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第十話 押さえておこう!転校生の心得

 問おう、転校生とはいつ頃やって来るものだろうか。


 それまでの青春の拠点を離れ、また新たに青春の拠点を構える。転校生にとっての転校とは、このような大きな意味を持つ。

 既に出来上がった在校生の青春の拠点に、他所から来た者として居場所を分けてもらったり、時には図々しく侵略したりするなど手段は様々あるが、とにかく転校して来た者は自分の拠点を確保しなければならない。


 それを行う際、学級の結束の強い場所に潜り込んで行く程、拠点の設営は難しくなると考えられる。苦労の末、確かな結束による強固なコミュニティを作り上げた者達からすると、その調和を他所者に掻き乱されることはあまりにも痛手となる。


 だから古参の者は、新参の者を厳しく品定めしがちである。いや、そうして然るべきなのだ。新たな協力者か、はたまた侵略者になりえる脅威なのか、最初の段階でしっかりと見極めておかなければ、後々自分が痛い目にあうこととなる。のかもしれない。


 以上のことを踏まえ、在校生は転校生に、転校生は在校生に、共に慎重に向き合うのである。双方にとって良き第一印象を与えることは重要なことだ。

 赤ん坊に毛が生えた程度に思って学生共を甘く見てはいけない。彼らは彼らなりに、閉塞的な狭きコミュニティの中で神経を研ぎ澄まし、日々思考して生きているのだ。ここで得た全ての経験が、社会に出てからの処世術の完成に繋がるのだ。


 では、最初の問に戻ろう。転校生とはいつ頃やって来るのものだろうか。


 それまでの青春を一旦リセットして新たな地でやり直すのだから、本人のことを思えば学生時代の早期、または中盤に行うのがベターなりベストだと言えよう。そんな転校をそろそろ青春のピリオドが一旦打たれる段階が近づいた高校3年生の9月に行う者などどうかしているとも思える。


 家庭の事情などによりタイミングの決定は必ずしも個人の意志で行えるものではないが、それにしても3年の二学期は遅い。ここからクラスに馴染むのは至難の業である。だがそれを行うのが、勇者召喚の任を双肩に担う天界のエースゴライアス・ダライアスである。

 ゴライアスの辞書を隈無く捲ったところ「不可能」の三文字は確認出来なかった。それが無い以上、何でも可能にするのが彼の性分であり才能であり、今回の場合にはミッションにもなっている。


 では、転校生の心得をたっぷりとマスターした上で学園に乗り込んだ彼のその後を覗いてみよう。



「こんにちは。今日からこのクラスの仲間に加わるゴライアス・ダライアスです。かつて人の心には、生まれた世界と人種の壁があったでしょう。だが僕はそれを破壊し終わったと信じています。この日本はフラッシュコブラの地に暮らす現地の皆さんと仲良く手を取り合い、共に青春の汗と涙を流しながら卒業までの日々を過ごしたいと思います。何かと迷惑をお掛けすることもあるでしょうが、そこは笑ってこらえて流して最後まで仲良くお願いします」

 学校入り10分前に考えた言葉をハキハキと喋ってゴライアスは転校の挨拶を終えた。


 クラス中が彼を見ている。ただでさえ珍しい転校生、その上パッと見て外人。新天地で知らない者を前にしてもダラダラ喋る肝っ玉の強さ。そして整った彼の容姿も在校生の目を引いた。


 教室内全員が着席している中、在校生の一人が勢い良く立ち上がった。


「ブラボー!ブラボー!素晴らしきグローバルな心得!ゴライアス・ダライアス、間違いなくお前はこのクラスの33人目の仲間だ!」

 立ち上がった在校生は拍手をしながら歓喜の言葉を吐く。胸の前で行う普通の拍手でなく、左頬の側で行う気取ったタイプの拍手だった。そんな彼の拍手に続き、他の者も拍手を始め、クラス全体が拍手に包まれた。これを受けてゴライアスはご満悦だった。


「いやいや上手な自己紹介だったよ。先生も感動したなぁ。というわけでゴライアス君は故郷がだいぶ遠くて……えっとブラジルよりも……」

「もうちょっと遠いところです」

 担任が言葉に詰まったところで、ゴライアスは調子よく言い足した。


「そうそう、それくらい遠くから来た新しい仲間なんだ。文化の違いとか色々あるだろうけど、残り少ない学生生活を仲良く送って欲しい。それから仲間と言えば、前田くん」

「はい、先生、なんでしょう!」 

「先程君が33人目の仲間と言ったけど、このクラスは転校生の彼を覗いて全部で36人いるからね。勝手に数名の仲間の存在を消さないように」

「てへぇ、うっかりミスでした。じゃあゴライアスは37人目の仲間ですね。いや違うな、先生も頭数に入っているのだから、38人目ですね」

「ははっ、嬉しいね。じゃあそういうことで朝のホームルームを終わります」

 担任はホームルームを終えると教室を去った。

 

 ホームルームが終わると、転校生の周りに人が集まる。珍しいものに群がる野次馬精神もあり、快く仲間を歓迎する証を見せるためにも皆はゴライアスを囲む。そんな人集りを我らが勇者神名勇は怒りの眼差しで見ていた。

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