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第二十六話 キャッチャーミットに見る特別感

「いや~刺された刺された~。ほんと、良く刺すよね。真夏の荒れたアシナガバチかっての」

 一世はへらへら笑いながらベンチに帰ってきた。

「おかえり一世君。早いおかえりだったけど」

 みっちゃんは笑いながら返す。

「お前なぁ、リードがデカすぎるんだよ。よくあれでイケると思ったな。あと『リーリー』うるさいんだよ」

「いや~面目ないね勇。しかし、なにかと事を先走ってしまう若さの衝動が、俺の体を一塁から遠ざけ、なるたけ速く二塁を目指す準備に入ることに待ったをかけないんだよ」

「訳の分からんことを言うな。そこに抑制をかけて行うのが団体競技だろうが」

「ふふっ、それもそうだ。しかしピッチャーもビビったことだろう。こんなのが一塁にいられると、きっと怖いだろうな。もう二塁を盗む気満々だったからな。よし、次はきっと盗んでやるぞ。『ダイアモンドの盗人』の通り名に恥じぬ盗みを行わないと」

「うるさいよお前、それただの宝石強盗だろうが。それにそんな通り名はついていない」

 一世は調子よく出塁したものの、調子をこいて盗塁リードを取りすぎため、ピッチャーの牽制球であえなく散ったのである。そしてなんだかんだで一回表は無得点に終わり、次はキングスエヨシーズが守備に出る番となった。


「おいお前ら、漫才してないでさっさと守備に出ろ。攻撃が終わったら速やかに守備に出る。これが野球マンのマナーだ」

 キングスエヨシーズの主将スエヨシのオヤジは、勇と一世に野球マンの美学を解く。

 これに対して勇は「野球マンってなんだよ」と思ったが口にはしなかった。


「いいねぇ~、ここは良い。マウンドは気分を大きくさせる。滾るなぁ~」

 同じグラウンド内でも、こんもりと土がもられたマウンドに立てば、他の者よりも目線がやや高くなる。人よりも高い位置にいること、それに満足感と高揚感を示す権之内だった。

「よ~し、四捨五入すれば一心同体の関係だ。相棒、練習球は無しでいきなりイケるよな?」

「いや、練習来いって!それに、どんな粗い計算でお前と俺が一心同体になるんだ。バカかお前」

 バカの戯言に相変わらず荒くツッコむ勇は、権之内に向かってグローブを構える。ここに一球投げ込めという合図だ。

「おい、キャッチャーミットはどうした?」

「それが見当たらないから、適当にそこらにあったグローブで対応している」

「あれ、ミットはちゃんとあったのにな~」と言いながら権之内がサードを守るゴライアスを見てみると、ゴライアスの手にはキャッチャーミットがはめられていた。

「おい転校生、そいつはミットだ」

「へぇ?どいつ?」

 グローブのこともミットのことも、もっと言えば野球のルールさえも知らないゴライアスだからこそ、こんな惚けた返答になった。

「おい、ゴライアス。こっちと交換しろ」

 勇が三塁方向に歩み寄る。

「えっ、なんで?いいじゃんコレ!コレだけ特別感がして何か格好良いじゃん」

 ゴライアスは空いた方の片手でミットを抱くような格好を取り、譲らない意志を示す。

「バカだなお前は。見た目の格好良さがどうのこうのって世界じゃないんだよ野球は。キャッチャーは誰よりもしっかりキャッチするのが仕事なんだから、しっかりキャッチ出来るそのミットじゃないとダメなんだよ。いいからホレ、よこせ」

 そう言って勇は自分のはめていたグローブをゴライアスに差し出す。そして空いたもう片手も、ミットをここに置けという意味をこめてゴライアスの前に出した。

「え~僕はこの特別なヤツをはめて戦うよ。なにせこの僕は、誉れ高き特急勇者派遣大使だよ。他の者と同等じゃダメダメ、特別な存在なんだから」

 うざい。勇はそれだけ思った。

「お前なぁ……文句言うならもう異世界に帰れ!」

「それじゃ君がついてこいよ。君が一緒に来るって言うなら、本当にものの二.三秒でここから消えてやるよ」


「おい、なんか向こうのガキ共揉めてるなぁ。先生、あんたが教えてるガキ共でしょ?」

 龍王院散財ズの主将マサカドが担任に言う。

「はぁ、そうですけど……と言っても、片方にはまだ何も教えたことはありませんが。なにせ転校ほやほやでして」

「だったら初の教えは課外学習だ。試合マナーを教えて来なさいよ」

「はい、直ちにゲームが再会出来るよう説得してきます」

 担任はベンチから三塁に駆ける。

「まったく、先生になってもアイツは相変わらずだな。いつも退屈の外だ」

「そうですねボス」

 ボスとイケさんは、生徒の揉め事を仲裁しに行く担任を見て朗らかに笑っていた。

 今日もフラッシュコブラシティは平和である。

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