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第十一話 学級に吹き込むは異世界より吹きし風

 新入りのゴライアスのことを他の皆より先行して知っているということから、勇は担任よりゴライアスの世話係に任命された。ゴライアスは、勇の前の席に座ることになった。


 1時間目が終わった後の休憩時間、ゴライアスは体をくるりと反転させると後ろ向きに椅子に座った。椅子の背もたれ部分に肘を突き、ゴライアスは後ろの席の勇に話しかける。


「ねぇねぇ勇、抜き打ち転校にどれくらい驚いた?」

「馴れ馴れしい奴だなお前は。驚いたってよりもムカついたよ。スゴくな」

「はっは~そりゃ馴れた関係になってなきゃダメな二人だもの。僕たちは一蓮托生の関係さ。ムカつこうがなんだろうが、僕は君をサポートし、君は気持ちよく僕のサポートを受ける。無論勇者としてね」

「だから、なんでお前がこっちの世界に来て俺の日常に入り込んでいるんだ」

 勇はイライラして話し、ゴライアスは新鮮な日常に舞い上がっていた。


「長老達と話し合った結果、勇者を元の世界から呼び出すというのに、あまりにもその世界のことを理解していないって話になってね。そこから転じてお前も勇者の元いた世界を学んで来い、勇者と同じ世界を生き、心を重ねることで信頼関係を結ぶべしってことになったんだ。まぁ分からないでもないよね。これから君を連れて行こうとする先は、君にとっては異世界だ。知らない世界に引っ張られるのは嫌だよね。で、僕にとっても勇のいるこの世界は異世界なんだ。まずは僕が学び、君に寄り添うことで打ち解けようって訳だ。どう?紳士的な物事の進め方だろう?」


 やっている事が回りくどく、よくよく考えると意味が分からん。と思いつつもその一方では、こちらを理解し己をも理解してもらいたいという真摯な態度も見えるかことから、たくさん怒るのは気が引けるとも思う勇だった。そして当たり前のように名前を出した長老とは一体どこのどいつなんだとも思った。


「う~ん、お前に仕事があるのは分かるが、俺は興味がないんだ」

「いいんだよ勇。今はこの世界を、そして君を、いや勇者を学ぼうって段なんだ。前にも言ったよね。こっちとあっちでは時間の流れが違う。猶予は結構あるんだ」 

 

 意味深なのかはたまた妄言なのか、どちらにせよ謎な会話を行う二人の周囲には、何か異質な雰囲気が漂っていた。こんな話をクラスの中で臆面もなく行う二人に集まる視線は少なくないものだったが、二人は別段気にせず二人の世界で話を続けるのであった。


 ただでさえ物珍しい転校生な上に、言動が常人のそれとは異なるということから、ゴライアスは転校初日にしてクラス内で目立つ存在として皆に一目置かれることになった。そこに躊躇なく接する勇もまた同じ扱いである。

 ゴライアスの登場により、クラスに新しき風が吹いたことを誰もが感じるのだった。


「あっ、ゴラちゃん。そういえば今日はしっかり全身を出しての登場なんだね」

 陽気なヒロインのみっちゃん話しかけてきた。


「ああ、そりゃそうさ。というか、こちらの世界で上半身だけ覗かせて出回るのはやめろとも長老達から言われたんだ。そんな訳でこれからはちゃんと足まで見せて君たちと関わろう!」

 ゴライアスは席から立ち上がり、勇とみっちゃんに全身をアピールした。


「いや、ていうかみっちゃんのゴラちゃん呼びはどういうことなんだ?」

 異世界人と幼馴染の距離感が一気に縮まったことに引っかかりを覚えて勇が問う。


「うん、ゴライアスって名前、長いと思うの。だから短縮形にしたってだけの話」

 バカでも分かるよう簡潔に答えるみっちゃんだった。


「というわけだ。勇もちゃん付け呼びしてくれて構わんよ」


 長ったらしい何かしらの名称を縮めて呼ぶこと。これは忙しく青春を生き抜くギャルにありがちな習性の一つである。

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