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第五十六話 パンケーキは全年齢層にウケる一流スイーツ

「では、これより荒れる下界を正す勇者召喚についての議題に移る」

「はっ、今回も事実を全て報告すると誓います」

 ゴライアスは地球での活動、そして勇者の近況報告とかのこれといって建設的要素ゼロの報告をするため、老議員達の前にやって来た。だって、現状何も進展がないのだから。


「うむ、では特急勇者派遣大使ゴライアス入られよ」

「あっ、本来ならここで入室するのか。すみません、さっさと現場入りしていました」

「よい。こちらにある会議を進める上での定型の文句を読んだだけだ。まぁ一応のスタイルがあるから」

 ゴライアスの先輩の老いた議長は「会議のススメ」と書かれた薄い冊子を手でパンパンと叩いてゴライアスに見せた。


「あっ、そんなのあったんですね」

「お前が手にするにはまだ早いものだ。出世したらこの席に座ってこのススメ通り仕事をしてもらうことになる。今は勇者を連れてくることに専念しろ」

「はい。では報告に入ります」


 ゴライアスの上司にあたる年寄共は、なにかこだわりがあって因習を重んじる訳ではないが、惰性のままに形式に則ったアクションを続ける。これが長年身についている。こうして意味無き習慣が、悪習へと形を変えて行くことがあるのかもしれない。今一度定型の意味を考えた方がよい。ゴライアスはそんな事を思ったが、指摘するのも面倒だし、早く帰りたいので余計なことは言わないことにした。


 そして経過報告が終わる。


「なるほど、つまり大きな動きはないと」

 とある議員が言う。


「はっ、その通りです」

「いや、そうはっきりきっぱり言われても……」

「ゴライアスは物言いこそハキハキして、いかにも経過順調のように話すのだが、中身は何も動いていないんだよな」

「そうそう、態度だけは出来るヤツって感じ」

「特急のつく派遣大使にしては鈍行運転だしな」

 老人達は言っても仕方ない文句を思うに留めておけず口にする。


「まぁ態度くらいはそれらしくしておかないと、もう全く格好がつかないでしょ。つかないなりになんとかしての格好がコレです」

 ゴライアスは胸を張って言ってみる。


「前向きか、図太いだけの鈍感か、とにかく簡単に折れないしへこたれない。それがゴライアスの現場向きな要素だ。ゴライアス、今後も精進せよ。世界の未来の一端を担うのはお前だ」

 議長はゴライアスに激励を飛ばした。


「はっ、胸に刻みます」

 ゴライアスはとても良い返事を返す。


「して、女神協会との連携についてだが、なにか報告があるか?」

「はい、女神セピアが勇者の学校の同級生として仲間入りしたことを確認しました。これは女神からの事後報告となり、彼女がクラスメイトになるのを防ぐことは出来ませんでした」

「女神はどのように機能しておる?」

「皆さんもご存知の通り、いろいろアレな女神協会の中でも若手の下っ端ですから、何か機能と言われましても大したことはなにも、というのが報告になります」

「ふむ、まぁそうじゃろうな」


 議長はじめ年寄り共はセピアの動きに対してあまり注目することはなかった。


「勇者になにからしらのアプローチをかけているようですが、理屈よりもフィーリングで動くのが彼女の困ったやり口なので、勇者召喚について役に立っている要素はゼロです。こちらとあちら、二つの組織で一応の協力関係が敷かれている手前、意識的にこちらの邪魔をすることはありません。かといってこちらにとって有益なアクションも起こさないので、彼女の存在は特に気にすることはないと思います」

「うむ、そうじゃな。まぁ女神協会と揉め事にでもならなければこちらは何も言うことはない。面倒は御免だから、そういうことがないのなら女神には勝手にやらせとけ」

「はっ、どの道彼女は聞く耳を持たず、聞いたところでしっかりはっきり理解する頭も持ち合わせていないため、こちらからは完全にルーズコントロールとなっています」

「ははっ、まぁ上手いことやるように」


 こんな感じでセピアはかなり軽んじられている。


「ではゴライアス、今後も勇者から目を離すな」

「はっ」

 この返事を持ってしてゴライアスの報告は終わりとなる。


「で、ゴライアス。なにか、あちらの世界から仕入れた新たなグルメ情報は?」

「ははっ、議長たちも舌だけはお若い。お土産ならこちらに」

 ゴライアスは異次元ゲートを開くと、そこからバッグを取り出した。


「こちらにありますは、勇者が暮らす街の喫茶店で作られたパンケーキなる美味にして素朴な味わいが楽しめる一流スイーツでございます」

「おおっ!」

 大量にテイクアウトしてきたパンケーキを見た年寄り共は歓喜の声を上げる。


「まだまだ元気、でも胃の方はアンチエイジングが難しい。そんな皆様にも安心頂ける軽めのスイーツとなっています。しっかり頭を使ったこのような会議の終わりに召し上がると、消費したカロリーを一気に取り戻すことが出来てこの後も元気に余暇を楽しむことが出来ますよ」


 ここにいる全員がこの会議を持ってして業務終了となっていた。


「まぁまぁ皆様、慌てないで並んで下さい。パンケーキが目指すのは皆様の胃の中です。逃げはしない、むしろ向かって行くのですから」

 

 報告会では実のある報告がないためトークの勢いも半減だったゴライアスだが、お土産の報告となると、実に調子よく喋りまくるのだった。

 ゴライアスの先輩の年寄り達は、地球の食い物が大好きだった。

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