年末14
「こないだの金曜日、職場でさ」
そう切り出す頃、こめちゃんは はるかの足元で丸まって眠ってしまっている。
「ん?なに?」
「・・はるか、髪をしばってたでしよ」
「んー、そうだっけ?」
「・・・そう、廊下でみかけて。ふとさ 『誰かの好みに合わせてるのかな』なんて思っちゃってさ。ほら、金曜に予定あるって言ってたから」
「いや、全然覚えてないけど、髪が跳ねてたとかじゃないかな?」
「ま、そうか。そうだよね。」
もちろん、その理由を聞きたい訳ではない。
「・・・・・・なんかさ、栗原さんの事もあるけど、はるかにもそんなことを思った自分が、すごい嫌で・・」
はるかの目を見ると、いつもの表情で聞いている
「モヤモヤしたままでいたくなくてさ、金曜日 課長たちと飲んだあと・・・どうしても誰かと話したくて、」
「なに、、まさか、りっこに電話したんじゃないでしょうね?」
「いや、してないしてない。」
すると、はるかは 薄い笑いを浮かべて私の目を見ながら
「・・なに?おねえちゃんのいる店にでも行った?」
この話の流れならば、まぁ誰でも思いつく答えだろう。
しかし、いざ図星つかれると言葉に詰まる。
「・・・そう。」
はるかの笑顔が さきほどまでよりも強くなる。
「へー、なに?キャバクラ?どうだった?!かわいい子いた?」
「・・・いや、別にそんな期待をして行ったわけではないけど・・・。でもさ、たまたま付いた人がさ、栗原さんにすごい似てて、ビックリした。しかも名前まで同じで・・・、」
「へー、よかったじゃん!もうその子と遊びなよ」
それで私の気がおさまると、思われているのだろうか。
だが、スパッと打ち返す言葉はすぐには出てこない。
「・・・とにかく!休み中 りっこに連絡しちゃだめだからね!初詣行こうとか誘っちゃだめだよ!」
時間のせいなのか、急に話を切り上げるようにはるかが畳み掛ける。
「わかったわかった、しませんよ・・」
「ほんとかな~・・・」
いつかにも見せたような 疑いの目つきで、
はるかはわたしをみつめる。
「じゃあ、モヤモヤしたら 気持ちを整理するために、小説でも書いてみたら?」
また適当そうなアドバイスを言い渡してきた。
「ほら、昔 流行ったでしょ、モバゲとかのケータイ小説」
読んだことはないが、そんな流行もあったようなきはする。
・・・小説ね、気が向いたら・・・。
・・・・・・。
そうこうして、席を立とうとする帰り際。
先ほど買ってきたお土産の事を思い出して はるかに袋を手渡す。
「これ、ちょっと遅いクリスマスプレゼント」
「あら、ありがとう!・・・でも・・余り物・・?かな・・?」
断じて違う。
だが、わざわざ買ってきたと言うのも
気恥しいし 気重にもされたくない。
「・・・どうかな?ご想像にお任せします」
言いたいことを言わないと、後でまた後悔すると分かっていながら、
そんな最低な返し方しか出てこなかった。
「じゃあ、きっと余り物だな!」
悪意のないであろう はるかの一言が、
心にずしりと刺さって、店を後にしてからじわじわと痛んできた。




