想い出話1
高校2年生の初夏。
部活の後輩である一年の女子 杉山から突然の恋愛相談をされた。
「わたし、阿久津先輩のことが好きなんです」
街路樹の新緑が柔らかい日差しに照らされる、土曜日の部活の帰り道。
住宅街にある彼女の家の前で自転車を止めると、真新しいセーラー服姿の杉山が わたしの目を見つめて 真剣に訴えかけてきた。
「先輩に付き合ってる彼女がいるのは知ってるんですけど、どうしたらいいかわからなくて・・」
わたしのいた部活は放送部。
放課後はいつも放送室で過ごしていた。
杉山が阿久津といて楽しそうにしているのは、みんな気づいていた。
阿久津とは同級生。
彼とは高校で初めて会い、技術好きの志向が一致して 一緒に部活に力を入れていた。
そして2年目となり、後輩が多く入ってきた。
杉山は入部して最初は とても大人しい印象の子であった。
放送室で他の後輩グループがおしゃべりをしている中で
部屋の隅に置かれた扇風機に向かって座っているのが 印象的だった。
杉ちゃんは扇風機がお友達なの? まわりにそんな言われ方をされていた。
そんなだから、私なりに少し気にかけていた。
阿久津とわたしを含めた男子3人は、杉山と帰宅の方向が同じだった。
杉山の家は 途中で分かれ道になるので最初のうちは そこで解散していた。
だがある時、わたしの提案により 少しだけ遠回りになるが 杉山の家の前まで皆で送っていくことになった。
わたしにとって 初めての後輩。年下との付き合は少し不慣れだったが、皆のコミュニケーションの きっかけを作るくらいはできた。
一方、阿久津には小学生の妹がいたので 年下の扱いには慣れているようだった。
彼が交際をしているのも、中学の時の放送部の後輩の子ということだった。
そして阿久津には 私にはないユーモアもあった。
それまで一人でいた杉山は、わたしたち3人と関わるようになると どんどん変わっていった。
活動にも積極的に参加するようになり、放送部の仕事を覚えていった。
最初の印象とは対称的に 杉山は仕事を覚える筋がよかった。
積極性もあったから こちらとしても教えがいがあった。
放送部の活動は、ひとつの映像作品を作るために 取材や編集作業があり、メンバーで長い時間を過ごす。
取材は顧問の車に乗って校外行くこともあるので、高校生にとっては皆でドライブをするような楽しさもあったし、編集作業は夜遅くまでかかることもあるから、参加するメンバーだけの特別な時間であった。
しかし、杉山が活動に積極的に関わることは
彼女が他の後輩グループから僻みを受けることにもつながっていた。
わたしは、他の後輩たちの声もまた直接聞かされていたので、杉山に対して 複雑な想いがあった。
杉山が阿久津と一緒にいる時、特に楽しそうにしているのは なんとなく感じていた。
さらに、他の後輩たちも そんな推察をわたしに耳打ちしてきた。
阿久津は優しいので、好意を持たれるのは理解できた。
だが 、部活の場で人間関係の問題にとらわれたくない気持ちもあった。だから、阿久津の振る舞いに やや気を揉むこともあった。
・・・・・・、
杉山の訴えに、わたしは言葉を返した、
「そうなんだね、応援するよ。」
恋をする乙女に対して、
16歳のわたしは ほかに返す言葉をみつけられなかった。
なんだこの流れ・・!回想はいるんかい!!
はやく完結させたいのに、おわらない!




