神の祝福
どうも皆さんお久しゅうございます。
またもや前回から間が空いてしまいました。
これでも無いはずのやる気を搔き集めて頑張ったのですよ(嘘)
「ま、暗い話は置いといて一旦休憩にしようか」
「は?」
この神はわざとなのか天然なのか(恐らく前者だ)いつも言動が唐突なのだ。
こっちの様子などお構いなしに鼻歌交じりに手を打ち鳴らした。
途端に足元から歪み始めた書斎は瞬きの間に穏やかな風が吹き抜ける薔薇園へと様変わりしていた。
ほどよく雲が配置された晴天の下、果て無く広がる青薔薇の植え込みに囲まれてティータイムとはなんて贅沢なことか。
ぽつんと存在するパラソルで作り出された日陰ではセッティングされたテーブルで繊細な薔薇の模様を携えたティーカップが湯気を上げている。
「いくら僕でも書斎でお茶だなんて
無体は働かないさ」
「そもそも神って飲食必要でしたっけ?」
「要らないよ」
ならば単純に気分転換という事だろうか。
それにしては些か大掛かりな気もするが。
「ダージリンのセカンドフラッシュだよ。君はマスカットが好きだから飲みやすいと思ってね」
この神、何故俺の好物を把握しているのだろう。
「おすすめはストレートだが好きに飲むのが一番美味しい」
あまり馴染みのない単語に首を傾げる。
もしや神の有する自動翻訳機能は万能ではないのだろうか。
いや、俺が未熟なだけか。
「いやいやそんなことないよ。初めから全部出来ちゃったら僕が教える事無くなっちゃうじゃないか!いいかい、神が起こす事象には神気が干渉してるんだ。神気っていうのは神が居ると自然発生しちゃう空気みたいなものだと思えばいい。でも、神気が干渉できるレベルがあってね。そのレベルは神格に比例する」
「つまり、その神気が俺の場合、神格の未熟さゆえに干渉力が弱くて翻訳しきれなかった、と。なら、今までの手品みたいな現象も貴方が神気で干渉した結果というわけですか」
「大正解!ほんと、素晴らしい理解力だね。おっと話しすぎたかな。紅茶が冷めてしまうよ」
促されるままに傾けたカップで赤みがかった濃いオレンジが波紋を広げた。
鼻孔をくすぐる嫌味のない爽やかな香りに誘われ一口含んでみる。
「おい、しい」
「そうだろうそうだろう。僕自ら厳選・栽培・収穫した一品だからね」
得意げな笑みを浮かべる神に思わず半眼になる。
「神気を使って一瞬で?」
「わかってきたじゃないか、少年」
悠々とカップを傾けているこの神が。
神気で干渉して物事を成すというのなら。
ならば、今己が居るこの場も、この紅茶もこの神が作り出してるというのなら。
『自分さえも』作られたのでは?
「ふふ」
意地の悪い色を乗せて、にんまりと口元が歪んだ。
一気に紅茶の味がしなくなった。
「どうだと思う?」
答える気はないらしく、代わりに寄こされた流し目に息をのむ。
温度なきガラス玉に映るものなど何もなかった。
この神の考えが、全く読めない。
「大丈夫。その内解るよ」
自分のことすら、分からないのに?
「不安そうな顔だ。よし、たまには神らしいことをしてあげよう」
その不安たらしめている本人が何をするかと思えば。
すたすたと生垣に歩み寄り見事に咲き誇っていた薔薇に手を掛ける。
主人の理不尽に逆らうことなく命を散らした薔薇はひらりと青を散らした。
そして、一度その花弁に口付けて俺に差し出した。
「はい、プレゼント。身に着けてれば良いことあるかもね」
神とは皆、こうも気障なのだろうか?
もし興味があれば青薔薇の花言葉、調べてみてくださいね。
そして、こんな駄作に興味を持って頂けた方々、気長にお付き合いくださいませ。