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第四十話 女神地に落ちる

 セピアは両手の銃を大地に向けると、連射機能の限り弾を打ち込んだ。そのまま空中で回転し、周りの大地全部に穴を開けていく。

 トウモロコシ、またはポップコーンの雨が降り注ぐのを呑気に待っていられない乙女達は、とにかく逃げに徹するのである。


「あ~はっは!小娘共め、この女神の弾丸から逃げられると思うなよ!」


 皆と出会った時には黄金に輝く後光が見えた女神だが、今は黒いオーラを身にまとった邪悪の化身のように見える。

 トウモロコシもポップコーンも廃ビルの弱った屋根や壁を激しく叩き、それらは次々とダメージの限界を迎えて崩れる。


「無茶苦茶だなあの女神!ローリングしながらも撃ち込むとかボンダムウイングかよ!」

 結華は階段を駆け下りる。天井が揺れているのが分かる。ここの天井もそろそろ落ちてくるだろうと予想して退避することにした。

 女神の攻撃は激しく反撃の隙がない。出来たところで、翼をもがれてもなお天空にいるため、攻撃が届かない。ここは逃げの一手しか無い。

 ビルの外を見れば、ポップコーンが地面を埋めているのが分かる。


「何発打ち込んでだよ。弾の所持数もこっちよりずっと多いわね」

 結華は女神のチートにまたもや文句を言うのだった。


 弾はどんどん上から降ってくる。ポップコーンは大小様々なものがあり、寝転べば人間が隠れるくらいになっている。結華はとりあえずこれに埋まることで頭上の女神から隠れることにした。みっちゃんも恐らくどこかに隠れているのだろう。

 ポップコーンには堅いものもあれば、ふかふかと弾力があるものもあり、手応えが様々だった。これは意外にも丈夫な盾になりそうだ。上から落ちて来たものを貫通せずに防ぐことが可能だった。

 攻撃の手がないなら最大限の防御を考える。物事を有意に進めるための頭の切り替えが早い結華は、現状最善の手として、ポップコーンを盾にやり過ごすことにした。


 バックの曇天よりもっと黒く光るセピアは、女神にあるまじき下卑た高笑いを浮かべて尚も銃弾を撃ちまくる。そんな彼女を黙らせるイベントの襲来は合図なく一瞬の内に訪れて終わった。

 大地より天空に向け、二つの白き閃光が走る。一つは女神の額に、わずかに遅れたもう一つは腹に直激した。


「うごぇえ!」


 大地までは届かないうめき声を上げ、女神は銃から手を離した。二丁の銃は虚空を舞う。そして次には重力に従うままポップコーンだらけの大地目指して落下する。その銃を追い越すスピードで女神も落下して行く。

 落下時に薄っすらと残っていた意識の中で女神は思う。先程の強力な二撃には、気が込められていた。その気とは、勇ましき者こそが放てるもの。常人には達することが出来ない研ぎ澄まされた強大なパワーが秘められたものだったからこそ、上位の女神であるセピアが墜落するに至ったのだ。


 黒き塊が白き塊にダイブして行くのを結華もみっちゃんも見届けていた。


「何?どうしたのあの女神?急な腹痛はらいた?」

 これまで絶好調に攻撃の手を進めていた者の急停止と見れば、原因としてまず腹が痛くなったことを上げる結華の意外な思考がそのまま口に出た。


 女神は沈黙状態にある。再び起き上がって何かする気配はない。


 ビル群からやや離れた砂地には、選ばれし勇ましき者、またの名を勇者とする者がいた。そう、我らが主人公神名勇その人である。


「ふぅ、あの女神やっと静かになったな。にしても派手にぶっ壊したなぁ~」


 盗塁したいランナーを恐怖させてベースから離れさせないかのごとく見事な強肩で女神に二撃をくれてやった犯人は勇だった。セピアが撃ちまくったポップコーンの内二つを拾って空に向けて投げたのである。狙い通り危険な女神に直撃させたことが出来たことに勇は満足するのであった。


 結華は落ちた天使に近寄ってみた。


「あちゃ~、白目向いて伸びてる。これが女神の顔?」

 結華のリポート通り、女神は女神たる威厳が薄れる醜態を晒していた。


「一人落ちたわね」

 大量のポップコーンを掻き分けてみっちゃんも姿を現す。


「で、どうするの?この続き」

「あんた無事だったの。私はいいわよ、続けても。登場がすっかり遅れたんだもの、今からでもあんたなんかぶっちぎるくらいの追い上げの活躍を見せなきゃ」

「先に産まれたお姉ちゃんだもん。それでそんな都合言われても知らないよ」

「見当外れの返答をかますくらいに余裕なんだ。こっちもいつまでもチビのままじゃないって教えとかないと行けないわね」


 大粒のポップコーンを踏みしめ、伸びた天使を間に挟み、乙女二人は今一度対峙する。

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