文筆2
この会社の “正社員“ は事務系総合職の職種のみで、
必ず数年おきに部署の異動がある。
それが古くからの制度である。
“異動“があれば、後任への仕事の“引き継ぎ“が必要になる。
そんな制度の中で働くと、人はどういう意識になるか。
後から来る何もわからない人に "引き継げるくらいの仕事" をすることが 求められるようになる・・・と、私は思っている。
「正社員になったら・・・」と言ってくれる人達の中に、
私の仕事を引き継ぎたいと思っている人が居ないことは よくわかっている。
だから、私が正社員になるのは 皆に迷惑をかけることになる。
私もその働き方を求めてはいない。
・・・。
それだから、
表面的には周りの励ましを笑顔で受けながらも
心の中では 常に複雑な想いがあった。
仕事が回りやすいように、職場では誰にでも隔てなく 親しく、フレンドリーに関わるようにしてきたし、
周りからも そういう人 として見てもらえていると思うが、
ふと、エレベーターなんかで一人きりになったとき、
深く重たい溜息がでる自分が嫌になっていた。
これは 社内の誰にも、
はるかにも、言えないことである。
それを言ってしまうことは、なにか 正社員として働く会社の皆の価値観を否定することになるような、そんな気がしてしまうから。。
いや、それは綺麗事で、私自身が皆に 気を許していない というだけのことかも知れない。
妻にも職場のことで どうにもできない心配をかけたくはないから、特に話すこともなかった。
・・・・・・、
栗原さんも、誰にでも優しく接するタイプである。
だが職場とプライベートは分ける性格ということを耳にしたこともあった。
それが、どことなく 自分と同じようなところがあるのではないかと感じていた・・。
だから あの夜、暑い東京の真ん中で、
人混みの中から現れた栗原さんをみて、
この職場で働いていて初めて 一人の人として、
少しだけ気を許してみたくなってしまった。
・・・・・・。
とまあ、始まりの経緯を考えてみるとそんな感じなのだが、
初投稿で、こんな複雑な背景を織り込んだ小説を面白く書くことは、
わたしの文章表現では到底不可能である。
・・・・・・、
だから、
これは、ただの会社員が、わけもない片想いをして悩む心情を描く恋愛小説にする。
そのくらいのほう方が “読む人“ も受け取りやすいだろう。
・・・・・・。
タイトルは他の投稿作品に対抗するように、
とにかく短く 4文字にすると決める。
深い意味があるようでありながらも、後から都合よく解釈もできるように考えて、その物語の始まりを投稿した。
窓の向こうの中庭に射し込む日差しは、だいぶ傾きかけている。




