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第五十五話 イカよりタコを選んだ君へ

「ふふっふ、は~はっは!」

「おいゴン、何を急に笑い出すことがあるんだ。何もしなくても変なヤツ扱いのお前が、そうして何もないのに笑ってたら、それこそ逃れようのない真の変なヤツ確定だぜ」

「いやなに、このタコを見て、勇との出会いを思い出した。それとみっちゃんもな」

「へぇ、勇とゴンとの出会いか?そういやどんなだか聞いたことがないぁ」

「日本上陸後間もなく出会ったのがあの二人だったわけだ」

「こんな田舎だからさ、小中とそのままメンバーは変わらなかったわけなんだ。そんな中ゴンという変人の投下は、学校でちょっとした騒ぎになったと今でも思い出すぜ」

「俺から見たお前も大分ヤバかったけどな」

 権之内と一世の変人二人は仲良く昔話をする。


「そうか、丁度こっちもタコを見て権之内のことを思い出していたところだぜ」

 権之内の歩く後から勇が声をかけた。


「あの時勇はイカでなくタコを選んだ。やはりタコと言えば勇だな。俺達を繋いだのはこのタコだぜ」

「タコなんかをそんなありがたい友情の印みたく言うなよ」

「ふふ、そのタコなんかに舌鼓を打って感動したお前は小躍りすることになる。そんな未来までもうすぐだ」

 権之内は有言実行出来ることなら全力で実行する男だ。この後勇は権之内が捌いたタコを使ったたこ焼きを食って小躍りはしなかったけど大変満足するのだった。


 たこ焼きパーティーが始まっていくらかの時が過ぎた。


「権之内あんたタコを捌けるのね。結構すごい能力じゃない」

 家にいたので結華も一緒にたこ焼きを食いまくっていた。


「だろ?すごいだろ?でもそんなすごいことを鼻にかけないのに俺は真のすごさを感じたりするわけだが、お前はどう思うよ?」

「それを聞いたらしっかりすごいって言いたくなくなった」

「ふふっ、まあ何でもいいや。お前もしっかり食え、そしてまなみさんみたく素敵な美魔女になると良い」

「だからお母さんのこと名前で呼ばないでってば」

 権之内は美魔女に造形が深い。


「これは美味い!なんて美味いの。これは食文化の進行と思考に待ったをかけて久しい天界のおばん共に食わせてやれば良き刺激になるんじゃないかしら」

 セピアはたこ焼きを絶賛しつつ上司をこき下ろす。


「お前、日に日に口が悪いぞ」

 勇は仮にも女神の口調がそれではまずいと思い、とりあえず注意した。


「ゴンはこの手のことなら何でも器用にやってのけるよな。ゴンがいれば助かることも多い」

「じいちゃんが言ってたんだ。男たるもの、とりあえずお好み焼きとたこ焼きはひっくり返せるようになれってな」

「え、なんで?」

「知らん」

 祖父の言葉は多く記憶しているが、個々にこもったありがたき意味についてはこれといって何も記憶していないのが権之内の脳内事情だった。


「勇、残ったやつは刺し身にしておいたから、まなみさんと旦那さんで食ってもらってくれ」

「ああ、悪いな」

「な~に、お前やまなみさんが俺にとって悪者だったことなんて唯の一度もありはしないさ。良いことだらけと思って食べてくれ」

「ああ……」

 なんだか返しの面倒なヤツだなと勇は思った。


「勇くん、はいどうぞ」

 みっちゃんはたこ焼きにソースをたっぷりかけて勇に寄越す。


「ソース多いなぁ。辛すぎないか?」

「何言ってるの?これくらいで丁度良いのよ。ささっ食べた食べた」


 これを見た妹はよろしくない反応を見せる。

「あらあら、彼氏か嫁気取りでいやらしい。お兄ちゃんはソースは少なめ、そしてオムライスの上の卵にはケチャップはかけない。他には餃子もコロッケも何も付けないで食べるのを好むってことくらい知らないの?」

 妹は兄のことを良く知っているのでマウントを取る。


「いえいえ、こちらの好む価値観を是非知ってもらおうと思ってのことだから」

「価値観の押し付けは良くないわね。男女に限らず、人間同士でそれをやっていれば長続きせずに破滅を呼ぶわ」

「ふふっ、勇くんとは赤ちゃんの頃からの付き合いだけど、まだその時が来る気配がないのだけど」


「また始まったよ。結局は仲良しさんなんだから、小競り合いなんて止せばいいのに」

 女子が揉め始めたのを横目に、一世はどんどんたこ焼きを食っていく。


「勇って罪作りよね。あっちこっちから好かれちゃってもう。そんな私も勇推しなんだよね」

 セピアは揉める二人を無視して勇にぴったりくっついて座る。


「やめい!一世が好きなラブコメみたいなことすんじゃねえ」

 勇にはややラブコメアンチなところがある。


「女神様もすっかりこの感じに慣れ親しんだものだよな」

 女神は下界でも順応性が高い。一世はそう実感した。


 権之内は感想を述べる。

「勇、餃子にはラー油入りのタレをかけた方が絶対美味しいぞ!」


「まぁ、人それぞれ好き好きあるから、とにかく静まれ。お前達は喧嘩するな」

 

 幼馴染と妹が揉めることについて、勇は色々と複雑な想いになる。二人に挟まれてオロオロしながらも、揉め事の調停役を務めるのだった。


 権之内は、なんだかんだで楽しそうな皆の顔を一通り見回す。そして最後には勇を見る。

「勇がタコで良かったよ」

 権之内の口からなんとなしに漏れた言葉がそれだった。

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