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黄銅と真鍮ってどっちが分かりやすいですかね
フラー伯領での滞在もいよいよ終わりだ。お祖父様たちと別れて川沿いを歩きその日は行きに通った関所に泊まる。次の日渓谷の川沿いのくねった道を延々と歩く。途中休憩を挟みながら滝の下で一泊しさらに次の日の昼ごろにドーパ村に着いた。
「おかえりなさいませ 旦那様」
ルドルフが代表として出迎える。
「ああ 領のほうはなにかあったか?」
「ええ コリン村に狼が出たという報告があったので討伐しました。あとは特に」
「そうか ご苦労だったな」
昼食を食べてから父上の部屋に
「父上 いくつか話したいことが」
「陶工と鍛冶のことだな」
「はい」
「金属系は開拓村に住まわせよう 二人のうち一人が鋳造もう一人が鍛冶だったな それぞれの設備は既にある程度運び込んでいるそうだ」
二人と言ったがこれには弟子と家族が付随するので総勢では15人ほどになる。
「では陶工のほうですが」
「確か粘土がヒスタ村の辺りで取れたはずだ。そこに住まわせればよいだろう。」
「ありがとうございます」
「それにしてもお前には驚かされたぞ あのおっかない義父上によくもまあ吹っ掛けたり出来たなあ」
「そんなに怖いんですか 確かに顔は少し威厳がありますけど雰囲気は優しそうでしたが?」
「まあお前は孫だからな また違うのかもしれん 初めて会ったのはお前と同じくらいの時だったがそのときちょうど先代のフラー伯が無くなって義父上がついだばかりであったがチビりそうになったぞ バックミンの鷹なんていう異称も納得の怖さだった」
「異称?ですか」二つ名ってやつかなんか中二病チックだな
「なんでも遊牧民と戦ったとき丘の上から弓でやつらを次々と射殺したことから付いたという話だ」
「ああ それでフラー伯家の紋章は熊なのにお祖父様の剣に鷹が彫ってあったんですね」
ノリノリじゃないですかお祖父様
ちなみにうちの紋章はハトである。威厳がない 平和の象徴かって言う感じだがこれには理由がある。昔心優しい巨大な鳥がいた。その鳥はとてつもなく大きすぎるために住めるところが無くなり山地を巣にしようと腰かけると山がへこんでしまった。回りに押し出された山のせいで何百人もが生き埋めになった。鳥は心を痛め一年泣き続け飢え死にしてしまった。神々はそれを憐れんで死んだ鳥の体を万に分けてそれぞれを小さな鳥に生まれ変わらせた。この小さな鳥がハトであり巨大な鳥の尻に潰されて出来た盆地がバーレン領であるという神話があるのだ。うーん神話も突っ込みどころ満載だし 領地のできかたもどことなく間抜けだ。
「うおっ やはり臭うな」
今日は思い出したようにクリストフと肥料の生産を見に来ている。リュートは今日はエピネ村に蒸留器を持っていっている。エピネ村からすぐの山には酒にしやすい作物がいくつも植えられており蒸留酒の生産はそっちでやることになった。エピネ村を管理しているのはリュートの父のケインだからリュートもやりやすいだろう。
それはさておき肥料の方はこれで正しいのか全くわからん あと一巡りもしたら一応完成のはずなんだがなあ
屋敷に帰ってから機械時計第二弾を設計する。動力は相変わらず錘だが下に落ちきったときスムーズに戻せるように改良する。歯車は黄銅製ですり減りがないようにし、外から歯車が見えないように全体が入る箱を木で作る。箱の前面の下半分に秒針と分針、上半分に時針をつけて 文字を焼き印でつける。振り子は箱の下から見えるようにして黄銅で出来た錘の金色の見栄えがいいように設計する。最後に我が家の家紋であるハトの焼き印を押す。これでブランド化を計れれば貴族の家紋の偽造は死刑になるほど重い罪なので紛らわしいものは出回りにくいだろう。
完成した設計図をもとに工房向けに発注用の図を描く。でもまあこの金属は直接行って説明しないと難しいだろう。
翌日開拓村の視察と設計図の説明をしに開拓村に向かう。
ドーパ村の領内唯一の石橋を通ってそこから川沿いを北に歩く。
この辺りは通る人が少ないからか道らしき道がない。そのせいで護衛の二人は歩きにくそうだ。俺とリュートは今日はルドルフから許可が出たので馬に乗っている。
ゆっくり歩いて三時間ほどで開拓村に着いた。開拓村は領内で最北の集落でここから川を越えて森に入るとギール人という森の民の領域になる。
「とりあえず ルーツェリカのところに行こう」
ルーツェリカはルドルフの年の離れた姉でこの開拓村の責任者だ。ルドルフの父がなかなか男が産まれなかったので騎士向けの教育をした結果男勝りになってしまった。ちなみに結婚してすぐ夫を病気でなくしており未亡人である。
開拓村に入ってすぐの石造りの建物がルーツェリカさんの仕事場だ。
「ルーツェリカさん 久しぶりです」
「おうエリク様とリュートじゃねえか どうしたなにか用か?」
「はい 開拓村を見て回ろうかと」
「視察か わかった 案内しよう 準備するから待っててくれ」
というと奥に引っ込んでいった
「われわれは外で待ちましょう」
「そうするか」
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