心外な言葉
「はいはいー、どうぞー」
あの日以来久しぶりの連絡である。
何事かと思いつつ、たぶん仕事のことだろう。
携帯番号を送るとすぐに着信がきた。
「久しぶり。ちょっと聞きたいんだけど、リモートで社内入る時ってさ…」
やはり仕事のことに違いなかった。
かといって、特になんの感情も湧かない。
問い合わせに対応して聞かれることを教える。
これが、元通りの日常のやりとりである。
一通り仕事のことを説明し終えたところで、
「ところで最近は、悪さしてない?」
いきなり失礼な物言いをされるものだ。
さすがにカチンと来て、少し声を荒らげたくなるが
在宅なので、感情的になった声を妻に聞かせるわけにもいかない。
低めのトーンで、仕事の口調で
「はい、大丈夫ですよ。」
と返す。
「ほんとに?連絡したりしてない?」
「ないですね、はい」
カマをかけているのか知れないが、
あの日以来、こちらは全て振り切って、
疑われるようなことはしていない。
「そう、じゃあ、まぁ信じてあげるか」
一体、どう言う立場のつもりでそんなことを言うのだろうか。
害悪の男から後輩の女子仲間を守る
”正義のお局様”にでもなるつもりなのだろうか。
まぁ、好きなように思って、好きなように正義役として振る舞えばいい。
今の自分にはもう関係ない。
だが あまり冷たくあしらうと、今後の仕事の関係にも影響しそうなので
あくまではるかには逆らわず、従順であるように応えなければいけない。
無下にしたりしないよう、話題を変えて
近況の雑談を少ししてから、電話を切る。




