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人生の早送りボタン

作者: ドラゴン出版

俺は32歳で、妻が28歳、子供は5歳の男の子、2歳の女の子だ。元旦早々、何かあったわけではないが一度はやってみたかったことを実行することにした。人生の早送りボタンだ。これを押すと、元旦からいきなり大晦日になる。生きているうち、3回のみ使えるそうだ。俺はそのボタンを思いきって押してみた。


俺は時空間を飛び、大晦日に移動した。我が家の居間に到着。家には誰もいない。見慣れぬテレビがあった。俺はテレビを買ったようだ。


ところで妻や子供はどこに行ったのだろう。家の中を探してみたがどこにもいない。



そうだ、携帯だ。俺は自分の携帯を探した。いつものように本棚の三段目に置いてあった。



ん?



見たこともない機種だ。俺は機種変したらしい。妻に電話しようにも、使い方が分からない。あちこちのボタンを押してみたが、妻の番号が出てこない。なんでまたこういう使いにくい機種にしたんだろう。


参ったなあ。仕方なくテレビをつけてみる。NHKで紅白歌合戦をやっている。トップバッターは見たこともない女性歌手だ。今年、大ブレイクしたらしい。


ふと、手帳を見ることを思い付いた。俺は高橋書店が出している手帳が好きで毎年購入している。鞄の中に手帳があったのでさっそくパラパラめくってみる。


1月、東京出張やら営業会議


2月、相変わらずあちこち出張だ、海外にも何度か行っている


3月、4月、5月・・



ん?



5月某日、市役所に離婚届、と書いてある。



俺が離婚?!


なぜ?


あれほど仲が良かったのに?



俺は愕然とした。なぜ離婚したのか知りたい。しかし、誰に聞けばいいのだろう。全く思い浮かばない。




ピンポーン




誰か我が家に来たようだ。ドアを開けたら、



妻と子供たちだった。


ごめんなさい、遅くなっちゃって・・聞けば、妻のお父さんが大晦日の朝に具合が悪くなって実家に行ってきたという。なんとか容体が収まったので戻ってきた、と。


それにしても離婚した妻が何故我が家へ? 俺は思いきって手帳を見せて妻に聞いた。妻、俺の深刻な顔を見て吹き出す。そして事情を教えてくれた。その離婚届というのは我々夫婦ではなく、俺の部下のA君のことであった。A君は社内結婚して3年目だったのだが奥さんと折り合いが悪く、ついには今年の5月、離婚することになった。しかし忙しいA君は市役所に行く暇もなくあちこち飛び回っていたので俺が代理で市役所に行ったらしい。



いやあ、参った。俺は大晦日の夜から元旦の朝までかけて妻にこの一年の出来事をあくびしながら聞き、二度と人生の早送りなんかするもんかと心の中で誓った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 平穏な一年であったようで、何よりです。 何か問題が発生していたとして、ピンチを挽回するチャンスを早送りで、すっ飛ばしてるとしたら。。 早送りはイカンです!(笑)
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