異星人の不法を取り締まる捜査官アルの事件簿
X1「異星人嫌い」
ブラックバンによる大規模自然災害により、宇宙の星々の数は急減した。
地球も例外ではなく、形は保ったものの生命や自然に甚大な被害をもたらした。
それからX200年後
半数以上減った生命体も繁殖し、経済を築き、人類も生活できる環境を戻した。地球の保安性を知った異星人は移住計画を試みた。
ある日、環境省に異星からの通信があった。地球の復興にもなると考えた環境大臣は移住を認め計画に賛同した。
しかし、異星人の数が予想を大きく上回り、各所に設けた税関は常に満員だ。
人員不足で検査が甘くなってしまい、不法入星を許してしまう事も少なくなかった。
そこで政府は、不法に入国した異星人を取り締まるための特別捜査課「Watch」を設立。普通の捜査とは異なり未知の危険が予測されるが、給与3倍という報酬を耳に自ら移動を志願する捜査官が増えていた。
右腕義手の女性捜査官アルもその1人だ。
異星人の出店が多く並ぶ繁華街「ブラッドタウン」
ピンクとブルーの電子看板の光が交差し、本来の色を忘れるくらいに照らされた繁華街に一軒のバーがあった。黄色の縁取りに赤いネオン文字で「hide」と書かれた文字が雨上がりの水たまりに反射し、まるでその中にももう1つの世界があるかのように煌めいていた。
店内のテレビでは、「環境省ハリソン議員賄賂疑惑」のテロップと表示され、マスコミに囲まれたハリソン議員が猛攻撃を受けていた。賄賂疑惑のタレコミがあったため、スキャンダルを食らうマスコミの猛攻があったのだろうか、目元は黒く頬は痩けていた。
ステンレス製の長方形のカウンターでグラスに注がれたウィスキーを飲み干し、ニュースを見ながら小さく笑う者がいた。
ブロンドショートで右側のこめかみに逆三角形の刺青が入っている奇抜な頭部。両側の袖が切られた黄色い軍服から見える義手。「Watch」所属捜査官のアルだ。
酒瓶が並ぶ向かい側にバーテンダーの姿は無く、客もいない。
アルの足元に黄色い軍服を着た大柄の男が額から血を流して倒れていた。
どうやら「Watch」所属捜査官のようだ。