凡人には
まずこの騎士団長殺しの一部、二部を読んで、率直に言わせてもらえばこんなに自分の感想を表しにくい特殊な本に出会ったのは初めての体験だということです。
私の思う一般的な本、つまり読書感想文を書くのに適した本というのは、感動したとか、面白かったとか、努力、勝利、友情といった少年ジャンプの三要素のようなものがその中に詰まっていてそれを読んで、私も主人公のように苦しい時こそ頑張っていきたい。的な文章の締め方をするものなのですが、この本はそんなつまらない言い方で表現することは不可能です。読んだ直後の感想を自分なりになるべく簡潔に分で表現してみると「決してつまらなくはなかったけど、面白いと言うよりは興味深いという方が正しい」で読んでいる人を惹きつける魅力があるけれど、様々なタイプの描写があるせいでなかなかストーリーが進まない本でした。
そんな本をなぜ読書感想文の題材にしたのかというと、私は読書感想文を含め作文というものがとても苦手なので、「村上春樹」というノーベル文学賞の有力候補として名前が上がるような超有名な作家が書いてるし、分厚い作品だったので、最後の夏休みを利用しない限り読むこともなかろうという浅薄な考えからです。
さて、主人公が妻と離婚したショックで山の上の元日本画家の家に移り住み、その家で前に住んでいた画家の「騎士団長殺し」という作品を見つけ、そこから免色という男や、石の壁に囲まれた穴や鈴や体長六十センチ程の騎士団長と出会い、メタファーの世界へ行ったりして、最終的には妻と離婚が成立してなくて、もう一度妻と元の家で子供と三人で暮らす、というのがこの作品のあらすじです。
この物語の一作目、つまり第一部では主人公が山の上の家にこしてきて三人の女性と関係をもち、そして駅前の絵画教室で働きながら日々を過ごしていると、向かいの山に住んでいる免色という男性と出会うのですが、ここまでの物語の進み方は、実際現実にこんなことあるんじゃないかと思わせますが、そこから穴の中に居たイデアが、騎士団長の姿になって出てきて、物語の現実味が若干薄くなっていきます。そして、第二部から免色の娘かもしれない少女が出てきて、その子を助けるために結果的に騎士団長を友人の包丁で殺し、メタファー通路という場所に行くのですが、ここからメタファーの連続で、この主人公のおかげでその少女が助かったのか凡人の私にはわかりませんでした。
また、物語の最後の方で妻と主人公の間に娘が生まれるのですが、主人公が一人で暮らしている時になんと意識だけが妻の所に行き妊娠させたような夢のようなものを体験する場面が出てくるのです。この娘もあの少女のように自分の娘だと断定できる確証がないまま物語が終わり、これまたなんとも言えないおいてけぼりをくらったような不思議な感覚になったのをしっかりと覚えています。
この本を二冊とも読破してみてわかったことは、読者が内容を理解するための読書力が求められる物語だという現実です。特に第二部では先述したとおり「メタファー通路」というものも出てくるのですが、この場面の理解が凡人の私にはすごく難しかったです。
前述したようにこの物語は読んでいてそれほど面白くなかったのです。むしろの読書感想文を書き始めて三日目に突入した時に読み始めそして読み終えた宮木あや子さんの「校閲ガール」の方が断然面白かったので、そっちの方を感想文の題材に変更しようかという考えが一瞬頭をよぎったほどです。しかし、最初にも述べたように、「騎士団長殺し」には読んでいる人を引き付けるような得体の知れない魅力があったので今ではやっぱりこっちを選んでよかったと思っています。ただ、一つだけ低級な感想をさらに付け加えれば主人公と妻の娘の名前は「むろ」というのですが、自分の中で俳優の「ムロツヨシ」を連想してしまって物語の終わり、「むろ」が出てきたあたりからこの娘への感情移入が全く出来なくなってしまいました。娘の名前「むろ」でなかったらと残念に思いながら読んでいました。読み終えたあとのなんとも言えない感覚を味わってもらい、それを共有するためにもこの作品を是非、他の人達にも読んでほしいなと思いました。と、いう一般的な読書感想文と比べると独特な内容になりましたが、個人的にはとても満足しています。最後まで読んでくださりありがとうございました。
高3の時に書いたもので、書き慣れていない感が拭えないですが本文にもありました通り個人的にはとても満足しています。
個人の感想をまとめただけで、村上春樹さんやその作品を悪く言うつもりは無いというだけはご理解頂けるとありがたいです。