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引退変身ヒーロー、学校へ行く!  作者: 雑種犬
ハロウィン特別編 MONSTERS in KUMAMOTO!
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ハロウィン特別編-7

 黒岩3兄弟は震える体を必死で抑えながらも両腕を広げてカボチャ頭を守ろうとしていた。

 その唇は固く真一文字に閉じられ、瞳は今にも泣きだしてしまいそうだった。


 無論、3人も怖くないわけではない。

 清美は何年か前の冬休みに深夜にテレビでやっていたマーダーヴィジランテをモデルとしたホラー映画を観ていたし、その映画を知らない清志と清彦ですら彼が数多の吸血鬼を鬼気迫る様子で惨殺していく様子を目撃している。それにカボチャ頭と殴り合っていた時には激突の余波で地面すら震えていたのだ。目の前の仮面の殺人鬼がどれほどの力を持つか子供でも容易く想像が付く。


 だが姉弟の後ろで力無く倒れるカボチャ頭を殺させるわけにはいかなかった。


 その姿は醜く肥大し、命の尊厳を嘲笑うかのようにツギハギだらけの皮膚は生者の物とは思えないほど変色している。体のいたる所から飛び出したボルトやリベットなどの金具は彼が受けた行為が体内にまで及んでいる事を示していた。そして胸にはバスケットボール大の赤黒く輝く水晶玉のようなものが埋め込まれていた。本来は水晶玉の位置にあったであろう肋骨や心臓がどうなっているかなど知る由も無い。

 そして顔。

 その顔は歪な形でパンパンに膨れ上がり、まるでカボチャのようだった。


 だが確かに往時の面影がある。


 意外と可愛らしい2つの丸い眼に太い眉。

 眼窩や鼻筋など彫りの深い顔立ち。

 太い首と発達した顎はちょっとやそっとの打撃には動じない力強さを感じさせる。


 熊本に住む者なら知らぬ者などいようはずがない。


 彼は。

 カボチャ頭は。

 郷土が誇るスーパーヒーロー、MOーKOSだった。


 燃え盛るマーダーヴィジランテから見下ろされる視線に耐えきれなくなったのか、黒岩兄弟は口々にMOーKOSに声を掛ける。


「お願い! MOーKOS! 目を覚まして!」

「吸血鬼なんかに負けんな!」

「頼むよぉ……」

「グゥ!? …………グアアアアア!!!!」


 子供たちの言葉にMOーKOSだったモノは頭を抑えて地面をのたうち回る。

 ボルトが自動的に開いていき猛烈な勢いで水蒸気を噴出させ始めると、MOーKOSの苦しみが溢れ出したかのような熱い蒸気は3人の足元にまで叩きつけられた。


「MOーKOS!」


 だが3人は足の熱さなど構わずに自分たちのヒーローに向かって呼びかけた。

 何度も。

 何度も。

 いつの間にか3人の目からは涙が零れていた。

 感情が溢れて横隔膜を痙攣させ上手く声が出せない。

 それでも呼び続ける。


 その様子を見ていた瑠香はマーダーヴィジランテが3人に構わずにカボチャ頭に止めを刺すのではないかと思っていた。何なら子供たちごとでも瑠香は驚かなかっただろう。マーダーヴィジランテというダークヒーローはそういう人物だった。

 そのハズだった。


 だがマーダーヴィジランテは子供たちを目の前にして立ち止まり、英雄の帰還を信じて呼びかけ続ける子供たちを見続けている。

 まるで呆けでもしたかのように微動だにせず。


 やがて殺人鬼の身を包む炎は徐々に勢いを無くし、ついには跡形も無く消え去ってしまう。


 炎の中から現れたマーダーヴィジランテの仮面の奥の両目には慈しむような優しさすら感じられた。




「ちぃッ! 調整不足かしらね!」

「……!」


 戦いの最中に動きを止めたマーダーヴィジランテにクイーンが自身の肉体を変化させたコウモリ弾を浴びせる。

 今度は左手だけではない。自身の左半身を丸ごとコウモリに変えての連射だった。


 頼みの綱のカボチャ頭が戦闘不能になり、マーダーヴィジランテの隙を突く形で勝負を決めるつもりのようだ。


 身に纏う黒いドレスも自身の体の一部であったのか、ドレスごとコウモリに変化させては殺人鬼を連弾を浴びせていくが、変化させるたびに肉体を再生させ、そしてまたコウモリに変化させていく。


「……これなら! …………ッ!」


 コウモリ弾の連射の勢いにマーダーヴィジランテはカボチャ頭が載せられていたコンテナに叩きつけられて倒れる。

 ブ厚い鋼鉄で作られたコンテナが大きくひしゃげるほどの衝撃だったがマーダーヴィジランテは何事も無かったように立ち上がろうとしていた。

 先ほどまでの優しい眼差しはもう無い。


「クイーン! 『死神』です! 『死神』が着ました! それに……」

「何よ!」


 傍らに来て進言する上級吸血鬼が指し示す方角の空を見ると、青白い光芒を引きながら次々に配下の飛行型吸血鬼がデスサイズに斬り捨てられていた。

 今はまだ数の利でデスサイズは仲間の元に駆けつけられないでいるが、それも時間の問題だろう。


 そして死神が連れて来たかのように忌々しい朝日が見え始めている。


「ええい! 後、一息だというのに……!」


 だが引き際を誤ってはここで揃って全滅する事になる。

 大いなる目的の前にこんな所で灰となるわけにはいかなかった。


 忌々しい。

 偉大なる“ロード”の復活の前祝いに赤口村の人間を根絶やしにしてやるつもりだったのが、たかが2人のヒーローに邪魔されて夜明けを迎える事になろうとは!


 そして子供。

 吸血鬼一族に伝わる禁忌の業と科学を融合させた技術で作り上げたパンプキンヘッドが、たかが子供のせいで悶絶させられているのだ。

 この償いは命で支払ってもらおう。


 クイーンは3匹のコウモリを黒岩姉弟に向けて発射した。


「きゃッ!」

「…………えっ!」

「…………MOーKOS……」


 コウモリ弾は3匹とも突如として飛び出してきたカボチャ頭の巨体に防がれていた。

 そのままカボチャ頭はピクリとも動かなくなる。


「……“躾”が足りなかったかしらね? ……まあ、いいわ。ここは退きます。“成りたて”を殿にしてオツムのある者は赤口城まで……」

「御意のままに……」


 恭しく一礼して配下が伝令を伝えに足早に駆け去っていった。


 女王は完全に再生させた左半身の具合を確かめるように左手を振るうと、宙を飛んでいた大型コウモリがワイヤーを垂らしてカボチャ頭のボルトに巻き付けていく。

 いかなる超常の力か、蛇使いに使役されるコブラのようにワイヤーロープはボルトに自動的に巻き付いていったのだ。

 そしてMOーKOSの巨体が持ち上がり空へ消えていった。


 そして女王はこの村の最後の人間たちに宣言する


「名残惜しいですがこれにて今宵は失礼いたします。それでは最後となる安寧の昼をどうぞお楽しみください……」


 女王は自らの全身を数えきれないほどのコウモリに変化させてMO-KOSの後を追うように飛び去っていった。


 夜が明ける。

 長かった夜が。

ハロウィン終わってしばらく経つのにハロウィン編が終わりません。

吸血鬼にジャックオーランタン兼フランケンシュタインやスケアクロウとハロウィンっぽくなるように出しすぎた気がします\(^o^)/

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