課外授業 2
おかしいな...もっとこう、テンポ良くぽんぽんと投稿するつもりだったのに..
「着いたよ、少年」
掛けられた声に応えようにも未だ俺はカミの腕の中だ。何故毎回こうも抱き上げられて移動する必要があるのか問いただしたい所だが、とりあえず今は置いておく。さっさと下ろしてくれとベシベシ腕を叩くと、ストンとその場に下ろされ..否、空中に下ろされた。万物はこの男の創造物。ゆえに全てはカミの思うがままなわけで。つまり今俺達は空気を踏みつけて(・・・・・)立っているのだ。浮いているのではなく、確かに足場が存在する。奇妙な感覚だ。
「ここはね、簡単に言えば娯楽街かな」
地上数百メートルから見下ろしているというのに、ハッキリと細部まで確認できる。眼下に広がるのは様々な神が混在する市場のような場所だった。ただし、人間界の出店が立ち並び人がぎゅうぎゅうに押し込まれたような空間ではなく、数に対して場所が広い為、歩みはゆったりしている。というか皆ふよふよ地面から数センチ浮いている。
「神格の低い者達が集う場所だね。基本、僕達神に神格的な差別は無いんだけど、無意識的に神格が高い者がいると畏縮してしまうだろう?だからここは彼らが自由気ままに過ごす為の場所なんだよ。とはいえ、こうしてお忍びで見回りもするわけだが」
「お忍び」
こんなに神気だだ漏れで何がお忍びか。胡乱げに隣の男を見上げると、向こうもこちらを見ていたようで、ばっちりと視線が合ってしまった。反らす理由もなく、その口が開くのを待った。
「そこで、課外授業だし君に課題を与えよう」
とん、と長い指先が俺の胸を突く。触れた場所が薄く発光し、じんわりと温かくなり始めた。俺の中でカミの神気と自分のものが混ざり合う。一体何をしろというのか。
「今から帰るまでの間、絶対に神気を外に漏らさないこと。君自身の神格は低いけど、僕と居すぎたせいでかなり混ざってるから漏れると彼らが怯えてしまう。出来なかったらお仕置きね」
「なんっ、」
「できない?それならそれで別に構わないよ」
彼らが怯えないよう、その元凶を取り除こうというのはわかる。しかし身に纏う神気を扱う事すら難しいと言うのに、勝手に発生する神気を絶対外に漏らさないようにするなんて、と思わず反論しかけた俺にカミはあっさりと頷いた。
「君なら出来ると思ったのだが、無理なら仕方ないね。君の実力を図りきれなかった僕が悪い」
やれやれと肩を竦めてみせるカミに殺意が湧く。とはいえここで怒り出したりむきになれば相手の思うつぼである。無茶を好むが無理を押し付ける男では無いと分かっているので現状把握に努めることにした。黙って続きを促せば、満足げに頷かれる。
「よろしい。冷静になれたね。こういった煽りを好む神も居るから、迂闊に喧嘩を売り買いしないこと。もう知ってると思うけど、神の言葉は一音だけでもそれなりの強制力を有している。相手が格下であれば抵抗は可能だけど、ここは僕だけが管理している空間じゃない。トラブルはなるべく避けなさい」
「コレについての説明は」
「それはただの補助だよ。今の君はかなり不安定だからね。そんな状態で舵を取れなんて酷いことは言わないさ。ただし、それはあくまでも外に漏れにくくするだけだから、完全遮断は自分でするように」
言われてみれば先程までだだ漏れだった神気がうっすらと俺を覆う程度に押さえられている。例えるなら俺の中で神の神気が網目状になって俺の神気を抑え込んでいる感じだ。網目であれば当然そこから漏れもするがこの程度ならなんとか制御可能だ。...もしかしてこのカミ、わざわざ神気の制御練習をさせるために連れ出したのだろうか。
「さ、存分に楽しもうじゃないか」
前言撤回。楽しむ気満々じゃないか。ちゃっかりスタイルチェンジしているし神気もしっかり遮断されている。一瞬でも期待した俺が馬鹿だった。
「ほら、君も」
急かされるままに神気を制御・遮断した途端、パチンと指が鳴らされた。一瞬の浮遊感の後、凄まじい風圧に襲われた。落下している。何処から?地上数百メートルから。何故?カミが空気への干渉を解いたから。
「安心したまえ、神は落ちたぐらいじゃ死なない」
「ふざけんなぁああああ!!」