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今日はお酒の話です



リコポデウム

イーストリル王国の南ワットリングス諸島に生える木  高さは人の背より少し高い程度であり 実がなるところに羊がなる。この羊の肉は不味いので家畜に食べさせることが多い 毛は麻と似た手触りの布に加工される。ただワットリングスの各領主は誰もが加工前のものを持ち出すのを禁止しているのでよくわかっていない。

挿し絵にはパイナップルの実が羊になったような絵が書いてある。実際に見て書いたのかそれとも想像なのかは分からないがかなり間抜けな絵である。

「エリク様そろそろ昼食です」

リュートの声で意識が本から離れる。こちらの書庫はとても広く三日かけても未だに全てには目を通せていない。



昼食を終えるとリュートと護衛それから案内役の騎士 レイトさんと一緒に街を見て回る。お祖父様の若いうちに色々と見ておくといいという心配りのおかげだ。



「レイトさん どこかおすすめはある?」

「エリク様は私のことはさん付なしでお呼びください。そうですね金属の加工は街のそとの森の方にあるので今日は難しそうです。では酒のじょうりゅうの見学などどうでしょう」

「じょうりゅう?」

「ええ 酒を暖めて見えなくしてから冷やすと元の酒より酔いやすい酒ができます 一説には暖めることで火と酒の神の加護を得るからだとか」

ああ蒸留のことか

「それは見てみたいな そこにしよう」



「ここか」

「はい エリク様 入るときにはこの濡れた布で口をおおって下さい」

「なんのためだ?」

「これをしないと酔ってしまうそうです」

ん 蒸留ってそんなやばかったっけ



布で口を覆って建物のなかに入るとむわっとして消毒液のような臭いがする。部屋のまん中には大きな鍋が置いてありその上に蒸気を液体に戻す装置が設置されているが

「エリク様 あれが蒸留の仕掛けです」

「あっ ああ」

なんと言うか非効率にも程がある。あの構造では蒸気の回収率は相当悪い。その上口を覆わないと酔ってしまうような蒸気で溢れてしまう。見てられない

「レイト 急にやることが出来た。帰るぞ」



館に帰ると早速羊皮紙に蒸留器の図を描く。とりあえずは小型のものだ。描いたのは単式の蒸留器で三段式で一番上に冷却水を入れ一番下に蒸留するものを入れまん中の段に蒸留されたものが集まるようになっているものでいわゆるランビキとほぼ同じだ。

「レイト」

「はっ」

「この図のものを陶器職人に作らせろ できるだけ急がせろ」

「はっ」

「リュート」

「はっ」

「ワインと それから石灰を買ってきてくれ」

「ワインですか」

「ああ ワインならなんでもいい」


それから三日後俺はお祖父様に館の離れを借りて蒸留の実験を始めた。


台所の竈で火を焚きその上に蒸留器を乗せる。水を一番上にワインを一番下に入れる。ちなみにワインは大きな樽2つ分もあるので何回にも分けて行う。

すぐに中段から蒸留されたものが出てくるのでそれを一回り小さな樽に集める。しばらくしてから蒸留器を外し残ったワインを出して冷却水を替えてまた火にかける。

リュートに手伝ってもらい何回も何回も繰り返す。

「ふう やっと終わりましたね」

最終的に昼を挟んで一回り小さな樽2つ分ほどの蒸留酒が得られた。

「いや まだこれからだ」

「ええっ」

一樽はこのままだがもう一樽はさらに蒸留を繰り返す。繰り返すこと4回ついに十リットルにも満たないほどになったアルコールから焼いた石灰を使って水分を取り除く。

「これで完成だ。」

「それでこれがエリク様の言われる最強の酒ですか」

「ああ これ以上強い酒は理論上作れない」

この酒はほぼ100%アルコールだ。まあこれが酒として見られるかどうかは別として度数でいえばウォッカの約二倍の強さだ。

「その酒は美味しいのですか?」

ビクッッ

蒸留を繰り返しておまけにご丁寧に水まで取り除いた ということは味や香りのする物質もすべてとんでしまった ということだ。つまりただのアルコール 美味しいとは思えない

「エリク様?」

「リュート 味は大事ではない 大事なのは強さだ」

「は はあ」



「おう エリク 新しい酒を作ったというのは本当か?」

「あっ お祖父様」

そう言えば前母上がお祖父様が酒好きで困るといっていたな

「はい 実は蒸留所を見たときに思い付きまして。」

どうせならこの際 押し付けてしまうか

「ほう」

「以前本で何度も蒸留するとお酒が強くなるとかいてあったので    ……………………………

……………………………………………ということで出来たのがこの最強の酒 ドレッドノートです。」

ちなみに名前は今つけた。

「ほう エリク よくそのようなことを  お前は天才というやつかも知れんな それにしても最強の酒とな 是非飲んでみたい 少し分けてくれんか?」

「では定期的にお祖父様に贈るのでその代わり陶器職人をいただけませんか? さらに色々なお酒を作るためにも是非」

「もちろんだ。エリク お前には酒作りの才があるかもしれん  これからも楽しみにしているぞ」

よっしゃあ 陶器職人確保ー  それにしても酒作りの才ってどんな才だよ


結局あの酒というよりエタノールは少し果汁を加えて誤魔化してお祖父様に贈った。

このあとお祖父様が少し強いくらいの酒のつもりで何杯か飲んでぶっ倒れ騒ぎになったのはまた別の話。


ウォッカで大体度数は40から50だったと思う

ドレッドノートはイギリスの戦艦で恐れを知らないとか言う意味。カッコいいのでいつかつけてみたかった。



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