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偶然
また、ため息をついていた。
そんな時、オフィスの廊下を一人で歩いていると、
顔馴染みの取引先の 年配の会長が、曲がり角から現れて こちらに歩いてきた。
長く取引のある会社で、社内では有名人だ。
「会長、お久しぶりです。いつもお世話になっております」
こちらからそう挨拶すると、会長は何気ない世間話をするような口調で わたしに話しかけてきた。
何を話すかと思いきや、
「栗原さんは、いまどこの部署にいるんでしたっけ?」
なぜ、今のわたしにそれを聞くのだ。
わたしの顔に 栗原の名前でも書いてあるのか。
「栗原は 今は総務課の方におります。」
何でもないように 明るく笑顔で答える。
だがそんな偶然が 気持ちをさらに落ち込ませた。




