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第四十五話 女神のいる教室

 転校生とは、何時頃やって来るものなのだろうか。

 青春の拠点である学校を変える。それは個人の、または家庭の都合に左右されて行われる場合が多いと考えられる。

 なので、転校生がやって来るタイミングは、本人次第となり、他人には全く予想出来ないのだ。

 そんなわけで、勇は今一度己の青春の闖入者に驚くのである。


「というわけで、今日からクラスに新しい仲間が加わります。では君、自己紹介をどうぞ」

「ご苦労、担任」

 後光差す女は、偉そうに一歩前に踏み出す。

「お集まりの皆々、御機嫌よう。今日からこの天上の女神セピアが、下界の皆々によろしくしてあげるわ」


 お前のために集まったんじゃねぇ!何だその偉そうな態度は!にしてもまた変なのがクラスに来てしまったぁ!

 そう想いながら勇は頭を抱えるのだった。


「あ、勇ぅ~よろしくね!」

 勇を見つけると、女神はご機嫌に手を振り、ウィンクを飛ばして来る。

「ふむふむ、小娘1号に、勇者お付きのバカ男二人。それにゴライアスもいる。下界って狭いわね~、ちょっと歩けばもう知った顔がいくつかあるんだもの」


「わぁ~すげぇ~女神様だ~。おい勇、遂に俺達のクラスにも女神様が来たんだなぁ。おい、聞いてるのか勇ってば」

 一世は女神ウェルカムなノリでうるさい。


 権之内はというと、100円ショップで買ってきたクロスワードパズルを解くのに集中していた。権之内はどこにいても勝手でマイペースなのだ。


「あ~、先生ってば、なんでよりにもよっておかしいのばかり生徒に受け持つんだよ。転校するなら他のクラスもあっただろうに」

 ゴライアスに続きまた変なヤツを連れて来た担任の引きの良さ、または悪さについて、勇は一人文句を垂れるのだった。


「ははっ、神名君、そのことなんだけどね『君ならちょっと変わった子の面倒もイケるでしょ?』って校長先生から信頼のお言葉をもらってね~。それで彼女は我がクラスの仲間入りを果たしたんだ」

「先生……それって先生の対応能力を高く買ってのことでもあるんだろうけど……面倒の押し付け先に選ばれたとも言えるのでは……」

 担任の職場におけるちょっと変わった立ち位置について勇は考えるのだった。


「ええっと、では彼女の席はっと……」

「先生!」みっちゃんが声を上げた。

「なんだい?」

「私の隣には……来ないようにお願いします」

 強めのリクエストだった。

「ふふっ、じゃあ君の隣で!なんか面白そうだし」

 担任はこの手の日常からやや離れた状況に場馴れしている。なので、ニコニコしながらセピアの席を設定した。


 セピアは自己紹介を終えると、教壇を降りてみっちゃんの横の席を目指す。


「おいセピア」


 そこでゴライアスに声をかけられた。


「その発光するの止めろよ。眩しいったらありゃしない。こっちの世界に来たなら、なるたけこっちの世界に馴染んで目立たないようにしろって君の上司のおばん達からさんざん言われてるだろ?あれだけお小言天国な目を見てまだ懲りないのかい?だったら君のタフさと鈍感さも一級品だね」

「おのれゴライアス!よくもおばん共にチクったわね。あの後マジでうるさい小言地獄を食らったんだから。でも女神としては確かに一級品よね!」

 実は地獄だった。そしてセピアのハートは鋼のごとく強固である。


 先日の女神空間での騒動について、ゴライアスは立場上全て上に報告しなければならなかった。なので、このじゃじゃ馬女神の困った所業は全て上に筒抜けとなり、そこから説教地獄へと続くことになったのだ。ざまあみろ。


「よろしく」

「あら女神様、御機嫌よう。背中の御機嫌な羽根はどうしたの?」

「あなたともう一人の困ったちゃんが吹っ飛ばしてくれたんでしょ?記憶飛んだの?高かったのよアレ」

 みっちゃんと女神の相性は微妙だった。


「はい、というわけで、今日からセピアさんをよろしく。なんでも天界で女神様をしている方だって聞くから……つっても何をしている人なのかよく知らないけど、とりあえず徳の高い何かしらとのことなので、失礼とか喧嘩とか、その他諸々の揉め事がないように頼みます。じゃあ僕は次の授業があるので」

 担任は正直な人なので、色々正直に言うと、他所のクラスで行う自分の授業に向かった。


「おい女神!」

 勇は女神の机にバンと手を置いた。

「何かしら勇?」

「これだけは言っておく!もうお前なんかがいるだけで既にアウトなんだが、これ以上は俺の日常に異世界を持ち込むなにかしらの困ったアクションをしてくれるなよ」

「ふふっ、それには素直にイエスともノーとも言えないわ。私は勇者と仲良くしたいけど、こちらもミッションを預かった職業人ですもの。大人の世界はパンケーキのように甘くなくてよ」 

「こいつ、歳いくつだよ?」と困った様子で勇はゴライアスを見た。

「といっても彼女は下っ端だからね。まぁ勇が大きな心配をすることもないだろうと思うよ」

「ゴライアスだって大したことないでしょうが。おじん達にごちゃごちゃと愚痴をぶつけられるばかりの冴えない下っ端でしょ?」

「そのおじん達だって同じ過程を踏んで今は僕の上司をしているんだよ。茨を踏んで出世の道を歩むのは皆共通さ。楽を考えちゃいけないな。僕は人生邁進中なの。君のように気分屋な遊び人気質じゃないの」

 とか言いながらゴライアスはこっちに来て契約したばかりのスマホでゲームをエンジョイしている。一世に教えてもらってプレイし始めたのだ。彼こそが娯楽好きな天界人だった。


「なんでもいいからお前らセットで帰れよ」

 勇の異世界アンチ気質が加速するのだった。

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