殴ってくれていいからね?
「れん?...お兄ちゃんの事、殴ってくれていいんだよ?」
「...いやだ。」
私の兄は基本的に頭がおかしい。
灰坂 叶人
大学2年生。
こんな奴だけど学校には毎日ちゃんと通っていて、
詳しくは知らないけれど、モテているらしい。
確かに昔から性格とは違い、外見だけはまともだった。
背も高く、肌も真っ白。
私は妹の灰坂 連
男っぽい名前だと言われるが、れっきとしたFJK。
あ、FJKとはファーストJKの略で、高校1年生の事ですよお姉様方。
毎日増えていく兄の自傷行為の傷。
それを覆う包帯や湿布も日々増えていっている。
「ねぇ、お兄ちゃん。死にたい?」
「うん、死ねるものならいつでも。
あ、れんがお兄ちゃんの事殺してくれるって言うなら今でもいいよ?
部屋から包丁とか色々持ってくるから。」
サラッと物騒な事を口走ったなこいつ。
「自分の妹を勝手に殺人鬼にしないで。他殺じゃなくて自殺でどうぞ。」
本当は、死んで欲しくなんてないけど。
私のこの一言で拗ねた兄はやっぱりおかしい。
マゾとかドMとかそういう域を通り越して、死を願っている。
死にそうな顔で絶えずにこにこと笑う兄の姿。
私はもう慣れてしまったけれど、傍から見るとかなり異様だろう。
「あ、また煙草吸ってる。そんなに美味しい?」
「え、だって、寿命縮みそうでしょ。」
理由は本当にそれだけの様でむしろ美味しくないと言っていた。
眠そうな顔で煙草を吸う兄は、儚くて壊れてしまいそうで。
「寒いから、早く入って。」
まだ8月の上旬。微塵も寒くなどない。
「...うん、わかったよ。」
たまに物分りのいいお兄ちゃんは、やっぱり変で苦手だ。