小説家
年の瀬が迫る 29日。
まだ昼前の喫茶店は かなり席に余裕がある。
中庭が見える窓辺のテーブル席に一人で座り、ホットサンドとブレンドコーヒーを頼む。
妻は仕事で、一人の時間である。
注文を待っている間に、スマホを開いて 調べてみたいことがあった。
「携帯小説 」
そう検索すると、一番上の結果に『小説家になるっ!』というサイトが出てきた。
深く探すまでもなく、あっさりみつかるものだなと思いながらサイトを開いてみる。
一目みてわかったが、ここは 小説やエッセイのテキスト作品を誰でも投稿出来るウェブサイトである。
掲載される作品数はかなりの数で、
ここでの投稿がキッカケとなって、出版社から書籍化されたりコミック化されることもあるというように書かれている。
・・映画化を目指してみるか・・、
・・・・・・、
サイトのトップページには “人気作品”のランキングが表示されている。
投稿作の傾向を掴んでみたい。だが、
どれもこれも 異様にタイトルが長い。
「□□□な□□□が□□□□□したら□□□□になった」
とか、
「〇〇の〇〇が〇〇〇〇した〇〇〇〇の件」
とか、
「××が×××で×××××なのだが××××だった。でも××××は××××だと思う。」
とか、
ライトノベルの表紙でよく見かける文法だ。
適当にタイトルを開いてみる。
「俺は △△△。この国の貴族の末裔・・・、
今俺はこの世界を支配する魔物と戦うために・・・」
・・・・・・、
「幼馴染の女子に呼び出されて いいものを見せてあげる!と言われた・・・ 次の瞬間 ボクと彼女は異世界に・・・」
・・・・・・・・・、
どの作品も“貴族”とか、“王国”とか、“魔獣“とか、“錬金術“とか、そんな単語が多い。
このサイトの主流は どうやらファンタジー作品らしい
ここで 地味な現実の話を書いて載たせところで、
このサイトの読者層に興味を持たれそうにない。
たが、それくらいが気楽である。
人知れず書いて、はるかだけに読ませられれば、それでよいのである・・・。
・・・人気が出すぎて 映画化のオファーとかが来ても困るしな・・・ないか。
そんなありもしない心配をするボケとツッコミを一人で妄想しつつ、
テーブルに出された熱々のホットサンドに手をつけながら、
ユーザー登録 のボタンを押して、小説家の一歩を 踏み出すことにした。。
この物語はフィクションです。まじで!




