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神からの課題

ちょっと長くなりました。

神が出ていってどれくらい経っただろうか。小鳥を覆う神気が堅すぎて、俺は諦めの境地に達した。手当たり次第に試しても駄目だと判断し、今は手中の暗器を弄びながら思索に耽っている。


「干渉出来たら、ねぇ」


今まで教える気なんて皆無だったくせに。

いや、俺には無理だと分かってるから、か?

絶対無理だと高を括っているのか、

あるいは出来ると信じ..これは無いな。

そして、


「質問する権利はイコール知る権利じゃない。あくまで訊く事を許されただけ」


そう、知りたいことを質問したとして、答えてくれるかどうかは相手次第なのだ。その上、質問に対して答えを望むということは、即ち問答が可能なレベル(・・・・・・)まで小鳥に干渉する必要があるということだ。ちょっと干渉出来たとして..一部だけでも元に戻せたならば、それは干渉出来た(・・・・・)と言えるだろう。質問する権利も手に入る。が、それだけでは意味がないのだ。


「身体より意識の方が問題だな」


更に言えば、もし身体を戻せたとしても意識まで干渉しきれなければそれは俺にとって干渉出来ていない(・・・・・・・・)事になる。質問する権利を価値あるものにする為には、最低でも小鳥の意識..最深部にある神気にまで干渉する必要があるのだ。

もっとも、それは限りなく不可能に近い。


「ピ?」


当の小鳥はといえば、呑気に俺の周りをふよふよと漂っているだけである。小鳥への干渉を諦めた俺が小鳥の周囲の空気に干渉して浮かせているのだ。

空気に、干渉して...?


「何で俺は干渉出来ている(・・・・・)?」


出来るはずが無い。

それが先程、散々試した結果ではなかったか。小鳥を覆う神気は薄さの割りに濃密で強固。今の俺では全く歯が立たない。それなら何故俺は『あの神の』神気で生み出されている空気に干渉出来ているのか。この空間全てが、もちろん空気すらもあの神の神気で造られているはずなのに。

小鳥を覆う神気は駄目で、空気は良いのか?

ああそうか、そういうことか。


「要は、認識の違いか」


俺が干渉しようとした小鳥も、干渉していた空気も元は同じ神気だ。が、重用視すべきは『何に』干渉しようと思ったのか、だ。

小鳥を覆う神気に干渉しようと思うからいけないのだ。

小鳥を覆う神気ごと一つの個体(・・・・・)だと思えばいい。ならば俺でも干渉できる(・・・)

何故なら俺が干渉するのは神気ではなくそれすらも含めた別個体への干渉だからだ。


「加減が、ん、こうか..?」


ノーヒントゆえ散々回り道をしたが、解き方さえ解ってしまえばこっちのものである。

神の神気ごと自分の神気で覆い、ゆっくりと浸透させていく。神の神気には抗わず、受け入れる。そして自分の神気に馴染ませ、それすらも使って干渉していく。

手の平サイズだった小鳥は段々と膨らみ、歪な人型をとり、数秒の内に見覚えのある姿に成った。


「え?あれ?」


「戻ったな」


まだ状況が把握しきれていないようだが、自我も戻っている。ひとまずは成功と言えるだろう。


「くそ、また眠い...」


神の言う通り、神気を使ったことによる反動なのだろう。気を抜いた途端、身に覚えのある眠気に襲われた。座っている事すらままならず、クッションに倒れ込む。あぁ、意識を保つことすら億劫だ。


「ちょ、具合悪いの!?」


「煩い。ちょっと寝るから大人しくしてて..」


「うっそ言霊(コトダマ)まで使えるの..?ていうか動けないんだけどぉ..」


遠くの方でセイドの泣きそうな声が聞こえた気がした...



――――――――――――――――



ここは最高神殿。神界における最高神の為の城である。そのとある一室では円卓を囲むようにして九人の男女が座していた。しかし、上座とその右側は空席…城の主たる最高神と、その右手たる者の姿がないのだ。

ゆえに、皆一様に沈黙を貫いている。


「御上がご到着されました」


伝令役の呼び声が、その役目を果たすかのように高々と響いく。途端に、今まで視線すら合わせなかった彼らが同時に立ち上がり、その場に片膝を着いた。右手を胸に当ててコウベを垂れ、最大級の敬意を表す為に。


「みんな揃ってる?」


誰への敬意か?勿論、上座に座っている者への(・・・・・・・・・・)だ。

いつの間に現れたのか、気だるげな顔で

行儀悪く頬杖をついている。

彼らの行動を当然のように受け流し、

一瞥を投げるに留めたこの男こそ、


「「「おかえりなさいませ、御上」」」


「はいはいただいま」


御上こと”最高神ゼウス”その人だ。

全知全能、守護神にして支配神。

万物の偉大なる父である。

何もかもがこの男の気分の気分次第。


「座っていいよ。さぁ、続きを始めよう」


「では、僭越ながら私から。西の虎より、風神と雷神の諍いで周囲に甚大な被害が出ているとの報告が入りました。以前より問題になっていましたが、早急に対処すべきかと」


「それなりに名のある神だし、節度を持って行動して欲しかったんだけど...仕方ないね、降格も視野に入れつつ神罰を下すよ」


「承知」


「では次に私が。見回り部隊より、南部と東部の人間界にて神落ちを発見したとの報告が入りました。急を要した為、独断で対処に当たりました。事後報告になったこと、お詫び申し上げます」


「構わないよ。今後もよろしくね」


「はっ」


「私からは...」


「こちらからも..」


部下の報告を受けながらも、ゼウスの手は止まることなく書類の上を滑る。そして、その手を離れた書類達はひとりでに浮き上がり、行くべき所へ飛んでいった。

神々にも、仕事がある。


「あ、そうだ、その内お披露目会するからね」


「「「お披露目会?」」」


「うん」


「あの、誰のお披露目会でしょうか?」


「言ってなかったっけ?僕の二番目の子供がようやく神化(シンカ)したんだよ」


「「「え!?」」」


この日、神界に衝撃のニュースが轟いたのであった...

いやぁ、ようやく『御上』の名前が出せましたね!

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