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知りたい事、知るべき事

テスト週間につき、大幅な遅刻..なので今回は少し長めです..

知りたくないわけじゃない。

だが知ろうとも思わない。

知って、何かが変わるだろうか。

何かって、何が?

何故こんなに躊躇うのだろう。

恐れている?何を?


人は、知らないことを恐いと言う。

俺は、知ることの方が恐いと思う。

知ったとして、それが己の利になるとは

必ずしも限らないというのに。


人間は何処までも愚かで、_____しい。



「ん、ぅ..」


「あ、起きた?」


「誰?」


「セイドだよっ!」


何か、夢を見ていたような気がする。

ゆっくりと稼働し始めた思考に、

ぼんやりと記憶が甦ってきた。


「小鳥...」


「その呼び方止めてっ?」


「煩い」


「~っ~っ(声奪わないで)!!」


喉を押さえて転がり回るセイドを横目に

体を起こす。

倦怠感も、眠気も無し。

あの強制的な睡眠導入は止めてほしいが

使った神気は全回復している。

が、問題はここからだ。


「声、戻すけど騒がないで」


こくこく、と頷いたのを確認して

神気の干渉を緩める。

ついでに記憶を頼りに部屋を作り替えてみる。

何となく、自分の部屋に他者が居るのは落ち着かないのだ。うっかり侵入者として消しそうになる。


「御上の空間をこうも簡単に作り替えるとは..」


何故かショックを受けてよろめくセイドの背後に椅子を出現させてやり、自分は再びクッションに腰を下ろす。

まだ完全には場に干渉仕切れていないが、初めてにしては悪くない。と思う。これでわざわざ廊下に出て扉を介する必要もなくなった。一人でも楽に移動できる。


「えっと、兄上?」


「そう、まずその兄上から説明して」


「えっ、いや、その...」


「答えられる範囲でいい」


「んんー、話しすぎるとまた御上にあれこれされそうだけど..まぁいっか」


軽い。軽すぎるぞこの男。自分が受けた仕打ちをもう忘れたのだろうか。いや、単に能天気なだけかもしれないが。


「ひどいなぁもう、せっかく覚悟決めたのにっ」


声に出ていただろうか。


「雰囲気で分かるよぉ...こほん、とりあえず確認なんだけど、この世界が全て御上の創造物であることは知ってる、よね?」


「まぁ、何となくわかってた」


「当然、ボク達も御上に造られた存在だよ。御上は、万物の生みの親..父であり母だ。基本的に男性姿が多いから、父と呼ばれることの方が多いかな。その中でも、御上自ら造り上げた存在は文字通り特別なんだ」


自ら造り上げた?さっきこの世の全てがあいつの創造物だと...いや、あいつのことだからきっと神気で適当にぽいぽい生み出したものも多いはずだ。

つまり、


「どれだけ手間をかけて造ったか、ってことか」


「そう!そういうこと!聞いていた通り、

本当に理解が早いねぇ」


誰に聞いたかなんて、尋ねるまでもない。

きっとろくでもない話ばかりしていたんだろう。


「けど、ただ生み出し続けると管理が大変だろう?あの人面倒くさがりだし」


「あぁ」


「そこで、御上には自分に近しい者から順に序列を..要はランク付けだね。と、役職を与えたんだ。もちろん一位は御上だけど。因みにボクは序列四位だよ。海と地震を司っている」


なんか嫌な予感してきた。


「そして、御上に面会及び会話が許されるのは上位十二名のみ。その内の第三位はずっと空席だったんだけど..」


にっこりと浮かべられた笑みが、あの神と重なる。


「つい最近、ようやくその穴が埋まったんだ」


最近。つい最近、ね。


「最も御上の恩寵を受けし秩序の神子。序列三位、死と生を司る...もちろん貴方の事ですよ、兄上」


ころりと真面目な表情になったセイドは、声音まで真剣なものへと変化した。


「何で俺なの..」


「本来なら貴方はボクより先に神化(シンカ)するはずだったんですけど..とある事件で魂だけの状態で時空の狭間に落ちちゃったらしいんですよ」


何してくれてんの、あの神。

帰ってきたら即殺ろう。


「偶然に偶然が重なり、貴方は人間界に落ち、何故か御上に見つかることなく四百年が経ちました」


偶然に負ける神って..

というか俺、四百歳?


「いえ、実際に時空の狭間から人間界に落ちたのは最近らしいです。その時、とある国で実験をしていました。その実験というのが不敬にもほどがある、神を降臨させて肉の器に閉じ込め、操って大軍兵器に起用する、と言うものでした。不幸なことに、兄上が落ちたのはその実験の真っ最中だったのです。兄上は囚われの身となりました」


いきなりヘビーな雰囲気だな。

いや、うん。段々と読めてきた。


「兄上を手に入れ調子に乗ったゴミ(やつら)は記憶を弄り、冷酷な戦闘人形(キラーマシーン)に作り替えようとしていました」


どうりで...生前の記憶がぼんやりしてると思ったら散々弄られてた訳か。


「もし御上の発見がもう少し遅ければ兄上の自我は完全に崩壊していました」


「じゃあ何でわざわざ俺殺されたの?」


「その辺は...えっと..」


途端に言い淀むセイド。


「言えないならいい」


「申し訳ありません...。あ、ですが兄上を実験に使ったゴミ共の国は御上と私が腕によりを掛けて破壊したので御安心下さい」


何をどう安心しろと。

とりあえず、自分のろくでもない

身の上話は聞けたことだし、


「もう帰って良い」


「宜しいのですか?」


「あいつの事を他人の口から聞いても仕方無い。..何?」


「あの、それが、ですね...」


「...神気回復してないの?」


「お恥ずかしながら、御上への抵抗に力を注ぎ過ぎまして」


なら丁度良い。

気分転換と、練習も兼ねて。


「送るから縮め」


「わぁっ!」


みるみる内に手のひらサイズになったセイドを握り、神気で自分に干渉していく。別に、この空間から出ることは禁止されていないのだ。それに、あの神の事は、あの神に聞くのが一番良いだろう。



――――――――――――――――


-再び最高神殿にて-



正直、本当に成し遂げるとは思っていなかった。だから、時空の揺らぎを感じた時は本当に驚いたし、嬉しかった。子の成長を知って、嬉しくない親はいない。


「お、御上が笑ってらっしゃる...」


「まさか今日は天変地異でも...!?」


「君達、僕をなんだと思ってるの」


無意識の内に、口元が緩んでいたらしい。

わざと不機嫌そうな声音で告げれば、皆

真っ青な顔をして謝罪の言葉を口にした。

まぁ、今はブレイクタイムだし、

発言は自由なんだけど。


「御上、質問しても宜しいでしょうか」


「いいよ」


「先程の説明では、二番目の御子が神化したのは一週間程前だと記憶しております」


「そうだね」


「ならば、御披露目会は少々早すぎるのではありませんか?本来、御披露目会は神核生成から一年後のはずです」


「確かに、普通はそうなんだけどねぇ...あの子、既に自我あるんだよね」


「...は?」


「僕がちょーっと教えただけでもう神気の使い方も覚えちゃったし」


「...え?」


「目も凄く良くてね。僕の神核まで見えるんだよ」


「...へ?」


「多分、もう僕がサポートしなくても体を保てるんじゃないかなぁ」


「それは一体、どこの成神(せいじん)のお話でしょうか」


「だから、僕の二番目の子の話だってば。初めから制限無しでも特に暴走することなく成長してるし」


「「「......」」」


一同、沈黙。

あれ、何か震えだしちゃった。


「な、な、なんて育て方してるんですか!?」


「いやぁ、つい?」


「「「つい、じゃないですっ!」」」


バンッ、と机を叩きながら立ち上がった。

みんな息ぴったりだね。

セイドの突っ込み癖が移ったのかな?

ま、聞く気ないけど。


「ほらほら、君達座って。そんなに心配ならその目で確かめるといい。もうすぐ来るみたいだからさ」


「あの...来る、とは?」


「あの子、自力で家抜け出したみたい」



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