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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
第6話 少女たちと改造人間
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6-1

「続いては7時の朝のニュースです」

「さあ週末は一体、何があったんでしょうか?」

「まずは土曜日、この日午後、漆黒銀河連合四天王の一人を名乗るベン=バウ星人ゲルティーが率いる異星人部隊が東京都庁を占拠しましたが、数時間後にブレイブファイブにより鎮圧されました。その後、ゲルティーは巨大化してなおも抵抗を続け、ネオブレイブロボと交戦、撃破されています」


 ネオブレイブロボ? なんじゃそら? テレビ画面に映っている巨大ロボを見てみるが違いが良く分からな……あ、胸のライオンが虎になってる! え? それだけ? せ、性能とかはどうなってんの?


「いや~、新メンバー2人を加えた新生ブレイブファイブ! 安定してきましたね~」

「ホントですね~、それにしても漆黒銀河連合とは一体、どのような組織なのでしょうか?」

「それについては実は何も分かっていません。日本に帰化した異星出身者数人に話を伺ってみましたが、知っている者は誰もいませんでした。取材した人の中には複数の軍関係者が含まれているにもかかわらずです」

「なるほど謎の組織というわけですか、今後も注意が必要なようです」


 テレビの中ではしたり顔のアナウンサーが不安を煽っている。

 新しい侵略者が現れようと現れまいと変わらない日常の光景だ。




「あ、お早う! 真愛さん、明智君」

「おはよう。誠君」

「ああ、お早う。誠」


 校門の近くで二人に会った。


「そういえば明智君? ネオブレイブロボって知ってる?」

「ん? ああ、土日と今朝のニュースでちょいちょい出てたな。知ってるも何も完成お披露目式の案内、お前の所にも来たんじゃないか?」

「お披露目式? そ、そんなのやってたんだ?」


 知らなかった!? え、いつ!? ブレイブファイブは確か防衛省の所属だけど、そんな所から案内状なんてきたっけ? 中身を見ないで捨てちゃったとか?


「そういや、お前ら来てなかったな? 俺は行ってきたぞ。ライオンメカとオルカメカをタイガーメカとドルフィンメカに改修して、全体の性能も底上げしてあるみたいだぞ」


 え~、超行きたかった~! 巨大ロボット見たかった~!


「性能アップは分かるけどさ、メカの外観を変える必要ってあるのかな? 特にオルカとドルフィンなんてさ、しれっと『これはドルフィンです!』ってオルカメカを言い張っておけばいいのに……」

「くすっ、男の子っていつまでたってもロボットとか大好きなのね!」

「そりゃあ、巨大ロボは男のロマンさあ! 自分が半分ロボットみたいなモンになってもそう思うよ!」

「ま、誠君は意外と自虐ネタが好きよね……」




 教室の前の廊下までくると、乾生徒会長が待ち構えていた。誰を? 僕を!


 ガバッ!!

 僕に向かって歩いてきた生徒会長に突然、抱きしめられる。

 え?

 どういうこと?

 背の高さがなまじ同じなだけに、僕の頭の真横に女性の頭がくっついてドギマギしてしまう。

 生徒会長は良い匂いがした。シャンプーやトリートメントに制汗剤かな?

 いや、いやいや、こんなところ真愛さんに見られたくない!

 ただ理由も分からず押しのけるのも気が引けた。どうする? 落ち着け! こういう時はまず落ち着くんだ! 素数だ。こういう時は素数を数えるって決まっているんだ!


≪ 素数一覧表をダウンロードしますか? Y/N ≫

 ぽ、ポンコツ電子頭脳!?

 僕は開発元であるアホの見本市(ARCANA)を呪いながら最後の切り札、明智君を頼ることにする。


「あ、あげじぐ~ん。これはど~ゆ~こと?」

「知るか! 本人に聞け!」


 観れば真愛さんは「うわぁ……」という表情で目を見開き、口を手で押さえている。

 というか廊下を行き交う生徒たちが皆、僕と生徒会長を見ている。ヒソヒソと何か話している声も聞こえるけどスーパーマイクロホンをオンにして何を話しているか探る度胸は僕にはない。


 僕をギュッ! と抱きしめていた生徒会長がやっとのことで僕を解放してくれる


「誠ちゃん、貴方、今まで大変だったのね……」

「え?……」


 生徒会長の涙で潤んだ目を見ると、「今も大変な目にあってます!」とは言えなかった。


「週末に誠ちゃんのビデオをずっ~と見てたの。お姉ちゃん、誠ちゃんに酷いこと言ってしまったわね。本当にゴメンなさい!」

「いえ、大丈夫です……」


 いやいや、もっと言うべきことがあるでしょ! 僕!?


「なあなあ~、生徒会長さ~ん。いきなり『お姉ちゃん』ってどういうこと?」


 ナイス! 天童さん! てか、いつの間に!? 見るとワクテカした顔の天童さんと、怪訝な顔の三浦君がいた。鞄をもっていないということは、一度、教室の中に入っていたのだろう。で、面白そうな話の匂いを嗅ぎつけた天童さんが三浦君を引き連れて現れたと。


「そりゃあ誠ちゃんはパパの弟子なんだから、私の弟分も同じでしょう?」

「物凄い論理の破綻!!」


 まず僕は譲司さんの弟子じゃないし、仮にそうだとしても師匠の娘さんの弟分扱いとは!?


「そんな照れなくてもいいのよ? それでね……」


 ん? まだ何かあるんですか? まあ、これ以上に話が悪くなることは無いでしょうけどね!


「ビデオをママにも見せたら、ママも誠ちゃんのこと気にいったって! いつ、ウチに来る?」


 生徒会長さん家に行くのは確定しとる!? 訂正、話がどんどん悪くなる!! アホの元締め(ザ・エンペラー)の方がまだ話が通じる気がしてきた。


「あっ、もう、こんな時間……。じゃ、SHRの時間だしお姉ちゃん行くね! 誠ちゃんも予定空けといてね!」


 笑顔で言うだけ言って手を振りながら立ち去っていく生徒会長。

 あの人は僕に対して敵対するか弟扱いしてくるかの両極端な立ち位置しか取れないのでしょうか?


 ギギギと音がしそうな感覚を味わいながら皆の方を向く。メンテナンスフリーの僕の体がグリスを欲しているようだ。


「よかったなー、まこと。つよいみかたができて……」

「うわーい! 明智君、メッチャ棒読みだー」

「あはは……お姉ちゃんが出来てよかったね……」

「真愛さんも他人事だと思って~。ところで三浦君?」

「な、なんで御座る?」

「お願いだから、引かないで。で、ヒーローオタの三浦君から見て僕って譲司さんの弟子って扱いなの?」

「そうでござるな~。拙者もジョージ・ザ・キッドの事は週末に調べたくらいで御座るが……」


 ああ、そういや草加会長が三浦君は「変身ヒーローと魔法少女ばっかり」って言ってたもんね。


「ま、そうじゃなくとも石動氏は埼玉以降にファニングを多用しとるで御座ろう? それも重要な……必殺技への繋ぎとか……見る人次第でそう取られるのかもしれないで御座るな」


 あ、あのオッサン。最後にとんでもない置き土産していきよった!


「で! マコっちゃん。チビッ子生徒会長に抱き着かれてどない塩梅やったん?」


 なんで、関西弁!? というか生徒会長がチビッ子なら、僕もチビッ子って扱いになるんですか?


「なぁなあ? どないやったん? 京子ちゃんにちょっとだけ教えて~や?」


 グイグイと天童さんが詰め寄ってくる。


「も~、京子ちゃん! 誠君も困ってるよ~。ほら、すぐ先生来るよ!」


 真愛さんが天童さんを抑えてくれたお陰でその場はそれで治まった。


 生徒会長。いい匂いがして、柔らかかったな。

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