……うん。え、マジなの?まぁ知らんけど、家の親に聞けよ」


 それから5分後。


「お母さんが言うには、みっちゃんは3分の2くらいはウチの子みたいなものだし、他でもないこの私は永遠に娘だし、あと女神が一人二人いても別に変わらないんじゃない?ってことでOKだって」

「母さん、色々軽いなぁ」妹の説明を受けて素直に思った息子の意見だった。


 というわけで、乙女たち三人は唐突にパジャマパーティーへと洒落込むのだった。人生に決まりきったシナリオはなく、ちょっと先の未来さえどうなるかは誰にも分からないのである。


 そしてその日の晩。

 勇は一世からやや強引に勧められたゲームをプレイしていた。勉学に勤しむことも大事だが、これを遊んで友人に感想を告げることで展開する学生同士のコミュニケーションだってそこそこに大事なのだ。

 勇の隣の部屋が結華の部屋であり、二つの空間を隔てる壁はそこそこに薄い。風呂を済ませてパジャマ姿になった女子達のテンションは決して低くはない。そんな女子三人が集まればそれはもう騒がしいものである。隣の部屋でキャーキャー言ってる声はもろに伝わって来る。


「あいつらうるせぇな。仲が悪いんじゃなかったのか。随分楽しそうだな」


 一旦揉めたら命ある限り揉め続ける関係性の人間達ももちろんいる。あの日大喧嘩したヤツが、後には死ぬまでの仲良しになることだってある。揉めること、修復してもっと深く繋がることなどの人間関係の巡り合わせはよく分からないものでもある。女子三人の相性はまだどれか分からない。なので揉めもするし、時には仲良くお喋りもしてまだ定まらない関係性を手探りするのだ。


「あ~ハッハッハ!さぁさぁ余り者共、祝福の金を存分によこしなさい!」

 女神は悪い笑い方で金をせびる。


「そんな態度で祝い金を収集するクソ女なんていないよ」

「セピアは女神という立場の者がどうあるべきか、今一度検討した方がいいと想うよ」

 結華とみっちゃんは順に女神へのダメ出しを行う。


「ふん、いいからさっさと金出しなよ。私は旦那様と幸せコースを進むのだ。旦那様には勇を選んでもいいかな」

「お前みたいなイカれた女神にお兄ちゃんは渡さないっての!」

「そのイカレ具合を武器に勇をゲットするのさ。男はちょっとの危険があるくらいが好きってものよ」女神はウザい言い方で妹を煽るのだった。


 三人はこれだけビデオゲームが進化を極めた時期に、あえて10年くらい前に発売したアナログゲームの決定版を遊んでいた。ゲーム内容は、一同が進むルートを人生に例えた双六ゲームだった。セピアはゲーム内で素敵な旦那様を見つけて結婚まで漕ぎ着けた。そこで他の余り者達から祝い金をかき集めていたのだった。


「わぉ!次には子供も授かったわ!また祝い金ね!」

 女神の人生は順調そのものだった。


「おのれぇ、なんでこいつこんなに引きが良いのよ。みっちゃん、私達もさっさと結婚して巻き返すよ」

「うん。そうね!」

 白熱していた。


「そうそう、あなた達もしっかりしないと、お目当ての男を取られちゃうわよ。例えば勇とかね。そうなると妹の立場も幼馴染の立場も危ういわよ」

「あんたまだ日本のことが色々分かってないみたいね。お兄ちゃんが誰と結婚しようが、私の妹の立場、そしてこの女の幼馴染の立場は一生揺るがないっての」

「そうなの。だったら安心して祝福してくれるわね。ねぇみっちゃん?」

 みっちゃんは言葉を返すよりも先にまずセピアの右肩を掴んだ。そして言葉は遅れてやってくる。


「一世君が読んでる、またはこっちに読ませてくる漫画によくある展開なんだけど、急に空から落ちてきた女が、幼馴染ヒロインから主人公を奪っちゃうってヤツがあるの。私、あれってなんか許せないのよね」

 そんな説明をする内にみっちゃんの握力はどんどん上がっていく。


「え……でもね、ラブに時間は関係ないのよ。10年一緒にいた気になるあの人の心を11年目に急に現れた女が一瞬で持って行ってしまうこともある。それくらい、運命だとか相性によって一瞬の内に流れが変わるのがラブという戦争なのよ」と女神はラブを紐解く。

「……その11年目に出てくる女ってのが、マジに許せないのよ。惹かれ合う運命に罪はない。それを理解した上でも割り切れないでしょ。10年間抱き続けた彼女のかけがえのない想いの行方はどうなるの?」

「いや、痛っ、ちょっと怖いって、みっちゃんは今後そのキャラで行くの?」

 言葉に想いが乗れば、手にも力がこもる。女神は肩を痛めるのだった。


「ふぅ……だったらさ、その10年間頑張った女は、10年間の想いを無駄にしない結果になるよう死ぬ気で頑張るしかないんじゃない」

 現在ゲーム成績ドベのこの場で最年少の結華が、意外にも大人の心境で物を言ったため、二人は驚いて結華に注目するのだった。

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