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課外授業3

年越し前になんとか投稿できた...!

「そんなに拗ねないでよ」


「拗ねてない」


「顔と言動が一致してないけど」


「煩い」


「ふふ、ほんとに可愛いねぇ君は」


ぐしゃぐしゃと無造作に髪を撫で回すそれを叩き落とし、今すぐにでもこの男から離れたいのだが、生憎とそれは悪手だった。



~つい先程~


「別に何処へ行こうが構わないけど、目視出来ない場所にいても僕のこと探せる?」


答えはNOだ。神気が封じられてるに等しい今の俺に、そんな芸当は不可能だ。視るにてしもここにはかなりの数の神がいる。当然それぞれが有する神核があり、その中からカミを見つけ出すのはかなりの苦行だ。


「あと、何かあった時に君は神気を使えない。それでも絶対に何とか出来る自信があるなら、好きにするといい」


さぁどうぞ、と言わんばかりに両手を広げてみせるこの男は。此の世で最も強い、絶対なる象徴。つまりこの男の傍が最も安全で、言い換えるとこれ以上安全な場所は無いのだ。


「....る」


「すまない、よく聞こえなかった」


「~ッ、あんたの傍にいる!」


「あっはっはっはっは!」


自棄になって叫べば、腹を抱えて爆笑するカミ。どうあっても、俺はこの男の手の平の上で踊るしかないのだ。


「少年、あそこに寄ってみよう」


「寄らない」


「あ、あそこ面白そうだよ」


「明らかに怪しそうだろ!!」


片っ端から出店に顔を突っ込んでは俺に何かを買い与えようとするカミを引きずりながらふと、並びに違和感を覚えた。


「なぁ、あれ神じゃ、ないよな」


店先で卸作業や呼び込みをしている人形のそれはには、神気が無いのだ。


「どれどれ、あぁ、式神だね。僕達神は基本的に敬われる(・・・・)側だから、もてなすのは式神(つかい)に任せるのが普通だね。自分の事を自分でする神の方が少ないだろうね。そういう生き物だから神って」


「普通...」


「あ、僕のこと普通じゃないって思ってる?」


「...そんなことない」


「間があったね。まぁ、僕の場合はあれに任せるより自分でする方が早いから」


そりゃそうだ。万物の生みの親、最上位の神なのだから。誰かに頼るより自分で済ます方が遥に早いのだろう。


「そういえば、神格について詳しく教えてなかったね。丁度いい、彼等を視ながら話そうか」


神々を教材に使うなんて、この男以外に居ないと思う。


「まず、神というものは僕が生み出した瞬間にこの世に存在するものとして他の神々に自動的に認識される。一部、例外として妖しを神に召し上げることもあるんだけど、これは後でいいよね。はいこれ」


どこからかカミが買ってきた謎の袋を手渡される。とりあえず受け取って中を覗いてみると、半透明な色取り取りの球体が詰め込まれていた。


「楽しいから食べてごらん」


楽しい、とは。一粒取り出してみるが何か仕掛けがあるようには見えなかった。とはいえ眺めていても仕方がないのでぽいと放り込む。じんわりと口内に広がる甘さ。舌の上で転がすと柑橘の香りが強くなった。


「ん?」


ぱち。ぱちち。

何かが、弾けた。小気味よいリズムで刺激してくる。正体はもちろん口の中にあるそれで。少し、否、かなり強めの刺激だが、慣れると存外悪くない。


「気に入った見たいで良かったよ」


無言で舐め続ける俺を横目に、カミは微笑む。


「そうそう、神格の上げ方は主に二種類あってね。一つは信仰されること。だから手っ取り早いのは信者を作ることかな。例えば、其処の赤い服の男神を視てごらん」


言われた通り、此方に背を向けている赤い服の男神に目を向けると、彼の神核は白い薄光の幕で覆われていた。


「あれは信仰されている証でね、度合いによって色も変わる。多くの者に信仰されていると、より鮮やかになるし、人間界に降りる回数も少なくて済む。信仰が浅いと頻繁に降りる必要があるからそこは考えものだね」


信仰の、証。そういえばこのカミを視てしまった時、神核はどんな感じだったろうか。主神たるこの男が信仰されていないはずがないのだが、強すぎる衝撃からか、上手く思い出せない。というよりも思いだそうとすると強制的に思考に霞がかかる。

これは、もしかしなくても。振り返るとカミがしい、と人さし指を立てたのでこくりと頷く。考えるなと言うのだから考えない方がいいのだろう。触らぬ神になんとやらだ。


「二つ目は知名度。いい意味でも悪い意味でも、その名を知られていればそれなりの力になる。ただ、これに関してはタイミングやきっかけが重要になるから楽ではないね」


いい意味でも悪い意味でも。含みを持たせた物言いに、何となく想像がついたのでこれも触れないでおくことにした。


「例えば、彼処の女神を視てごらん」


今度はカップを片手に友人とおしゃべりに勤しむ女神に目を向けると、彼女の神核は水球だった。僅かに波打つ表面。


「彼女はかなり古い神のようだ。知名度によって神格を上げる場合、神核にも影響する。人々に知られている事で力を得るわけだから、少なからず彼等の持つイメージに侵食される。君も知名度でもって神格を上げるなら覚悟して臨むように」


イメージに左右されるのはあまり良くなさそうだ。

ところで、神核とは自分そのものだと記憶しているが。


「そうだね」


勝手に視ていいものなのか。


「いいんだよ、見られる方が悪い」


それは、そうかもしれないが...

まぁ、当の本人達も全く気づいていないようなので良しとしよう。




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