距離4
『すみません、ここ最近 めっちゃ忙しくて><;』
その通知が来たとき、わたしは妻を手伝って台所で家事をしていた。
通知画面をちらりと見て、スマートフォンをまたポケットにしまう。
すべての文面はよく見ていない。後でゆっくりみることにする。
・・・なんだかんだ 悲観的に思いながらも 待っていた。
返信がきたことを 喜んでいる自分がいる。
しかし、意外にも気持ちは冷静で、
まるで広告メールでも届いたかのように
何食わぬ顔をしているのは 決して強がりではない。
気持ちはプラスではない。マイナスからゼロに戻った というのが正しい表現なのかもしれない。
・・・、
おかしな誘いをしていると 心の底では自覚しながら、
自分に都合良く思いたい もう1人の自分はこうも考えている。
・・もしかしたら、栗原さんの方も
本当は なにかの機会に また話をしたいと思って
待っているのかもしれない・・・。
と。
・・・。
30分ほど経って家事を終えて ひとりになると
スマートフォンを取り出してそのメッセージ画面を開いた。
だが、
『すみません、ここ最近 めっちゃ忙しくて><;』
先程、通知画面で目にした以上に、
栗原から続けられた言葉はなかった・・。
こちらの複雑に絡まった感情に対して、
相手から与えられた言葉はシンプルだ。
シンプルすぎて、逆にどう読んで良いのかわからない。
「すみません」と 栗原さんは何に対して謝っているのか。
返信が遅くなったことに対する謝罪の言葉、
とも受け取れる。そう、受け取っておきたい・・・、
「忙しいみたいだね!
落ち着いた頃に、と思ってたけど・・・!」
そう送信してしまってから、
続ける言葉に迷った。
わたしは、わかっている。
本当はちゃんと、栗原さんの気持ちを
わかっているのだということを、伝えたかった。
「ごめんね、もう誘われたくないんでしょ笑」
自分の力で割ろうとした殻は、
力づくで大きなヒビを入れた結果、
自分に激しく突き刺さってきた。
吉崎、またやってしまいました。
もう どこまでも憐れですね。
みていられません。
この物語はフィクションです。




