郵便受け
集合玄関の横にある郵便受けを覗き込む。
数枚のハガキが輪ゴムでまとめられて投函されている。
部屋着でここまで出るとさすがに少し寒いが
柔らかい日差しが元旦らしく穏やかな朝の空気を醸し出している。
エレベーターを待つ住人の横で、郵便受けのダイヤル錠を開け、中の郵便物を取り出す。
輪ゴムでまとまった一番上には 国民的アイドルをモデルに起用した郵便局からの年賀挨拶。
その下に重ねられているハガキは、ぱっと見たところ 4、5枚ほどである。
降りてきたエレベーターに乗り込みながら、留めを解いて 1枚ずつめくる。
私と妻 それぞれの実家からのものが2枚、
妻の友人から1枚、親戚から1枚、高校の同級生Nからのが1枚…
自分の階でエレベーターを降りて、部屋のドアにたどり着くまでに 全ての差出人が確認ができた。
元から期待していたわけではない、
どちらかというと元から”絶望”していて、
それを再確認しただけ である。
そういえば何年か前から 年賀状の配達は1月2日は行わないことになったらしい。
だから次の 絶望 を待つのは翌々日となる。
これまで考えたこともなかったが郵便サービスの質低下をこんなところで実感できてしまうことが可笑しい。
3日の郵便受けを見てから考えることにしよう。
昼過ぎ、妻の実家に挨拶するために車を出す。
年末に勢いで作った 和歌 をしたためた年賀ハガキは、
普段持ち歩くカバンの脇ポケットに差し込んである。
まるで人に向けてはいけない”凶器”を隠し持っているような気分がする。
こんな最終兵器を使わずに済むなら そうしたい気持ちと、
こんなものを使ったらどうなるだろうか という気持ちが、入り交じっている。
そうして意識を分散させることで、自分自身の機嫌のバランスを保っているような気もする。
正月らしいAMラジオの生放送を聴きながら 車の少ない道を静かに運転する。




