ジョナサン・スカイラークという男
俺の名前はジョナサン・スカイラーク。実を言うと異世界からの転生者だ。日本で学生をしていた俺は修学旅行の途中に、飛行機が墜落し海に投げ飛ばされ浮くものにしがみつけずに死んだ。そこで下半身が蛇の男と白い美しい蛇にであった。
「始めまして、俺の名前はスネークだ。こちらの白い蛇はランサー。よろしく」
「はぁ、よろしくお願いします」
彼が言うには今回の俺の死は速すぎる物らしい。といっても2.3日の差ではあるが、寿命が残っているのに死なせてしまって申し訳ないと謝られ、記憶を保持したまま別の世界へ転生させてくれるそうだ。よくある【異世界転生】である。
「あの、チート能力とかって貰えますか?」
「まだ見習い神なのであまり凄いことは出来ないのだ。これでどうか幸せに過ごして欲しい」
そう言って俺にくれたのは【遅老遅死】というよく分からない物だった。
赤ん坊からスタートして、15年経った。この世界は、異世界ではありふれた『剣と魔法と魔物』が出てくる世界で15歳にもなると子供たちは教会に行き自分の職業を選んでもらう。精神年齢的には大人な俺だがこれにはワクワクしている。明日の朝に、幼馴染のサイゼリア・イタリアーノと一緒に教会に行くのだ。楽しみにしながらベットに入ると、15年ぶりに下半身が蛇の男と白い美しい蛇が夢に出て来た。
「久しぶりだな、若者よ。調子はどうだ?」
「はい、こちらの世界にもなれて順風満帆です。明日はいよいよ職業選定があるので楽しみなんですよ!」
それを聞くと男は悲しそうな顔になった。どうしたのだろうか?
「この世界には魔物・魔族がいることを君は知っているね?」
「勿論です」
「人にも王がいるように、魔物・魔族にも王がいるのだ。そして、それを倒せるのは勇者のみ…」
「まさか、明日の職業選定で?」
「うむ。残念ながら君は勇者には選ばれないが、幼馴染のサイゼリア・イタリアーノは今年に義理の妹のガスト・スカイラークは1年後に勇者を支える職業についてしまうのだ」
「まさか…」
「君の考えどおり、彼女たちは勇者達の傍に行き君から離れていってしまう」
「そ、そんな!あなたは神様なんでしょう?何とかできないんですか!?」
「俺はあくまで君が元居た世界の神に過ぎない。神は他の神が創った世界に干渉が出来ないんだ」
俺は膝から崩れ落ちた。明日の職業選定が終わったらサイゼリアに告白しようと思っていたのだ。彼女の雰囲気も満更でもなさそうだし、この日のためにこの世界にはあまり定着していない婚約指輪も用意したのに。
「すまん…」
「やっと、やっと幸せになれると思ったのに…!」
「シャー!」
「?ランサーどうしたんだ?」
スネークと白い蛇が何か話し始めていた。蛇語?なので俺には何を言っているか分からないが真剣な表情で話している。彼の肩に乗っていた白い蛇がコッチに来た。
「あの…ランサーさん?」
「シャ!」
ランサーの口から光の玉が出ると俺の体の中に吸収されていった。不思議と心地よく力が溢れる気がする。
「ランサーからの贈り物のようだ。だがこれに溺れずに鍛錬を積めばきっとお前の力になると言っている。頑張ってくれ」
その声を最後に俺は目が覚めた。1階からガストの声が聞こえる、朝食を食べたら教会へ行こうとせがむ声。ガストはまだ14歳なので、職業選定は受けられないが見学をしたいそうだ。サイゼリアとガストと馬車に乗り町で1番大きな教会に来た。町中の子供が集められているのでその数は多い。神父さまが職業選定の手順を紹介する。
「みなさん、おはようございます。今日はみなさんの職業選定の日です。呼ばれた者から前に出てきて我らが女神【シャトレーゼ】さまに祈りを捧げてください。その後、この紙を渡しますので念じますと自分にあった職業が浮かび上がります。では、アルファベット順で~」
遂に始まった職業選定、俺の元いた世界の神?のスネークによると力に溺れなければ光があるそうだ。最初に貰った【遅老遅死】もよく分からないが…
「次!ジョナサン・スカイラーク、前に」
「はい!」
女神【シャトレーゼ】に祈りを捧げて紙に力を籠めた。浮かび上がった職業は
「おぉ!『騎士』の職業だ!王都に行きみなを守る素晴らしい職業です!」
騎士…力に溺れるなということはこういうことなのか?もしかして最初から剣術のLvがMAXとかそういうのか?そうこうしていると、サイゼリアの番になった。
女神【シャトレーゼ】の像が光ったと思うと天使が見え始めた。そしてそれを表す職業は…
「こ、これは!『聖女』!かつて勇者と旅に出て世界を浄化し、人々の癒しとなった女神様の使いが現れた!」
「う、うそ?私が」
その後はお祭り騒ぎだった。田舎の町に女神様の使いが出現したのだから。翌朝には王都から迎えの者が来てサイゼリアと俺を王都まで連れて行ってくれた。去り際にガストに、悪い男に騙されるなよと念を押して王都へ向かった。
王都に来て1年が経過した。俺の剣術は予想通りLvがMAXだったがあくまで『騎士』での範囲だった。俺はそれに溺れないように、必死に鍛え続けた。騎士団長によると「LvがMAXなのに鍛え続けるとは感心だ。実践を積んで私と同じ団長クラスにならないか?」と誘われたが丁重にお断りした。力に溺れてはいけない。鍛えて鍛えて時に仲間と遊び鍛え続けた。サイゼリアは教会で、世界情勢や聖女のあり方について学んでいるそうだ。聖女になると魔王を倒すまでは純潔を貫き通さなくてはいけないそうだ。魔王がいなくなったら結婚しようといったら、顔を赤らめながら了承してくれた。その証として、俺の魔力が篭もった指輪を渡すとすっごく喜んでくれた。そして、妹のガストも王都に来た。『大魔法導士』という『魔法使い』の上を行く職業だ。そして運命の勇者が見つかった。
何処にでもいる優しそうな雰囲気を漂わせているが俺には分かる。あいつは俺と同じ世界から来た男だと。名はレイン・ドンと言い農家の三男坊、これから1年賭けてあらゆる武術を磨きサイゼリアとガスト、あと俺が所属している騎師団の女団長のデミタス・ハンバーグと魔王を倒す旅に出るそうだ。無事に魔王を倒した暁には、報酬として姫【ティラミス・ベネト】との婚約が約束されているそうだ。ありきたりだな。
旅に出る前日に俺は、サイゼリアとガストそして何故かデミタス団長と決起会を開いた。団長は酔っ払うと甘える癖があるから苦手なんだがな。サイゼリアは俺にあーんをしてくれた。思わず鼻の下が伸びるが、ガストに思いっきり足を踏まれた。ついでに団長にも、何故だ。
そして、2人の旅立ちの時が来た
「かならず魔王を倒して帰ってくるから待っていてね」
「あぁ、帰ってきたら結婚式を挙げよう」
「そうね。楽しみに待ってるわ」
大丈夫、此処は現実だ。よく小説である寝取られなんて起こらない。そう自分に言い聞かせるとガストが来た。
「どうした?」
「兄さん、いえジョナサン・スカイラーク!」
「な、なんだいきなり?」
「この旅が終わったら伝えたいことがあります。覚悟しておいてください」
「お、おう」
どうしたんだいきなり?ボケッとしていると首元をつかまれた。こんなことをするのは団長しかいない。
「ゲホッ、団長いきなり苦しいですよ!」
「私に背後を取られるとはまだまだだな」
「すいません!」
「まぁなんだ。その…私の留守中は騎士団を頼んだぞ」
「そ、それは?」
「仮だがお前を騎士団長とする!それと帰ってきたらでいいから話がある」
騎師団長か、代役ならいいかよし頑張るぞ!
この時彼は知らなかった。彼の努力により寝取られの心配はなくなったが、修羅場に巻き込まれるということになろうとは
to be continued