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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第37話 獣が笑う街で僕は暮らす
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37-2

 中間テスト初日の結果は散々なものだった。

 ヤマを外したわけでもなければテスト勉強が不十分だったわけでもないと思う。


 理由はモーター・ヴァルキリーこと高田さんの死を聞いた事による動揺かな?


 日曜日、久しぶりに高田さんと再会して、手を貸した礼だと喫茶店でご馳走になった翌日、僕は前日と同様に真愛さんの家でテスト勉強をしていた。

 しばらくは穏やかな時間が流れていたんだけれど、ちょっと息抜きに休憩を、とお茶の時間に真愛さんがテレビを付けたらちょうどローカルニュースの時間で、その番組で僕は高田さんの死を知ったのだ。


 ニュースでは「他殺の疑い」があると曖昧な事を言っていたので、ゴールデンウィークに当直のバイトをした時に電話番号を交換していた市の災害対策室の職員、板橋さんに電話をかけると「ほぼ他殺で間違いない」という返事が返ってきた。

 なんでも胸板に野球ボール大の穴が開いていたそうで、発見された現場の事を考えてもそんな傷口ができるような事故は考えられないそうだ。


 一緒にニュースを見ていた真愛さんも動揺の色は濃く、僕たちはお互いに少しでも沈んだ心を励まし合いながらテスト勉強を続けていた。


 でも事情が変わったのが昼過ぎくらい。

 RINE(リーン)で僕の元にヤクザガールズの山本さんから救援要請が入ってきたのだ。

 なんでも組員が襲撃を受けて、その救援に行こうとしたら別の部隊から足止めを受けているという。

 しかも相手は死んだ高田さんが追っていた風魔軍団。


 板橋さんは高田さん殺害の犯人は分かっていないと言っていたけれど、その前日に彼が追っていた風魔軍団が怪しいと思っていたし、何よりヤクザガールズの子たちがピンチなのに助けに行かないという選択肢は僕には無い。


 真愛さんの家を後にして変身した僕は空を飛んで宇垣さんたちの救援に向かったものの、カラクリメカを主体とした風魔軍団は別のヒーローにほぼ殲滅された後で、僕はトンズラ決め込もうとしていた忍者を捕まえるだけでよかった。


 僕が捕まえた忍者の胸倉を掴んで高田さん殺害の実行犯を教えてもらおうとお願いしていた隙に宇垣さんたちのピンチを救ったヒーローはいなくなっているし、遅れて駆けつけてきたヤクザガールズの子たちと今後の対応について話をしている内に謎のヒーローの事はころっと忘れてしまっていたっけ。


 警察に忍者を引き渡した後も「舐められたままじゃいられない」とか怖い事を言っている女子中学生たちもどうかとは思うけれど、僕も風魔軍団の連中には聞きたい事が山ほどある。


 そういうワケで同じ忍者なら奴らのアジトでも知らないかと機動装甲忍者(アーマード・ニンジャ)さんにRINEで聞くと、「有料だけどどうする?」という返事が返ってきてなんだかなぁって気分にはなったけど、「友達価格の3割引きで7000円でいいよ」というし「支払いは某通販会社のギフトカードの番号でいいよ」という事だったので迷わずアジトの情報を買った。

 ……ていうか定価でも1万円で忍者組織のアジトの情報って手に入るんだね。


 ただ重傷を負っていた宇垣さんと豊田さんも「カチコミ連れてってくれなきゃヤダ! ヤダ!」と駄々をこねるので、彼女たちの回復を待つために風魔のアジトへの殴り込みは月曜日の放課後にする事にしてその場は解散になった。


 幸い月曜日は僕の高校ではテスト期間という事で午前中で放下となる。


 ただ中間テスト初日となる月曜日のテストは高田さんの事、高田さんを殺った犯人の事、放課後の風魔軍団アジトへの殴り込みの事、そして高田さんの訃報を聞いた時の真愛さんの震える瞳が何度も思い出されて手が付かなかったんだ。

 僕の電脳をもってしても真愛さんの深く沈み込んで今にも泣き出しそうな顔を脳内から振り払う事は出来ず、気が付いた時には1限目の現国のテスト終了のチャイムが鳴っていた。

 これではいけないと思いながらも同じ事を繰り返して結局、テスト初日は終わる。


 なんとか赤点は回避できるくらいには問題用紙を埋める事はできたと思う。

 ただ、初日のテストを不意にして考えていた事が1つある。


 僕の新生活初日、高校へ初めて登校した日の帰り道に「これから毎日、いつだって『生きてて良かった』って思えるようにしようよ」と僕に優しく微笑んでくれた真愛さん。

 その彼女を泣かせる者がいるなら僕は許さないという事だ。


 この町に来たばかりの僕は父さんも母さんも、兄ちゃんも亡くして、今までの友達のいない故郷から離れた町でどことなくふわふわとした感覚を味わいながらの新生活スタートだった。

 多分、僕から全てを奪っていった連中を見返してやろうという気持ちもあったんじゃないかと思う。

 でも今は多少なりとも地に足が付いた生活が出来ているんじゃないかな。

 きっと真愛さんを初めとするこの町に来てからできた友達たちのおかげだろう。


 だから僕は僕の生活に真愛さんや皆が必要だと、いて欲しいと思う。

 そのためにならば固い事はちょっと置いておいて忌まわしい死神に戻る事だってやぶさかではない。

Twitterやってます。

雑種犬@@tQ43wfVzebXAB1U

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