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「そういえば誠君、家族の人いないんだよね。一人暮らし?」
「うん、近くの学生向けアパートで丁度いい所があって」
「へ~、大変だね」
真愛さんと「途中まで」と一緒に帰る途中の会話の流れで僕の生活の話になる。
「いや大変ってほどじゃないよ。学校もスーパーもコンビニも近いし」
「いいなぁ、一人暮らし憧れちゃうなぁ」
「なにより刺客が来ないのが何よりだよね」
「ふふ、そんなの気にするの誠君ぐらいよ」
「あ~、他のヒーローって豪気な人が多いからね」
「もぉ、そういう話じゃないよ。でもさ、ご飯とかはどうしてるの?」
「自炊だよ」
言い切った直後に自信がなくなる。
「……自炊でやってこうと思うんだけど、自炊出来たらいいな、メイビー……」
「そ、そうなんだ」
「ほら引っ越してきたばかりだし、バタバタしてたし……」
「まあまあ、しょうがないよ。それに昨日まで遠出してたんでしょ?これから頑張ろ!」
真愛さんが笑顔で慰めてくれる。いやぁ真愛さんはまるで天使だなあ。たまに鎌や鉈でバラバラにする翼と輪をつけた狂信者とは偉い違いだ。
「うん、それに自炊の第一歩と言うわけでもないけど、引っ越しの翌日にオネウチストアで色々と買い込んできたんだ」
ネットで話題のディスカウントストアだけあって、最寄りのスーパーよりも明らかに安いお店でした。
「え!?遠かったでしょ。その上、荷物もって……」
「ん?パワーアシストもあるし楽だったけど」
「パワーアシストって自転車?」
「徒歩だけど?」
「徒歩でパワーアシスト……あっ!!」
答えを思いついたのか「しまった」という顔で口元に手を当てる真愛さん。
「マッドかつクレイジーが弄くった改造人間ですので」
「私は変身しないと体力はただの人だから、その感覚はよく分からないけど大丈夫なの?」
「あ~、ecoモードからミディアムモードに切り替わったぐらい?お米とか重い物も買って」
「マッドかつクレイジーなのにecoモードとかつけてくれるんだ……」
怪訝な顔をする真愛さん。おっと、丁度、アパートの屋根が見えた。
「あそこが僕の住んでるアパートだよ」
「え~、そうなんだ!?」
真愛さんは僕が指差した建物を見て驚いたような声を上げた。
「え?どうしたの?」
「あそこ大家、私のお祖母ちゃん。で、その隣の瓦屋根の家が私の家だよ!」
「それは凄い偶然だねぇ」
「ふふ、よろしくね。お隣さん!」
ガチャ、カチッ。
自室に戻り、鍵を掛ける。よし、落ち着け~、落ち着け僕。
えーと、確かラブリー☆キュートのお祖母ちゃんはキュートの隣の家に住んでいたハズで、それが今はキュートの家で同居してて、お祖母ちゃん宅の跡地がこのアパートになったという事かな。そしてキュートはお祖母ちゃんっ子でいくつものエピソードにお祖母ちゃんの家は登場していた。
いや、ドラマの話を鵜呑みにしすぎるのも危ないぞ。ただ僕の想像が全て正しかった場合……
「ここは聖地だ!」