第三十話 ラーメンでキャッホー!
「であるかして、地球はフラッシュコブラシティで味わえるナガチョウバニュルスに酷似したラーメンなるグルメは、醤油、味噌、豚骨、塩からなる多種多様な汁に浮かべた細き刻みし小麦粉を味わうものであり、その味はどこまでもワンダフォーなものに他ならず、ゆえに自国の民から愛され、ソフルフードの栄誉を勝ち取ったと……」
「それよりもゴライアス、肝心な勇者召喚のことはどうなった?」長老が尋ねた。
「え、勇者ですか。はい、ヤツをこちらに招くのは、どうしても長きミッションとなりそうでありまして……長老方の望む成果報告を申し上げることが、一朝一夕ではかなわない状況でありまして……」
「だが、グルメリポートは流暢にやってのけることが出来ると」
ここで、天界会議に参加した一同は笑いをあげた。
「ええ、まぁ、グルメの味わいを伝えることは得手としているのですが、いやはや情けない限りでございます」
ゴライアスのグルメリポートを聞いた会議参加者達は、ラーメンを想像して涎を垂らしていた。
「おい、ゴライアス。そのラーメンとかいうのは、そんなに美味しいものなのか。話を聞けば、ナガチョウバニュルスにはない深き味わいがあるようではないか」
「それはもう。向こうの人間達は、こちらの世界よりも味付けの濃い食べ物を好んで食すようでして、面白い味も多種類あるのです」
「うひょ!そいつは良い!ここのところ、カミさんの料理の味付けが薄くってさ、濃いものを食したいと思っていたのよ。まぁ怖くて味付け変更の指摘が出来ないんだけどな」ゴライアスから見れば十分におっさん、しかし会議に集まった者の中では比較的若手が言った。
「ふふっ、そうでしょうそうでしょう。皆さん、楽々とは程遠い重責を追う立場の方々だ。そんなお仕事の中でカロリーを著しく消費すれば、味付けの濃いもの、そう丁度ラーメンのようなものを欲っして然るべきでしょう」
ここでゴライアスは、会議の場に持ち込んだ大きなバッグの蓋を開けた。
「さぁさぁ皆様、これはお土産です!」
ゴライアスが持ち帰ったもの、それはカップラーメンだった。これを目にして一同、一時老いを押しのけて元気な歓声を上げる。
「なんだこれ?丸い器にカラッカラの何かが入っているだけではないか。ゴライアス、これを食うのか?汁がないぞ」
カップラーメンを初めて見る長老達の中には、乾いた面をバリバリ食べている者もいた。
「ふふ、いいですか皆様。フラッシュコブラシティに暮らす人間には、何かと忙しい者も多いのです。たっぷり下ごしらえして作る本格料理もそれは良い。しかし、それを行う時間がない者達は、料理を簡略化してさっさと飯を済ませ、それから他の事をしないといけない。そんな忙しい人間達が、時間を超越するべく発明したのがコレ、インスタント食品です!」
「なに?しっかり話を聞いたがよく分からん。ゴライアスもっと説明を」
ジジイ共にはしっかり説明をしないと、新しい文化や発明と付き合うことが出来ない。だからゴライアスはしっかり説明する。
「ふふっ、いいですか。ここに熱き湯を注ぎます」ゴライアスは水筒に入った湯を乾いた麺にかけた。
「しばらく待ちます。するとホラ、麺は解れ、予め入っていた粉末が湯に味をつけ、美味しい汁になります。これを箸ですすれば、美味しくラーメンが味わえる、ということになります」
「スゲェ!!!」老いたお偉方は、年齢にそぐわぬボリュームで驚愕の声を発した。
ネオゴチャラティ、そしてそれを統括する天界にもこのようなインスタント食品の文化はなかったのだ。誰もが初めてカップラーメンを見たのだ。
「さぁ皆さん。慌てずともその乾いた麺は、乾いたままそこにあるだけで逃げはしません。給湯室で順にお湯を汲んで味わってください」
老いた軍団は、列を作って給湯室へと駆け込んだ。
「ふふっ、あんなに歳を取っても、新しく美味いものに出会えば、まるで子供のようにはしゃぐのだな。やはり美味い食事は良い。人々を活気づかせる」
美味い飯は人々を幸福にする。それはあっちの世界でもこっちの世界でも共通の価値観だった。ゴライアスはそのことを深く実感しながら、麺をすするジジイ共を見ていた。
今日の報告会はこれにて終わりである。




