婚前契約
結婚前、旦那から数枚の紙を渡された。
これなに、と聞くと、婚前契約だと言われた。
何でも、死んだ後や子供が生まれた時、さらには孫のことまでをまとめているということらしい。
一度目を通してほしいと言われて、私は一応は眺めた。
署名して捺印して、そして結婚。
子供も生まれた、孫もいる。
さらにはひ孫もいる状態で、旦那はとうとう死んだ。
齢102、大往生だ。
ここで私は彼が死ぬときに言っていた婚前契約の話を思い出した。
そういえばそんなものを作ったな、と思い、子供らに言って、仏壇の裏に隠した封筒を取り出してもらう。
数十年前の紙だったが、まだ読めた。
そこには、当時からこんな時のためのことが事細かに書かれていた。
用意が良いのが彼の身上だったことを、ようやっと思い出した。
これと最後の言葉によって、私たちは滞りなく相続を終えることができた。