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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第19話 とある介護職員の憂鬱
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番外編 チハって何ぞ?

今回はチハの説明回です。


ミリタリーに興味の無い人にはつまらないでしょうし、

ミリオタの諸兄には今更の話でしょう。


飛ばしてもらっても差し支えが無いようにしてあるのでご随意にどうぞ

「よく来てくれたな、誠……」

「明智君! ……てか、ここどこ?」

「ここはどこというわけでもない“解説スペース”。ありとあらゆる三千世界から切り離された場所だ」

「なるほど、僕たちがここで何をしても本編とは関係が無いし、本編の僕らも“解説スペース”の事は何も知らないって事だね!」

「理解が早くて助かる……」


「で、作者はなんでスマホゲーにハマって本編が進んでないのに、わざわざ番外編なんてやるのかな?」

「ああ、それはな読者の方々に少し補足説明をしておきたいらしい……」


「うん? ああ、それが今回のタイトルの『チハって何ぞ』って事?」

「そういうことだ」

「ああ僕からも明智君に聞きたいんだけど」

「いいぞ」

「そうだね。ちょっと纏めてみるからちょっと待って……」

 ………………

 …………

 ……


「よし! 僕から聞きたいのはこんなところかな?」

「どれどれ……」


 1.そもそもチハって何?

 2.チハって強いの?

 3.作中で「チハ」「チハ改」「チハ改Ⅱ」とか表記がブレるのは何で?


「ほうほう……。よし、今回はこの3点について説明していこう」

「は~い!」




 1.そもそもチハって何?

「まず、最初の質問についてだがチハ、チハ言っているが、これは秘匿名称や計画名称で正式には九七式中戦車というんだ」

「へぇ~、で、チハって何語?」

「日本語だぞ?」

「えっ?」


「まあ、まずはそこから説明しよう。このカタカナ2文字の命名方式はチハの頃から始まったもので、チハが日本で開発された3番目の戦車であることを現している。

 つまり中戦車の頭の“チ”と、『いろはにほへと……』の3番目の“ハ”で“チハ”というわけだな」


「なるほどカタカナ2文字方式は九七式から……。だから九五式軽戦車の頃にはその命名方式がなかったからハ号ってまた別の方式の名前が付けられているのか……」

「そうだな。逆に軽戦車でもチハの後に開発された戦車についてはカタカナ2文字方式が採用されているぞ。“ケニ”とか“ケト”とかな」


「でさ、チハが開発されたのって1897年なの?」

「違うぞ? 近代戦車の母とも呼べるマーク1菱形戦車ですら1916年の正式採用だ」

「えっ? じゃあ1997年?」

「誠、もう、その年にはソ連は崩壊して東西ドイツも一緒になって、北朝鮮も2代目が継いでいるんだが……」

「ん? だよねぇ?」

「“九七式”が97年に採用されたってのは合っているんだが、ただ西暦ではなくて戦前の日本で使われていた皇紀2597年(昭和12年、1937年)に採用されたことによる」

「へ~」

「ちなみに皇紀2600年に海軍で採用されたのが“ゼロ戦”と呼ばれる零式艦上戦闘機だ。というように海軍では2600年採用の物は零式と現してしたが、陸軍では百式司令部偵察機のように百式と現していたんだ」

「百式!? 金ピカに塗ってんの!?」

「ニュータイプは戦争の道具ではないと言ったハズだ!」




 2.チハって強いの?

「では次の質問だが、これは非常に答え辛い……」

「ん? なんで?」

「まず、チハを駆って祖国と故郷と愛する家族のために命を懸けて戦った人たちには敬意と深い哀悼の念を捧げさせていただきます」

「いただきます」

「そして戦場でチハのお陰で一命をとりとめた、窮地を脱したという人もいるだろうし、そういう人たちの思いを無為にするつもりもないということは最初に言っておこう」

「実際、機銃掃射を受けて身動き取れなくなってるところにチハが来てくれたら、歩兵さんたちにはチハが頼もしく見えたと思うよ」


「で、わざわざそういう前置きを置くってことは弱いの?」

「まあ、待て……誠?」

「なに?」

「兵器の強い、弱いって何だろな?」

「えっと……、言われてみると……」


「まあ、まず敵もしくは敵になるかもしれない相手と戦って勝てることだよな?」

「そりゃ、そうだね!」

「そういうわけで、チハとチハが開発された頃の各国の戦車を比べてみよう」


 日本 九七式戦車チハ(1937年)

 全長 5.55m

 全幅 2.33m

 全高 2.23m

 重量 14.3t(全備15.0t)

 装甲 前面25ミリ

 主砲 57ミリ(18.4口径)


 ドイツ 2号戦車(1935年)

 全長 4.81m

 全幅 2.22m

 全高 1.99m

 重量 8.9t

 装甲 最大14.5ミリ

 主砲 20ミリ機関砲


 ドイツ 3号戦車A型(1937年)

 全長 5.69m

 全幅 2.81m

 全高 2.35m

 重量 15.4t

 装甲 最大14.5ミリ

 主砲 37ミリ(46.5口径)


 ドイツ 4号戦車A型(1937年)

 全長 5.60m

 全幅 2.90m

 全高 2.65m

 重量 18.4t

 装甲 最大20ミリ

 主砲 75ミリ(24口径)


「……と、まずは戦車と言えばドイツ! ドイツの科学力は世界イチィィィ!!!!」

「あ、明智君!? ねぇ明智君、大丈夫!?」

「ん、ああ、すまんな。説明に移ろう。3種類のドイツ戦車の初期型を並べてみたが、2号戦車は基本は訓練用の戦車だが、開戦までに戦車の数が揃いそうにないので若干の実戦能力を持たされた物で、なんやかんや長らく使われてた物だな」

「なんやかんやって……」

「3号戦車は開戦前にはドイツ軍首脳部から主力として期待を込められていた戦車で、その設計思想は現代のMBT(主力戦闘戦車)を先駆けたものだな。ただ……」

「ただ?」

「改良につぐ改良を加えられた3号戦車であったが、ついぞ戦場で本当に必要とされる性能を持つことは無かった悲しみの子だな……」

「悲しいなぁ……」

「で、続く4号戦車だが当初は3号戦車を、あるいは歩兵部隊などを支援するための戦車として位置付けられていたんだ。ただ車体が大きくて余裕があった分、改良を受け入れるだけの余裕があってな。3号戦車から主力戦車の座を奪って、3号戦車の生産が終了してからも生産が続けられた傑作戦車だ」


「で、比べて見てどうだ?」

「う~ん? 訓練用の2号は別として、3号も4号もチハと大差無いような?」

「まあ両方ともあくまで初期型だからな……それじゃ続いてソ連だ」


 ソ連 T-26(1933年型)

 全長 4.88m

 全幅 3.41m

 全高 2.41m

 重量 9.4t

 装甲 全周15ミリ

 主砲 45ミリ(46口径)


 ソ連 BT-7(1938年後期型)

 全長 5.56m

 全幅 2.29m

 全高 2.42m

 重量 13.8t

 装甲 最大20ミリ

 主砲 45ミリ


「と、まあソ連戦車は2種類を上げてみた。どちらも軽戦車的な物だな。他にも色々とあるが戦間期のソ連戦車にはトンチキな物も多くてな……。T-35とかT-28とか……」

「こちらもチハと大した違いは……」

「そうそう。今回の比較には速度性能は乗せてないがな。BT-7の最大速度は72kmだそうだ」

「へぇ~! で、チハは?」

「38kmだ。捕捉するとBT-7の72kmは履帯を外した状態の話だな。履帯を付けた状態だと52kmとなる」

「履帯を外した状態で72kmって……、BT-7も大概なトンチキ戦車じゃないか!」

「おっと! トンチキと言えば忘れてならないのがイギリス! 続いてイギリス戦車だ!」


 イギリス 歩兵戦車マーク2 マチルダ(1938年)

 全長 5.61m

 全幅 2.59m

 全高 2.52m

 重量 27.0t

 装甲 最大78ミリ

 主砲 40ミリ(52口径)


「と、思ったが、イギリスの戦車はトンチキすぎて例として上げられるのがマチルダ2ぐらいしかなかった……」

「えぇ!? もっと、こう、なんかあるでしょ!?」

「ん~。歩兵戦車マーク1もマチルダっていうんだけど、こっちのマチルダ1は重量11.2tで最大装甲厚が65ミリもあるのに武装が機関銃1丁だけとか。歩兵戦車と並ぶ巡行戦車もマーク1からマーク4までそれぞれ百数十輌が生産されただけだしなぁ……」

「ええ……」

「ヴァレンタインは1939年、カヴェナンターやクルセーダーは1940年だしなぁ」

「ま、まあいいや! イギリス戦車っていうかマチルダ2で目を引くのは装甲だね。今まで見てきた戦車が15ミリから25ミリなのに一気に78ミリなんて」

「そうだな。実際、戦前に開発された戦車で装甲で敵を圧倒できたのはマチルダぐらいだろうな。ドイツ軍はマチルダ2を撃破するのに3号や4号戦車なんかじゃ倒せなくて、88ミリ高射砲を持ち出したぐらいだしな」

「凄い! 誰だ『イギリス戦車はトンチキ』なんて言い出した奴は!」

「ところがどっこい、軽中重とかいう区分じゃなくて歩兵戦車って分類から分かるように『歩兵に付いてけければいいっしょ!』的に最大速度は24.1kmしかないし、主砲は榴弾を撃てなかったりとコイツも大概だぞ?」

「えぇ……」

「ドイツ軍のある将軍は『歩兵戦車というのに敵歩兵を撃つための榴弾が無いのはナンデダロウ、ナンデダ、ナンデダロウ』という言葉を残しているな」


「さて、続いてはアメリカなんだがこちらも1車種のみだ。イギリスのようにトンチキ戦車が一杯というわけではないが、戦前のアメリカは戦車開発に熱心ではなかったようだな。ソ連のBTシリーズなどに搭載えているクリスティー式懸架装置もアメリカで開発されたが外国に売り込みをかけたものだ」


 アメリカ M2A4(1940年)

 全長 4.43m

 全幅 2.47m

 全高 2.65m

 重量 11.6t

 装甲 最大25.4ミリ

 主砲 37ミリ(53.5口径)


「で、このM2A4軽戦車だが、M2戦車自体は1935年に開発されている。当初は重機関銃を主砲代わりにしていたり、双砲塔型になったりと紆余曲折を経た結果に生まれたのがA4型だ。さらにM2軽戦車をベースとした新型戦車の計画はM3軽戦車として結実し、さらにはM5軽戦車へと脈々と血統は受け継がれていくことになるな」


「で、どうだ、誠?」

「う~ん。各国の戦車と比べて見ても、特色ある戦車はあっても特に大差ないような……」

「そうだな。実の所、チハは開発当初は世界標準の戦車であったことは間違いない。さらにノモンハン事件でソ連の戦車と交戦し、短砲身の57ミリ砲が対戦車戦闘に向かないことに軍は気付いたんだな」

「で、どうなったの?」

「ああ、47.8口径の47ミリ砲を主砲とした新型砲塔を乗せた改良型のチハが開発されたんだ。これが“新砲塔チハ”あるいは“チハ改”と呼ばれる物だ。また駆動系の問題により開発の遅れていた一式中戦車の砲塔を乗せた車両もあったらしい。一式中戦車も主砲は47ミリだ」

「ん? 主砲が小っちゃくなってない?」

「だが砲身は伸びて貫通力は上がっているぞ」

「なら、いいのかな?」

「新砲塔は重量が増してチハ改の全備重量は15.8tになったぞ。そして初陣の1942年のフィリピン攻略戦。友軍と協力しながらアメリカのM3軽戦車3輌を撃破したとある。以降、終戦まで日本軍の主力中戦車として戦闘を重ねていくことになるな」

「凄い! チハたん、ばんじゃ~い!」


「で、だ。チハは終戦まで活躍したというので、今度は大戦後半の各国中戦車と比較してみよう」

「チハたん、ばんじゃ~い!」


 ドイツ 5号戦車パンテルG型(1944年)

 全長 8.86m

 全幅 3.43m

 全高 2.98m

 重量 44.8t

 装甲 最大110ミリ

 主砲 75ミリ(70口径)


 ソ連 T-34-85(1944年)

 全長 8.10m

 全幅 3.00m

 全高 2.72m

 重量 32t

 装甲 最大90ミリ

 主砲 85ミリ(54.6口径)


 アメリカ M4M3E8(1944年)

 全長 7.493m

 全幅 2.997m

 全高 2.972m

 重量 33.657t

 装甲 最大107.95ミリ

 主砲 76.2ミリ(52口径)


「と、まあ第二次世界大戦後半を代表するような中戦車3種類のデータを並べてみたが、どうだ?」

「どうって……、チハの改良型のデータも並べてくれないと比較できないよ!」

「チハの改良型? そんなの無いよ?」

「は?」

「だから、さっき新砲塔チハの説明はしただろ? あれがチハの改良型だよ」

「え? 他には?」

「現地部隊で改修したものはあったそうだが、正式なものではないな」

「あっ! そっか! 別の新型戦車に役目を……」

「さっき、『終戦まで日本軍の主力中戦車として戦闘を重ねていくことになる』って言ったよな?」

「うっ……」

「あと、一式中戦車は開発が遅れてたとも言ったよな? さらに言うと一式中戦車も、さらにその後継の3式中戦車も生産された物はすべて本土決戦に備えて死蔵されていたぞ」

「うっ……、うっ……」


「これじゃあチハたんバンジャイできないよ……」

「そういう誠のためにアメリカのM4をチハが穴だらけにした写真があるんだが……」

「え! 見せて見せて! シャーマンなんぞチハたんで十分やったんや! チハたんさえいればいい! チハたんさえいればいい!」

 ………………

 …………

 ……


「……ねぇ……」

「ん?」

「この写真、M4(シャーマン)の側面とかを撃ってる写真ばっかりなんだけどさ……」

「ああ、気付いたか」

「もっと、こう……。真正面から装甲をブチ抜いてる写真はないの?」

「ハハ! ナイスジョーク!」


「と、まあ、ここまできて、チハの問題点が誠にも思ったと思う」

「うん。開発当初は世界標準であったチハが、後継機種にも恵まれずに終戦まで戦い続けたってことかな」

「そうだな。その理由は色々とあると思う。まずは現代では考えられないが当時の日本は自動車工業力に劣っていたこと」

「うん」

「そして戦場が日本から離れた中国大陸や東南アジアであったこと」

「それはどういうこと?」

「ああ、日本本土から戦地に運ぶまでを想定してみろ。日本から船に乗せて、向こうの港湾施設で下して、それから何らかの手段で戦地まで移動しなきゃいけないだろ?」

「そりゃそうだね」

「で、日本国内も中国やアジアも当時の港湾施設ってのは現代では考えられないくらいに貧弱だったんだな。つまり重量制限がかかると……」

「つまり性能だけを追求できるわけじゃあないと?」

「そうだな。そして、それに開発側も甘えていたわけだな」

「それは?」

「以前に書籍で呼んだんだがな。戦車開発者たちが戦後にミリタリー雑誌の企画で座談会をやってたんだがな。彼ら、チハの事を『掛け値なしに優れた戦車』と評していたぞ」

「ええ!?」

「そりゃ、チハが開発当初は世界標準の戦車だといってもだ。ノモンハンの時点で設計思想の旧態依然は明らかだったと言わざるをえないな」

「せっけーしそー?」

「T-26やBT-7の主砲の45ミリ砲があるだろ? あれは十分に対戦車戦闘を意識した物であったのに対してチハの57ミリ砲は歩兵支援用の物だったしな。開発者たちが『先進的』だと評していた空冷ディーゼルエンジンの問題も触れられてはいなかったしな。

 47ミリ砲の新砲塔チハにしても、当初は長砲身の57ミリ砲の計画もあったそうだが、結局は牽引式の対戦車砲との弾薬の共通化を目論んで47ミリ砲になったわけだが、結局は陳腐化が早まっただけだったな……」

「長砲身の57ミリ砲ならもう少し戦えてたの?」

「現物が無いからどの程度になっていたかは分からんが、イギリス軍の57ミリ砲(6ポンド砲)搭載戦車は終戦まで現役だったし、牽引式の対戦車砲は朝鮮戦争でも使われていたからな」

「つくづくチハで戦っていた戦車兵の皆さんには頭が下がるね」

「そうだな」




 3.作中で「チハ」「チハ改」「チハ改Ⅱ」とか表記がブレるのは何で?

「さて、長くなったが最後の質問だ」

「ごくり……」

「これについては単純だ。作者が『チハ』だろうが『チハ改』だろうがハドーを初めとする怪人に対しては大差ないと考えてるからだな」

「え~!」

「まあ、作中には天昇園の『チハ改Ⅱ』しか出てこないわけだから、特に厳密に分ける必要も無いだろ?」

「んな御無体な……」

「まあ、ドリンクホルダーの追加とか改修点があることを現している時には天昇園での改修型であるチハ改2って書いてると思うぞ?」

「その“2”と“Ⅱ”で表記がブレるのも?」

「天昇園での改修だから厳密なもんじゃないんだな。これが」


「え~、今回の番外編は如何だったでしょうか?」

「もうしばらくチハが登場する回が続くので捕捉をいれさせて頂きました」

「それでは皆さん!」

「もうしばらく暑さも続きますが気を付けてお過ごしください」

さて、今回のもう一つのテーマは“地の文”の無い会話劇でした。

いかがだったでしょうか?

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