さまよい
終電より少し早い電車は、並んで座ることができるくらい空いている。
会話をしているうちに 最寄り駅に到着した。
改札を通り 駅前に出ると、目的のビルが目に入る。
古びた二階建て。外壁には飲み屋の看板が何枚も掲げられている。
しかし、どうも様子がおかしい。
「・・・あれ?・・・閉まってる?」
二人でビルの方に近づいてみると、建物の入口のシャッターが 、半分降りていることがわかった。
シャッターの下から覗くが、中に見える店はどこも暗くなっていて、
どうやら今夜の営業は終えたらしい。
「まだ11時過ぎなのに!」
「早いなぁー」
甘く見ていた。
どうしようか。
せっかく、もう一軒 という流れだっただけに、あきらめきれない気持ちになる。
「どうする?」
「どうしましょう、帰りますか!?」
「んー、せっかくだし地下鉄の方に行こうか」
ここから歩いて10分ほどの距離に 地下鉄の駅があり、
そちらには深夜も営業する飲み屋がいくつもある。
「えっ 行くんですかー?笑」
ちょっと強引かもしれない、でもこのまま帰りたくはなかった。
「あんまり連れ回したら、栗原さんに嫌われちゃうかもしれないけど! せっかくだから、もう一軒行きましょうっ!」
「わかりました!行きましょう!嫌わないですよー!」
・・・もしかして、この時 栗原さんは 駅前の店が早く閉まることを知ってたんじゃないかとか、
本当はそのまま帰りたかったんじゃないかとか、
そんなことを考えるのは、だいぶ後になったからである・・・。
寒さを感じ始める秋の深夜。
誰もいない暗い道を、賑やかな明かりの方へ 並んで歩く。




