131/164
鼓動
この国が、銃器を自宅に置いているような文化の国ではなくてよかった。朝起きてシャワーに入りながらそう思うことが、ここ数ヶ月のルーティーンになっている。
この重たく締め付けられるような自分のこめかみ辺りにむけて ヒキガネをひく。そんなことができるような環境ではなくて本当によかったと毎朝実感しながら 生きている。
・・・・・・、
少し遠目にみる焼肉屋から、背の高めなひとりの男性が、百貨店の柄のような紙袋を持って出てきた。
その後ろから続いて、女性も出てきた。
店の前は暗く、はっきりと見えないが、その女性の背格好と歩く姿は、この頭痛のタネ。
たまに朝、運転席から横目で見る、栗原のそれと、直感的に一致する。
自分の鼓動が急に強く、速くなる。
2人は並んで話しながら駅の方に向かって歩いていく。
私の目線の先に気付いた妻に「どうしたの?」と聞かれる
「あー、なんか今いたひと、うちの職場のひとだった気がして」
言葉だけみれば普通の会話である。
走って追いかけるわけにもいかず。かといって気にしないこともできない、
「んー、店、どこもピンとこないから駅の方行ってみようか」
そう言って、なんとなく行く方向をあわせるのが精一杯である。




