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第四十一話 覚醒

 勝負続行となれば、結華はすぐにも攻撃に出る。結華は相手目掛けて見事な早撃ちを決めた。

 放たれた銃弾とみっちゃんは直線上に並んでいる。間もなくトウモロコシがポップコーンとなって膨らんだ。その膨らみの分だけ、結華の目に写るみっちゃんの姿はポップコーンに覆われ、やがて見えなくなる。

 みっちゃんが視界から消えるのは着弾までの一瞬のことと思った結華だが、すぐにその予想は外れることになる。

 ポップコーンはターゲットを射抜くことなく、虚しく飛距離を伸ばす。みっちゃんがいない。発砲と同時に向こうも動いた。


 消えた相手がどこに行ったのか首を振って探す間も無く、次の瞬間、結華にも攻撃の手が伸びる。

 風の流れがつい先程から急激な変化を遂げたことを、結華は左頬の感覚で認識した。視線をそちらに向ければ、人間の足が迫ってくるのが分かった。

 結華は急な攻撃に反応し、銃を持った側の腕を上げてガードに出る。そこにみっちゃんの回し蹴りが派手に打ち込まれた。結華の腕に直撃ではなく、銃を狙った打撃だったため、蹴りは銃を弾き飛ばした。結華は一瞬の内に丸腰になってしまう。

 距離を取りたい結華はバックステップに出る。その際、土産に結華の方からも蹴りをお見舞いした。片足を上げた状態のみっちゃんは直様受け身に入ることが出来ない。結華の蹴りもまたみっちゃんの手に持つ銃を吹き飛ばした。

 みっちゃんから数メートル距離を取った結華は、体勢を立て直した。


 手にした銃を互いが一瞬で失うことになり、これで互いに丸腰状態になった。互いに攻撃の手を打った後でも、まだ条件はフェアなままだ。


「油断も隙もない。すばしっこい女ね」

「それにしっかりついて来ているんだから、お互い様ね」


 乙女の視線は交錯し合う。

 銃を拾って来る間は無い。そんな素振りを見せたらそこを打撃技で狙われるだろう。互いがそう思っていた。だから、両者共にここからは格闘オンリーで行くと頭のチャンネルを切り替えた。


 二人同時に地面を蹴り、相手に真っ直ぐ向かって行く。

 距離を詰め間合いに入ったタイミングで、互いが強く握られた拳を繰り出した。このまま行けばクロスカウンターの形を取って、互いの頬を凹ますことになる。


 その時、韋駄天の足で二人の間に割って入る存在があった。

 その者は、両手を真横に伸ばし、乙女二人に手のひらを見せることで、静止せよと合図を送る。だが、時既に遅し。乙女達の力の向きは前に前に働くばかりであり、静止も後退も出来はしない。

 

「やめろ!」

 男の声が響く。忘れもしないいさむの声だった。


 次の瞬間、乙女二人は勇を中心にして後ろに弾き飛ばれてしまった。力の働く向きが異常な流れで逆流された。この違和感に気づかない乙女達ではなかった。


「お兄ちゃん!」

「勇くん!」


 弾き飛ばされて尻もちをついた乙女それぞれが、ここに乱入するには違和感ある者の名を呼んだ。


「やめろお前ら!幼馴染と妹がガチでやりあうとか、両者の間に立つ身としては胃が痛くなる!」

 勇だけが座することが出来る複雑な立場からの叫びだった。


「お兄ちゃん、今の……おかしい、触れてないのに」

「勇君、手を見て」

 みっちゃんがそう言うので、勇は自分の手を見てみる。


「なんじゃこりゃ!」と勇が驚くのも無理はない。

 勇の手からは金の粒子が出ている。粒子は上に向かって舞い上がり、勇の頭を越えたくらいで消えて見えなくなってしまう。


「勇、それが君の力だ」

 また新たなる声が舞台に響く。


「ゴライアス……」

 勇の目に、突如現れたゴライアスの姿が映った。


「触れずして動体に力を加える。君が一瞬にして女子二人を弾き飛ばしたアレは、勇者だからこそ出来た芸当だよ」

「これが、勇者の力……」

 勇の両手が光る現象は、間もなく収まった。


「説明キャラっていうポジションはなんだか脇キャラの役目って感じがして好感が持てないのだけど、今回は仕方ない。僕しかその事は知らないのだから。というわけで説明してやろう」


 ゴライアスは甘んじて説明キャラ役を買って出る。


「君たちの世界にいれば、勇者と言えど大々的に特殊能力を発動することは出来ない。しかし、これは勇の気持ちいかんで変わりもするけども、まぁ今は関係のないことだ。勇が僕の招きに応じて異世界にくれば、今のような超人的にしてファンタジックな能力がバンバン使い放題だ。そしてここは君たちの世界でもなく、僕らの管轄となる異世界とも違う。その狭間、両方の干渉を受ける特殊な世界ってなところかな。だから勇はちょっとだけ勇者の力を使えるってわけ」

「特殊?じゃあここは何なんだ?」

「そこで伸びている駄女神がいるだろ?彼女が作った独自の困った世界、その名も女神空間だ。まぁそんな神秘的響きのするネーミングが、聞いて呆れる程世紀末臭のすごすぎる世界観なもんだから、センスを疑っちゃうんだけどね」

 ゴライアスは鼻で笑ってみせる。


「ううっ、ゴライアス?なんであなたが?」

 女神が復活した。

「君がなにやら派手にバカなことをやってるから、さすがに気づくし、気づいたらなら声かけに出ないわけにはいかないよ。そそっかしい君の頭でも分かってると思うけど、これは困った問題だよ。勇者ですらギリギリリアウト、ただの一般人の彼女達ならここに招くのは完全に違反行為だ。これはどうしたものか……」

「ふふっ、そんなものは隠蔽すれば良しでしょ?」

「違反行為を見逃すことを僕に強要するのかい?それがまたアウトだよ。まったく女神の言動とは思えない。困ったなぁ……」


 ゴライアスがつく役職は、それなりに重責となるものであり、こういった問題には慎重に向き合わなければならない。

 女神協会の規定により、原則女神の力を一般人に向けて使ってはいけないとあるのだ。セピアは原則の範囲を出てこんな馬鹿げたゲームを始めたわけだが、もちろんこんなものが原則を破って良しとされる特別な事態と認められるわけがない。

 女神セピアとは知らない仲ではないというか、むしろめっちゃ知っている仲なので、それがまた難題になりし要素となるのだ。

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