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第三十五話 二人目の招かれざる訪問者

「この馬の顔をした二足歩行の人物が、かの有名なウマザ・ワンダフルクリーチャーで、彼が惑星プヌヌンパに降り立って早々に空腹で行き倒れたところを偶然発見したのがこちらのサイコクイーンというわけだ」

 一世は綺麗に磨かれたテーブルの上に立つウマザ・ワンダフルクリーチャーのカプセルトイの横に、先程ガチャで回し当てたサイコクイーンを置いた。


「餓死寸前のところでサイコクイーンにウルトラサイバー人参を食わせてもらったウマ男は、死の淵より復活を遂げる。助けてもらった恩もあるし、他所の惑星に降り立ってからの就職先も確保ということもあって、ウマザ・ワンダフルクリーチャーは、サイコクイーンが所属する『鉄人兵団 ナカヌマ・バーニングマグナム』通称NBMに入るんだ。で、そのNBMのボスのノリオ・ナカヌマがこれってわけ!」

 一世はテーブルの上にノリオ・ナカヌマのカプセルトイを置いた。


「へぇ、最近のガチャポンって良く出来てるんだね。パンツもちゃんと履いてるんだ」

 サイコクイーンを手にしたみっちゃんはパンツの存在に気づいた。


「で、そのBNWってのは一体何をする軍団なんだ?」

「おいゴン、間違えるなよ。それはどこかの速いお馬さん三匹をまとめて呼ぶ時に用いる名称だろ。こっちのはNBM、ナカヌマ・バーニングマグナムだってば」

「ああそうか。ウチの親はどっちも馬が好きでテレビでも良く見てんだよな。はっは~」

「で、本当に何をする軍団なの?」勇の妹の結華もNBMに興味を持っている。

「ああ、この手の困った組織らしく、経済をストップさせることもすれば、シンプルに武力で征服行為に出ることもある」

「例えばそれの内容は?」背中に羽根持つ謎の女も質問した。

「ああ、人気のゲームをめちゃめちゃ買い込み、作為的に店頭品薄状態を産む。そうすると、商品を豊富に持っているのは自分たちだけになるだろ?それが欲しくてたまらないマニアに財布を大胆に開かせるためにそんなことをするのさ。そうなると、あとは定価を越えまくったバカみたいな高値で転売を始めるのさ。こんなことを続けて、人々の生活における商品の需要と供給のバランスを意図的に崩壊させ、経済循環をもめちゃくちゃにするんだ。怖いだろ?兵器とかの武力も持っているから、普通に街だってぶっ飛ばす。頭も使えば、これといって思考を必要としない暴力まで使って、とにかく無辜の民をいじめるんだ。な?めっちゃ怖いだろ?」

「やることがケチ臭いなぁ。そんなケチばかりだから、リアルでも悪質な転売ヤー問題が産まれるんだよ」

「ははっ、結華ちゃんは歳の割に賢いことを言うなぁ」

「そりゃそうよ。一世みたくアニメにゲームにマンガばっかり見ているお馬鹿さんじゃないもん」結華は威張って言ってみせた。

「おいおい、この俺がそれだけな男なわけがないだろ。ラノベだって読んでるんだから。活字に親しみまくりの男だぜ」


「それより権之内ぃ。これタピオカ入ってないし、温かいんだけど」結華は手にしたカップの中身について語っている。

「当たり前だ。そいつはただのミルクティーなんだから」

「タピオカミルクティーを飲ませてくれるって言ったじゃん」

 権之内がギャルの群れに突っ込んだ時、昨今のギャルの釣り文句として「タピオカ一緒にしない?」のセリフを用いたのだが、友人の妹が釣れたことでそれもちょっと変わってきた。


「あんなブヨブヨした玉なんて別になくてもいいだろ?」

「そのブヨブヨが美味しいんじゃん、流行のフロンティアなんじゃん」

「だいたいなぁ、あんなブヨブヨが沈んでいるだけで、なんで紅茶があんなに高くなるんだよ!というわけで、唯の熱いミルクティーで我慢しなさい」

 これは小遣いの少ない権之内のおごりだった。


「分かってないなぁ。中毒性あるブヨブヨ感が現代ギャルにとっての至高なんだって」

「妹よぉ、お前こそ分かっていない。ブヨブヨした食い物のテッペンはホルモンなんだから、ブヨブヨしたいならホルモンでも焼いて食ってなさい」

「いいなぁ、私もホルモン好きだよ」笑顔でみっちゃんも話に乗ってきた。

「まぁその代わりだけどさ、今度海にイカを捕りに行くから、その時は土産に持って行ってやるよ。ブヨブヨよりもクチャクチャ寄りの食い物だけど、上手いし美容効果もあるぜぇ。まなみさんみたく美魔女を極めろよ」

「人の親を名前で呼ばないでよ」

「いいじゃん。呼ぼうよ、素敵な名前!」


 目の前の男女5人が集まってする話が実に平和、そしてアホっぽくもあることを受けて、それまで黙って聞いていた勇は遂に口を開くのだった。


「おい、もうその変な物はしまえや」

 変な物とは一世がゲットしたカプセルトイの一群のことである。


「お前ら、よくも普通のノリで箸にも棒にもかからない謎トークをまったり続けられるよな」

 一同は勇に顔を向ける。自分達のこれまでのマイペースな行いに対して、これといった疑問を抱いていないことが客員の表情から読み取れた。


「まず妹の結華。ここへ来て唐突に登場した結華についてスルーなのか」

「そりゃ、結華ちゃんのことはへその緒が取れ立ての頃から知ってるし」勇の幼馴染の一世が答えた。


「そうだな、俺はもう少し大きくなってから知ったけど、それでも随分前のことだから今更だよな」権之内もそこそこ前から妹のことは知っているので不思議に思うことはない。

 

 ここでウンウンと頷きながら結華が口を開く。

「そうね、この私が登場するまで一体何話、何万字待たせるんだって話よね。私の登場が遅すぎる。そう言いたいんだねお兄ちゃん」

「いや、ちょっと違うんだけど……」


「まぁ結華のことは良いとして、この羽根の生えた謎の女のことはどう処理すんだよ。こんな目立つ格好をして普通に喫茶店でお茶してるとかおかしいって!」

 勇が指差した先に座る羽根ある女は、優雅にレモンティーを啜っていた。カップを置いた女はゆっくりと口を開く。


「あら、羽根はお邪魔かしら。そういえばコレがあると普通に狭いわね」と言うと女神は羽根に触れる。

 羽根は背中から直に生えているわけではなく、装着型のアイテムだったので、簡単に外すことが出来た。外した羽根は、女が開いた謎の異次元ゲートの中にしまわれた。その後女はまたレモンティーを堪能する。そんな彼女には後光が差していて、背中にライトでも背負っているみたいにピカピカ光るのが勇には鬱陶しいのだった。


「お前、今の謎の空間を出したのは、ゴライアスと同じ……異世界野郎だな?」

 勘の良い勇には謎の女の出どころの察しが付いた。


「ふふっ、さすがゴライアスはじめ雁首揃えて働きの悪い老人達が決めた勇者」

 羽根をしまった女は立ち上がった。


「御名答。この私も異世界よりの使者よ。もちろんあなたのことも知ってる。今日、私がこんなうらぶれた街に舞い降りたのは、他でもないあなたを探してのこと!この女神セピアが、直々に勇者に会いに来てやったのよ!」

 女は聖なるその名を口にした。同時に一層後光の明度が喧しくなった。


 身分を明かした女神を前に勇が放った一言がこのような失礼なものだった。

「眩しっ!お前、その光なんとかしろっ!」

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