二人の幸せ
「なあ、人って死んだらどうなると思う?」
「は?」
「死んだらどうなると思う?」
「いや知らねーよ何、哲学?」
「いやそれが、私死ぬんだわ、今日」
「はぁ、何言ってんの?、笑えねぇ冗談言ってんじゃねーよ」
「いや、マジマジ」
「えぇ...マジ?」
「うん」
「あーじゃあ俺は明日からぼっち飯か...」
「あんま驚かないんだな」
「まあ、ここが病院でお前がそんな姿じゃなかったら驚いてたかもな」
「そんな姿とはなんだ、結構辛いんだぞこれ、点滴の針が身体中に刺さってて身動き取れないんだから」
「見りゃわかるよ」
嫌なほどな...
「それで、今日のいつなんだ?、死ぬの」
「う〜ん詳しくはわからないけど、1時間もないかもな」
「あと少しじゃん」
もう少し生きろよ、70年ぐらい
「あーそうそう、死んだらどうなるかだった、お前はどう思う?」
「その質問まだ続いてたのか...、そうだなぁ天国に行くとか輪廻転生とかじゃない?」
「平凡だな」
「ひどい」
「まあ聞いてくれよ、私は死んだら将来復活すると思うんだ」
「そうか?」
「あ〜なんだその目は、信じてないだろ」
「信じる信じる」
「軽!」
「それで、なんで復活するんだ?』
「復活したいから」
「そうか」
「突っ込まないのか?」
「突っ込まれたかったのか?」
「いや別に」
「そうか」
「それでな、復活したらその場所はお花畑になってて」
「うん」
「遠くには水面が透き通った湖があって、綺麗な鳥たちの鳴き声が聞こえるんだよ、羨ましいだろ」
「ああ、羨ましいよ」
「そこで私は家を建てるんだ、それでのんびり暮らす、絶対に暮らすんだ」
「ああ、そうだな」
「たまには外で読書もしてみたいな、日向ぼっこもしたい、いや湖で釣りもいいかもしれないな」
「あぁ」
「それでな、そこには私を傷つけるものが一つもないんだ、好きなものしかない、大好きなことしか存在しない世界なんだ、それでな、それで」
「うん」
「隣に...お前がいてくれるんだ」
「...」
「それで二人の世界でのんびり暮らすんだ、最高だと思わないか?」
「ああ...最高だよ」
「だろ!」
.....。
「なぁ」
「なんだよ」
「今だから言うけどさ」
「ああ」
「愛してる、葵」
「私も愛してるぜ、和樹」
二人は笑った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さああぁぁ さああぁぁ
風に乗って花びらが舞う、
ピピピ、チチチと鳥の声が聞こえる。
自然に囲まれたこの場所にひっそりと一軒、真新しい家が建っていた。
その家からはいつも二人の夫婦の楽しそうな笑い声が響いているとか、いないとか
「釣り行こうぜ!釣り」
「まあ待て、このページ読み終わったらな」
「つーりつーり」
「あー耳元で叫ぶな」
「あ、そういえば前は和樹に先を越されたから次は私から言っていいか?」
「んーいいよ」
「愛してる、和樹」
「俺も愛してるぜ、葵」
二人は最高の笑顔で笑った。