夕焼け
・・・・・・向井は、栗原のことが好きである。
仲間内では公に、時に冗談めいて言われていることではあるが、
向井の仕草を観察すると、本気で栗原が好きなのだなと、
ただの冗談とか、話のネタとは受け取れなくなることがあった。
あれはまだ、栗原が業務課にいる頃、
栗原が帰ったあとのオフィスで向井と立ち話をしていると、
向井は何気なく栗原のデスクの方に近づいて、その椅子に掛けてある彼女のカーディガンを指先でつまみ上げて シワの拠れを直した。
またある時、飲み会の席で、料理が運ばれてきたとき、彼女のグラスをスっと移動させて テーブルの置き場所を整えた。
それは、傍から見ると ただ気の利く親切な人・・、と映るのかもしれないが
同じ男からうがった見方をすると、・・そうやって彼女の物に触れたいんだ・・・、という男の心が透けて見える気がする・・・。
それとも、親密であることのアピールなのか、実は陰で交際していることの 匂わせ・・なのだろうかと映ったりもする。
その時は たいして気には留めていなかったが、
栗原は同僚として大事なので、なにか、栗原のことを女性として見ているような向井には、
どうにも、東京で飲みに行ったことなど知られたくなかったし、その関わりも知られたくなかった。
・・・言いようによっては、向井に気にされたくなかった、同類と見られたくなかった、、という言い方もできる。
また、もしも彼を悩ませることで栗原になにか迷惑がかかることを気にした・・・、とも言える。
なーんて言って、他人の悩みまで先読みしたつもりになって、
結局のところ自分が身動き取れなくなっていたら、世話ないか・・・・・・。
他人が悩んでいようが、自分には無関係と思っていられる。
無関係であるかどうかすら考えないほうが、幸せに生きられる・・・。
何も気にせずに生きていけるものなら。
人の悩みに無関心、といえば、はるかである・・・。
・・・・・・、
そろそろ妻の仕事も終わりそうだ、
パーキングエリアから家に向かおうと、停めていた車を反転させると、
鮮やかな夕日の空が一面に広がっている。
スマートフォンを取り出して、写真におさめる。
「夕日きれいー。あー、もう疲れた。」
写真を添えて、はるかに 滅多に送らないメッセージを送ってみる。




