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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第39話 日本全国、所変われば……
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39-3

「UN-DEAD」のまとめ役であるルックズ星人は香川県にケンカを売るような真似をするような人物には思えないのにホバー・ラーテは四国の水瓶を狙って行動を開始し、そのホバー・ラーテの所有者であるナチスジャパンの代表である鉄子さんはその事を知らなかったという。


 確かにこれはおかしい。


 鉄子さんが嘘を言っているようには思えなかった。


 なんなら僕に持ってきたお菓子の毒見だけやらせて、それで後は電波ジャックの放送が始まる前にとっとと帰ればよかったのに、長々と子羊園に残って動画の撮影なんかやっていたのだ。

 子羊園には僕の他にもアーシラトさんに咲良ちゃん(とその仲間の河童)というヒーローがいるというのにだ。

 まともな頭があったら「UN-DEAD」の電波ジャック放送があった時点で捕縛される可能性が大きいと分かるだろう。

 まぁ、「帰る!」という鉄子さんの剣幕に押されてそのまま帰しちゃった僕が言うのはなんだけどさ。


「やっぱり、どう考えてもおかしいよね?」

「ああ、おかしい事だらけだ」


 僕と真愛さんが先ほどの鉄子さんと2体のD-バスターの様子を事細やかに述べていくと、明智君の中で何やら確信めいた考えが浮かんできたようで力強い返事が返ってきた。


「だが、四国に脅威が迫っているのも事実」

「どうするの?」

「時間の余裕があれば敵戦力を解析して必要十分な戦力を送るんだがな。政府にはそんな余裕はないだろう。何せ、いつ香川、徳島の両県民がラーテに対して攻撃を開始するかわからん」

「となると?」

「四国に動かせるだけの戦力を投入するしかないだろう。作戦の稚拙さは数で補うって形だな。すでに3自衛隊は行動を開始しているし、公務員系のヒーローも同様。民間のヒーローも順次、政府が用意した移動手段で四国へ移動を開始するらしい。第一陣は今夜の出発だそうな」

「え?」


 明智君が言っている事も分かる。


 先にも彼が言っていたように政府が手をこまねていているうちに四国の人々が行動を開始して膨大な犠牲者を出してしまえば政府が崩壊する。

 そしてヒーロー協会のトップの半数以上は天下りしてきた元役人だ。つまりは政府の影響力が非常に強い組織という事。


「でもさ、危なくない?」

「ああ、例の風魔を動かしていた黒幕に邪神ナイアルラトホテプとこっちも問題が山積みだしな。そこでお前に、いや、誠と羽沢に頼みがある……」

「なあに?」

「長瀬咲良の護衛に行くハズのヒーローも四国に回される事になってな。2人ともしばらく子羊園で生活してくれないか?」


 つまり僕は現在、20時まで子羊園にいて咲良ちゃんと真愛さんを護衛していて、そこで交代のヒーローが来た後は真愛さんと帰宅していたのを、交代が来ないからずっと僕とアーシラトさんで2人を守っていろという事か。


「私はいいけど……」

「僕も大丈夫だよ」

「それなら1回、帰宅して泊まりの準備とかしてこれるか?」

「うん。今ならアーシラトさんも宇佐さんもいるし」


 アーシラトさんではナイアルラトホテプに太刀打ちできないという話だったけれど、それでも他の敵に対しては十二分に強力な存在であろうし、いつフラッとコンビニとかに行っちゃうか分からないからあまり当てにできないというがさすがに事情を説明すれば大丈夫だろう。

 それに園庭には咲良ちゃんの護衛として付き添ってきていた宇佐さんも子供たちと遊んでいた。彼女もあのハドーの獣人であるのでそこいらの組織の怪人に遅れを取るとは思えない。……ちょっと不安だけど。うん。大丈夫じゃないかな? 大丈夫だといいな。


「それじゃ、後は市の災害対策室から子羊園の園長に事情を説明しておくから、お前らは泊まりの準備でもしてきてくれ!」

「分かったわ!」

「ところでさ、1つだけ気になる事があるんだけど……」


 先ほどから聞こうと思っていながらためらわれていたのだけれど、この通話が切られたら2度と聞く機会もないかもしれないと思いきって聞いてみる事にした。


「香川県と徳島県の人がラーテに突っ込んでいくかもしれないって言うじゃない?」

「うん?」

「愛媛と高知の人は?」

「……」

「愛媛と高知の人はラーテに攻撃しないの?」


 明智君の答えは実にシンプルなものだった。


「愛媛の人たちはミカンの栽培で忙しいし、高知の人は『UN-DEAD』だラーテだ、そんな小さな事なんか気にしないんじゃないか? 知らんけど……」

「ああ……」


 何だか僕の脳裏に、ミカン畑の脇で携帯電話に向かって「アンデッドォ? ……あぁ、行けたら行くわ~」とか言っている人に、茶の間でUN-DEADのニュースをやっているテレビを無視してカツオのタタキをコップ酒で流し込んでいる人が思い起こされて妙に納得してしまった。

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