共感
席について2人分のビールに、唐揚げと、料理を数品頼む。
ビールを待つ間、スマホを手に取って
「やー、いま、栗原さんぽい人が 男の人といるとこみちゃったんどけど・・。この偶然すごくない?」
はるかに LINEを送る。
この驚きを誰かに言って気をおさめたい。
そうしているうちにビールが来て乾杯する。
妻は先ほどのことを特に気にしている様子はないが
「やー、たぶん職場のひとっぽかったな、」
あえてこちらから触れてみる。
「へえー、ほんとー」
と、特に興味を持たれてはいない。
そりゃ、旦那がその人のことで何ヶ月も悩んでいるとは思うまい・・・、
その話題はそこまでで、あとは特大の唐揚げと酒を楽しむだけになる。
・・・焼肉屋から駅の方向は、栗原の家とは逆方向である。男の人を駅まで送っていったのだろうか。
彼が持っていた紙袋はなんだったのだろう。札幌に来た地元の友達の買い物に付き合ったとか、何かを渡すためにご飯に行ったとか。
・・・そもそも、本当に栗原さんだったのだろうか?
それとも自分の心が、似た人をそう見せただけの幻覚だったろうか・・・。
いずれにしても、同じ場所で、同じシチュエーションに出くわすなど、
古くさいドラマの脚本でもみせられているようである。
1回目の時もそう思ったが、こんなことが現実に起きてよいものか。
・・・・・・、
「そりゃ、りっこだってデートくらいするでしょ!もうあきらめなさい!!」
はるかから、そんな返事が届いたのは、小一時間過ぎた頃だった。
そんな場面に出くわしたことの驚きに共感を得たいのだが、
驚かれるよりも先に、怒られるとは また不本意だ。
そう嘆きに思いながら 妻と酒を進めるしかない。




